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47.子供みたいな

黛を連れて家に戻ると、七海の父親と母親が出掛ける準備をしていた。

今日は翔太は動物園へ連れて行って貰えるらしい。


意外にも黛は感じ良く二人に挨拶した。

美青年が爽やかに笑うと、その場が華が咲いたように明るくなる。

どうやら七海の両親は黛に好印象を抱いたようだ。


(黛君にも外面があったんだ)


七海は変な所で感心した。

そう言えば仕事場や大学での彼を見た事が無い事に気が付いた。

気の置けない関係の世界でしか黛と会って無かったので、そんな大人な対応が出来る事を意外に感じた。


いや、当たり前の事かもしれない。

プライベートパブリックで違う態度を取る事など。

だけどいつも不遜でマイペースな態度を取り続けて来た黛しか見ていなかった七海は、本当に驚いたのだ。







黛が人見知りをしない性質たちだと知っている七海は、飲み物を出して彼を居間に放置する。そして七海は洗濯を始めるために脱衣所の方へ向かった。

洗濯籠の中身をチェックをし普通洗いとドライ洗いにするものを分け、汚れやすい部分を手洗いして洗濯機を回す。フローリングワイパー片手に居間に戻ると、黛が翔太と戦いごっこをしている場面に遭遇した。


黛は子供受けが良い。


やはり子供と同じくらい気持ちが幼いからだろうか?

それとも自分に正直で裏表が無い所が―――子供に警戒心を抱かせないのだろうか。と七海は考えた。


あらたが黛に懐いている理由は、よく一緒にゲームをしてくれるからだと思っていたが、それだけでは無いかもしれない。

本田家の末っ子である新は女性関係を拗らせるのぶを敬遠しており、心に対しては尊敬しているが恐れてもいるようだった。

黛は新が一番素直に話をできる相手だったと思う。




七海は今まで、自分が物事の一面だけを見て、全てを分かっているような気になっていた。

仕事を始めて怒られたり失敗したりしながら、何とか一通り思い通りにこなせるようになって、すっかり大人になったと思っていた。


だけど全然分かっていなかった。


一塊ひとかたまりに見える課の女性陣は、仲良くしていてもそれぞれキチンと違う考えを持っているようだ。一緒に行動していたとしても、学生時代のグループのように声の大きい人間に追従している訳じゃ無いのだと言う事。


スマートに見える男性同士が裏で交わしている猥談の内容を知ってショックだった。しかしそう言う話をしているからと言って、それを相手に押し付けるかどうかは別なのかもしれないと言う事も知った。


自分より社会経験も少ない、女性経験と大学の勉強だけをこなしている友達の事を、高校生の頃と変わらない子供のままだと思っていた。

人と滅多に軋轢を起こさない自分は、トラブルの渦中にいる彼よりずっと大人な人間なのだと、己惚れていたかもしれない。


だけど彼は実際は自分より落ち着いて、広く物事を見られる人間に成長していて。

それとも元からそう言う一面があったのだろうか?だけど子供だった七海には、分からなかっただけなのかもしれない。




五歳の翔太と馬鹿笑いをしながら遊ぶ黛は、図体が大きいだけの子供にしか見えない。




それを見て、それがその人の本質だと思い込むような人がいたら―――それこそその当人がまだ子供の目線しか持てていないって事なのかもしれない。

真剣に翔太と戦いごっこをする黛を見ながら、七海はそんな事を考えたのだった。




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