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50.売り言葉に買い言葉



「よ、余計なお世話よ!黛君には関係ないでしょ?」

「確かに……関係は無いけれども……」


『関係無い』と言われて七海はイラッとした。

関係無いと思っているなら、何故七海を揶揄うような事をシツコク掘り返すのか。


「自分はどうなのよ、二年も彼女いなくてさ。忙しくて彼女作る暇無いって言ってもこれからずっとそうなんでしょ?自分の心配をしなさいよ」

「俺は忙しいから彼女を作らないんじゃない」


思ったより低い声で返されて、七海は一瞬口を噤んだ。


全くその通りだから、言い返せる事は何も無い。

『告白を断っている』と以前黛が言っていたでは無いか。これが勝負なら、完全に七海の負けである。


「モテる人はいいですねぇ。自慢は聞き飽きましたぁー」


運転手が余所見出来ない事を良い事に、七海は隣に顔を向け、整った顔を男に対して思いっきりイーっと歯を剥き出して顔を顰めた。


途端に車が赤信号で止まる。


クルリと黛が顔を向けたので、七海はヒクッと顔を引き攣らせた。


「ブッ……変な顔。それに『自慢』って……ガキじゃあるまいし、そんな事するかよ」

「……昔は自慢ばっかだったじゃん。私に当てつけるみたいにさ」

「ああ……ホントにお前って……」


おかしそうに笑って、青信号と共に前を向いた黛がポツリと呟いた。


「変わんねーな。高校の頃から」


七海はカチンと来て何か言おうとして……グッと言葉に詰まった。

そしてつい、言うつもりの無かった事を口走ってしまう。


「悪かったわね。こんな子供な私でも―――結婚して欲しいって言ってくれる人はいるんだから、ほっといてよ」

「……」




キキィ―ッ。




「うわっ」


カーブを急に曲がった勢いで、体に一瞬負荷が掛かった。

突然乱暴な運転をした黛が、スピードを落とし路肩に一旦車を寄せた。


「ど、どうしたの?いきなり」


何処にもぶつかっておらず無事である事に安堵して、七海は胸を押さえて息を吐き出した。

ふと顔を上げると、隣の男がこちらを不審そうに窺っていた。


「……どんな奴だ?なんでさっき聞いた時、それを黙っていた?」


真剣な表情で見据えられ、七海はつい体を引いてシートに深く背を埋めた。

何故あんな事を言ってしまったのだろう、と自分を責める。言うつもりなんて、まるで無かったのに―――……。


「えっと……別に誰だって良いでしょ?」

「良く無い」


黛は睨みつけるように七海を見つめ、話を逸らすのを拒んだ。


「の……」

「『の』?」

「……『信さん』よ。―――信さんにこの間、言われたの。『結婚を前提に付き合って欲しい』って」



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