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Crow in the dark 贖罪の山羊  作者: えむ
〇〇一
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02

 ふざけた口調とは真逆の折り目正しい敬礼に、反射的に敬礼を返すシルベスタ。両手の支えを失ったアーモボックスが床に落ちて中身が散乱する。


 とは言っても、箱から飛び出たのはペンとインクと封筒、本が二冊と写真立て。


 箱にまとめるほどの量でもない荷物だったため、二人がかりで拾い集めると元通りになるのは早かった。


「ありがとうございます」


「はいはい。どういたしましテーブルロール」


「デスクはどうすればよろしいですか?」


「あーシルベスタ君には、あの席を使ってもらおうかな」


 言われてシルベスタは指示された席にアーモボックスを置く。


「係長」


「どうかしたカイザーゼンメル?」


「…………係長は、パンがお好きなんですか?」


 クロワッサンもテーブルロールもカイザーゼンメルも、全てパンの種類である。


「ほう、シルベスタ君はパンに詳しいのかい」


「はあ、まぁ……いやそうではなくて」


 小首を傾げるグスタフにシルベスタは尋ねる。


多面担当ここは係長と自分の他には?」


 まさか二人だけということはないだろうとシルベスタは思う。


 デスクは二つ一組を向い合せた形で八つあり、机上はどれも書類や帳簿で散らかっている。


 グスタフは自分のデスクに戻り、書類に埋もれたロールパンを引っ張りだしてシルベスタの疑問に答える。


「いるよもう一人。女の子でね。あ、今はちょっと外に出てるよ」


 係長と自分ともう一人。


 しかも女。


「三人だけ、ですか」


「そ。少数精鋭だよ、少数精鋭」


 そう言われると聞こえは良い。

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