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Crow in the dark 贖罪の山羊  作者: えむ
〇〇九
42/45

03

「くぁ……金の次は、暴力かよ……ダメンズじゃないっすか監督ぅ」


「……仕方がなかった」


「仕方が、ない?」


「グランツハウスの社長は、ジョーンズ工務店を潰す気だった」


 グランツハウスの社長はメイソン・ジョーンズへ金を渡し、外壁補強の志願を取り下げるよう迫ったのだと言う。


 しかしメイソン・ジョーンズは断った。


 それを皮切りにグランツハウスはジョーンズ工務店が有する作業員の引き抜きを始めた。


 バーミッドグロウ塗装、ホームタイム・インクとは旧知の仲で助け合って経営を続けていたのだが、グランツハウスから金を渡され、ジョーンズ工務店との縁を切ったらしい。


「そいつら全員山羊に変えてやったよ」


 それならば他に山羊にされてしまった人たちは、そんな私怨とは関係ないのではないか。


「確かに関係ない。だが、関係ないからこそ」


 金のネタに出来た。とメイソン・ジョーンズは言う。


 私怨が終わればあとは、稼ぐため。会社を潤すため。


 そんなことがあって良いわけがない。


 ロニは立ち上がりながら思う。


 人間関係とは面倒なものだ。裏を読もうとし、表を作って腹を探り合う。利益を求め、余計なものを捨てる。条件によっては差し出す。それがたとえ今まで大切にしていたものだったとしても。


 確かに、大切なのは自分だ。それは間違いない。しかし、誰かがいなければ今の自分は居ないわけで、自分が居なければば周りがないのだ。


 他人は一であり、一は自分である。


 ともすれば、他を捨ててしまった人間は自分を捨てたも同然だ。


 ロニは言う。

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