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2.ワイルドなお迎え


「七海!」


会社を出た所でサングラスを掛けた背の高い男が七海に駆け寄って来た。

肩まで髪を伸ばして口髭を生やしており、Tシャツに赤いライダースジャケットを羽織っている。ベージュのチノパンに付いたキーチェーンがジャラジャラと音を立てていた。


七海は見覚えの無い男の接近に眉を顰めた。


「え……と、どなたですか?」


男がサングラスを外すと、見覚えのある顔が現れた。


「俺だって!」

あらた君!」


春休みの間フラフラ外国巡りをしていた知合いの弟は、すっかり様変わりしていた。


「見た目変わったから分からなかった!何この髭と髪」

「ワイルドでしょ?」

「う、う~ん……」


ちょっと前までは爽やかな若手イケメン俳優みたいに少し長めの前髪の短髪を無造作に散らし、Pコートにストライプのマフラーと言ったトラッドな装いだった。七海は前の方が好みだなと思ったけど、余計な事は言わないようにした。三人兄弟の末っ子で王様みたいな気質なのだが、新は妙に傷つき易い所がある。


「ね、約束したでしょ。二十歳になったらお酒奢ってくれるって」

「ああうん」


ゲームで勝ったら奢ってやる、と言って勝負をし七海はアッサリ負けたのだった。やはり学生には敵わない。


「スマホ見てないでしょ。唯と俺から連絡入れたのに」

「え?あれ……あっ、本当だ」

「じゃあ、行こ。もう唯が予約してくれたから」

「唯はもう向かってるの?」

「仕事あるから、後で合流だって。いっぱい奢ってね!楽しみだなー」

「ほどほどにね……」


本当はもう一人、ゲーム仲間も加わる筈だったのだが仕事が忙しく合流するのは無理らしい。そう言えば彼が就職してから顔を合わせていないなぁ……と七海は思った。国家試験に合格し大学病院で臨床研修が始まり、大層忙しいらしい。


「早く行こう、お腹空いたよー」


学生の食欲の凄まじさを思い出して少しヒヤリとする。友達の唯と折半になるとは言え足りるのだろうか……と、七海は頭の中で財布の中身を参照した。


そして腕を引っ張られるように、七海は新に連行されたのだった。




二人のその様子を、同じ課の女性達が立ち止まって伺っていた。

ヒソヒソと会話を交わす彼女達に、七海はまたしても気付かなかった。



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