表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/97

26.楽しみですか

七海が肩を落として廊下を歩いていると喫煙室の傍まで来たとき声が聞こえた。

どうやらパーテーションの扉が閉まり切っていないらしい。


昔一度禁煙ブームに乗って七海の会社も全面禁煙になった事があったそうだが、ビルの外やお昼に喫茶店で喫煙する職員が増え、事務室になかなか帰って来ない事が問題となり、一部の愛煙家のために喫煙室が復活したそうだ。


「で、どうだった?『魔性の女』は」


何だその時代錯誤なネーミング、とその時は思っただけだった。

聞かれた相手の声に聞き覚えがあると気付くまでは。


「んー、普通?真面目~なイイ子だよ」

「まあ、見た感じそうだよな」


思わず向こうから目に着かない場所で脚を止めてしまう。


「でも三人の男を手玉に取っているんだろ?」

「岬さんのやっかみだろ?あの人自分以外の女が注目されるの許せないタイプだからな」

「可愛いからいいじゃん」

「おまえ、ホント好きな。あーいうタイプは面倒だぞ」

「面倒掛けられてもいい。むしろ掛けられたい」

「ロリコン」

「何だと?俺は合法ですから。彼女アラサーよ?お前の方がおかしい。『魔性の女』が男性経験豊富だってのが噂だけだと思ってるんなら、何で声掛けたんだ?」

「脚」

「え?」

「彼女脚、綺麗じゃん」

「ああ~出た!脚フェチ!」

「それにあーいう地味なタイプの方が仕込みがいがあるんだよ。昼と夜のギャップがあるのが良い」

「おめー鬼畜過ぎるよ!そんな朗らかに笑いながら言うなよ!」

「ハハハ……」


七海の頭は真っ白になった。


どう考えても『脚フェチ』は立川。そして話を聞いているうちにやっと思い出したが……岬を気に入っているのは同じ営業部の田神だった。そして『魔性の女』とはもしかするともしかしなくても―――七海の事だ。なぜ。





全く身に覚えが無い。というか七海は四半世紀、真面まともに男性と付き合った事すらないのに。





今度は七海の顔が、蒼白になった。

クルリと踵を返し、七海は喫煙室の前を通るエレベーターへのルートを諦めて―――非常階段へと向かったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ