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63.彼氏役は誰ですか?

いつもならこんな風に見つめられるだけで、七海はのぶの色気にてられて、眩暈を感じてしまう所だった。

けれども容赦ない追及に咽喉のどが詰まったようになってしまい、頭の芯が妙に冴えるばかりだ。信は余裕のある大人で―――彼にとって相手の気持ちを読む事はそれほど難しい事では無いのかもしれない。


「―――火曜日に、以前食事に誘ってくれた人に彼氏の写真を見せろと言われて―――」


七海は耐えきれず、視線を落とした。


「……黛君の……写真を見せました……」


言った途端、冷や汗がドッと出た。七海は目をギュッと瞑って頭を下げた。


「スイマセン……その……」


七海の肩を大きな手がポンポン、と叩いた。

そしてワシャワシャッと頭を撫でられる。暫く撫でくり回され―――十分に髪の毛がくしゃくしゃになった頃、七海は堪えかねて顔を上げた。


するとニッコリと微笑む信の顔がすぐ傍にあった。


「……」


予想していた反応と全く違う表情かおに、七海は言葉を失った。


「わぁ、七海ちゃんの頭、ボサボサになっちゃったねー」


そう言ってボサボサにした当人、信は笑いながら丁寧に七海の髪を指で梳きなおし始める。

鼻歌でも歌いそうな雰囲気で楽しそうに彼女の髪を整える信の行動の意図が解らずに、七海は黙ってされるがままになっていた。


「信さん、あの……」


戸惑いながら七海が口を開くと、髪を梳き終った信の手が、ポン、と頭の上に乗った。




「七海ちゃん―――りゅうが好き?」

「―――っ」




七海の瞳は一瞬見開かれ―――そっと伏せられた。

信の手がポン、ポンと優しく頭を叩き……時折頭の形をなぞるようにスルリと撫でられる。


「ズルいなぁ……俺は正直に打ち明けたのに、七海ちゃんは教えてくれないの?」


恨み言のような台詞だが、重さは無い。

世間話をするかのように話す信のトーンには、先ほどの深刻さは見受けられない。


七海はグッと一瞬口をひき結んだ。

そして、アハハ……と笑って首を振った。


「そんな~黛君は……『彼氏の振り』をしてくれただけで……友達ですよ?」

「『彼氏の振り』なんて、大事な相手にしか出来ないと思うけれど。少なくとも、俺は無理」

「私は大事な……『友達』だと思ってます。きっと黛君も……いえ、黛君はあれで誰にでも親切だから、わかんないな」

「……」


信はニッコリ笑って黙り込んだ。

しかし次の七海の台詞を聞いて、首をかしげたのだった。


「黛君はずっと、唯が好きなんです」

「―――え?」

「唯の事が一番大事なんです。そんな人―――好きになるとか……有り得ないですよ」



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