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38.女性あしらいの上手い美男


今までのぶに連れて来られたのは、楽しく遊べるような場所や彼の友達がいる賑やかな場所が多かった。

このように静かなレストランに連れて来られたのは、信と一対一で行動するようになってから初めてでは無いだろうか。だから七海はかえって落ち着かない気持ちになった。


足元の紙袋に入った花束をチラリと見る。

剥き出しの花束を目にした給仕が紙袋を提供してくれたのだ。


花束を男性から貰ったのも初めてなら、それを自分のイメージで作って貰う事も初めてである。それをサラッとやってしまう信にドキリとさせられたものの、不安になった。


(信さん……いつもこんな思わせぶりな事、女友達にやっているのかな?……これは揉める筈だわ。信さんの性格分かってなかったら、絶対勘違いしちゃうよ……)


以前サークルの同窓会に連れて行って貰った時、友人の眼鏡男性達が言っていた台詞が思い出される。


『あーあ、またやっちゃったよ……』

『良い顔見せるから、執着されんだよなぁ』

『また新たなバトルに突入するかもよ』


恐ろしい……こうしてあの肉食系の女性も底知れない泥沼に嵌って行ったのだろうか。


と七海は震えた。

『ホスト』以上の手腕だ。ホストクラブに通った経験は無い彼女だが、そう確信した。岬が信を『ホスト』と勘違いしたのも、あながち間違いとは言えないかもしれない……と彼女は頷いた。


「何、頷いてるの?」


生雲丹なまうにと空豆のタリオーニを取り分けた皿を差し出しながら、信が尋ねた。

七海は現実に立ち返る。すると目の前の美味しそうな生パスタとつやつやした空豆に目が惹き付けられてしまい、少し上の空で返事をする。


「ええと、信さんって女性あしらいが物凄く上手だなぁ……と」

「へぇ?ちょっとはドキッとしてくれたの?」


信が面白そうに七海の顔を覗き込んだ。

またそんな意味深な仕草を……!とドキドキしながら七海は頷いた。


「しますよ、そりゃ。信さんがモテまくるの、十分理解しました」

「別にモテまくってはいないけれど……俺は大事な人、一人だけに好かれれば十分なんだけどな」

「どの口が言いますか?色んな女性に優しくしてるくせに、説得力ありませんよ」


七海が笑いながら言うと、信が眉をしかめた。


「俺、七海ちゃんにしか優しくしていないけど」

「またまた~、お上手ですね。この台詞で皆さんグッと来ちゃうんでしょうね」


真顔で笑わせる作戦かと思い七海が笑い飛ばすと、軽くあしらわれた信はガクリと首を項垂れて溜息を吐いたのだった。







メインディッシュは『和牛とんがらしのグリル』だ。『とんがらし』とは腕肉の一部で切り出した形がそのまま唐辛子に似ている事からそう呼ばれているらしい。

信が説明してくれるのを聞きながら、七海は噛みごたえのある赤肉を頬張った。


「ん!油がじゅうっと出て来る。スゴイです」

「うーん、野性的な味だね。大振りと言うか」


二人はたっぷりと豪華ディナーを堪能した。

デザートにサーブされたヨーグルトと紅茶のムース盛り合わせにスプーンを入れる頃には、七海の意識からすっかり会社での気の重い出来事は抜け落ちていた。


「はぁ~満足です~」

「それは良かった。連れて来た甲斐があったよ」


信は目を細めて七海を見ていたが、少し声のトーンを落として尋ねた。




「ところで、仕事場の同僚に何て言われたの?」



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