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Crow in the dark 贖罪の山羊  作者: えむ
〇〇九
43/45

04

「アンタ、本当の糞野郎だったんだなぁ。だったら──」


 パーカーとシャツの袖をまとめてたくし上げるロニ。露わになった腕には幾何学模様がいくつも描かれている。


「──遠慮なくやれる」


 掌を返し、かかってこいと煽った瞬間、メイソン・ジョーンズが飛び掛かった。


 右の剛腕が風を切って唸りを上げる。が、ロニは軌道の真下を屈んで避ける。そして避け様に左の拳を腹に叩き込んだ。重低音が響くと同時、衝撃が腹を貫いて背後ろの空気が揺れる。


 重い一撃を喰らったメイソン・ジョーンズが地面に崩れ落ちる。


 肋骨が折れたらしい。息も絶え絶えに嗚咽を漏らし、口腔から涎をぶちまける。


 一撃。


 たったの一撃でメイソン・ジョーンズの頭の中からは戦意が消失していた。


 この場から逃げ去りたい、消え去りたいという衝動で胸中を埋め尽くされ、四つん這いの格好でメイソン・ジョーンズはじりじりと逃走を図ろうとしたが無意味だった。


 跪く山羊頭の怪物へ、ロニは掌を向けて呟いた。


「重みが欲しいか? だったらくれてやる」


 直後、不可視の塊のようなものがメイソン・ジョーンズの全身に降りかかった。

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