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Crow in the dark 贖罪の山羊  作者: えむ
〇〇八
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07

 誰かが目的を持って行動しなければ、同一の血液型を持つ人間が失踪するというような、共通項を持つ事件は説明が出来ない。


 さらに共通項はもう一つある。


 それは、先の夫人との会話の中で確立した要素。


 ロニは以前からの聞き込みの中で、街の住民から人の声ではない何かの鳴き声の証言を得ている。合わせて前日の聞き込みで得た、山羊の目撃証言と削り取られた内壁。そして、今まさに思い出したバフォメールの特徴。


 これらの要件が全て一致してバフォメールであると仮定すると、この山羊は失踪者が出た夜には必ず出没しているということになる。


 外から入ってきた可能性──は絶対にありえない。


 山羊には確かに蹄があって山肌を昇降することはできるが、外壁はあくまでも垂直。バランス感覚でどうなる問題ではない。そして決定打として街周辺の生態系を調査している鳥獣保護局が持つ分布図がある。


 これを見る限りバフォメールが生息している事実はない。仮に居たとしても近隣の森に棲むヴォルフに捕食され、一日足らずで絶滅する。


 もしも生息しているとすれば、森を越えた先にある高山。自生するカラサリスの絨毯が広がる裾野を挟んだ山の向こう側でしか考えられない。理由としてはカラサリスと、山を流れる清流の存在。


 カラサリスは言わずもがなヴォルフ除けの植物。


 山中を流れる水は鉱物から染み出すミネラル分を多く含んでいる。水は、含有するミネラルが多くなれば独特な味のしまりと重さを持つようになる。


 鳥獣保護局の分布図を見れば、その清流がある区域にはバフォメールを含めた数種の山羊が生息していることが分かる。

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