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太陽と不死炎の少女  作者: 木戸銭 佑
始まり編:不死炎の魔法少女
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第二章 2

 それから数日が経って、のかなは相変わらず新しい魔法の勉強に悪戦苦闘しながらも新しい友人の助けもあって着実に前に進みつつある。

 机の上でデータについて議論する二人はまるで古くからの友人のようであった。

「ここはこうなるんじゃないじゃろうか」

「『でもこうすると魔力の圧縮率が低くなって効果が下がっちゃうよ』」

「うーん…………やっぱり難しいね。ここは(もち)()に聞くしかないかな?」

 おもむろにデバイスを取りだしたことかはめろんと連絡を取ろうとして驚く。その画面には怪物の出現を告げる警告がでかでかと表示されていた。

「おかしいな、いつの間に…………どうして警告音が鳴らなかったんじゃろ…………」

「『どうしたの?』」

「怪物が出たらしいんじゃけど…………のかな、あんたのデバイスは?」

 のかなはデバイスを取り出して確認する。

「『こっちにも警告はあるけど…………二人いてどっちも警告音に気づかないなんてことがあるのかな?』」

 不可解な事にことかは神妙な顔で思考する。

「故障かなぁ? でも、二個同時に故障するなんてことはまずありえんもんじゃよ。デバイスの自己診断では何の異常も無いみたいじゃし、何かおかしいなぁ…………」

 のかなは気楽に提案する。

「『とにかく行ってみようよ。何も無かったらそれでいいし、何かあったら大変でしょ?』」

「…………そうじゃな、行ってみるか」

 拭いきれない違和感に不穏な物を覚えながらも、二人は怪物の反応がある場所へと向かう。

 廃工場であるそこは使われなくなって何年経っているのかというほどに寂れ、少しの衝撃で壊れてしまいそうなほどに老朽化していた。

 人気の無い工場内を警戒しながら二人は探索する。本来ならば二手に分かれれば効率がいいのだが、ことかはその提案を受け入れようとはしなかった。

 ふんふんと犬のように鼻を鳴らしたことかは言う。

「するな…………嘘の臭いが。ここには嘘がある。一見何も無いような感じじゃけど、とんでもない化け物が息を潜めて待っている。一人で行ったら死んだ事も分からん内にやられるよ」

 目を閉じてのかなは周囲に気を張り巡らす。

「『魔力反応はそれほど強いものじゃないみたいだけど…………』」

「そんなものはいくらでもごまかせる、漫画で言う戦闘力みたいなもんじゃ頼りにならん。私は嘘の中で生きてきた人間じゃ、嘘には鼻が聞く。ここは帰るのが得策じゃ。…………しかし、そう簡単には帰れそうにはないみたいじゃけどね」

「『どうして?』」

 ことかはそっけなさを装いつつ言う。

「振り向くんじゃないよ。…………なんか得体のしれないヤツにさっきからつけられとる」

「え?」

 とっさに後ろを振り向いた瞬間に怪しげな影はどこかへと消えてしまう。迂闊なのかなをことかは怒鳴る。

「アホか! 振り向くなって言ったじゃろ! そんなギャグは広島じゃ生後一週間しか許されんよ!」

「『だ、だって、無意識だったんだもん。悪気があってやったわけじゃないんだもん!』」

「ちぃ…………気づいているのがバレたからには一縷の望みも無くなったか。こうなりゃ正面から突破するしかなさそうじゃ」

 二人の前に閉じた倉庫が立ちはだかる。他の扉は全て開け放たれており、この先に強大な何かが待ち受けているということはほぼ間違いなかった。

 その扉に手をかけたことかは開ける前に神妙な顔で言う。

「いいか、のかな。この先、私がどんな事をしようとも私を信じてくれ。勝つためには信頼がいる。おそらくこの扉の先で待っとる敵は正攻法じゃ絶対に倒せんと思う。そんなヤツを相手にするからにはそれ相応の覚悟が必要じゃ。のかな、お前にその覚悟はあるか?」

 問われたのかなは少しの思考の後に平然と答えた。

「『…………分からない』」

「覚悟はできんということか?」

 ふるふるとのかなは首を振った。

「『そういう事じゃないの。なんて言うか、最近はそんな事まるで考えて無かった。こうやってことかちゃんと一緒に居られることが嬉しくて忘れちゃってたみたい。信じられる仲間が居るってこんなにも心強い事なのかな?』」

「のかな…………」

 ことかは直感的にのかなが非常に危うい存在であると感じた。戦いの中では仲間に信頼以上の感情を持ってはいけない。時には躊躇無く見捨てることができなければ自分の命すら危うくなる。

 ことかに親類のような感情を抱いてしまった今ののかなはことかには安心の代わりに牙を失ってしまった獣のように映った。

(いかんな…………これじゃ最悪切り捨てる事も考えに入れとかなくちゃならんかも…………)

 その考えがのかなの信頼を裏切る事を知りつつも、ことかは完全に否定するつもりはなかった。

 ことかにはいかなる犠牲を払っても殺さなければならない相手が居る。そのために裏切り者と罵られる覚悟はすでにできていた。

(覚悟ある者だけが先に進める。のかな、お前の覚悟はどれほどのもんじゃろうか。私にはお前のそれが未来に通じる程強いものには思えないんじゃよ…………)

 ことかが錆びついた扉を開ける。古びた倉庫の中に入った途端、その扉は自動的に閉まり二人は中に閉じ込められる。

「なっ!?」

 驚いている暇も無く、強烈なライトの光が二人に降り注いだ。その光に怯んでいると拡声器から若い男の声が響いてきた。

「『動くな、抵抗すれば容赦はしない』」

「誰じゃお前は!」

 段々と光に目が慣れてきたのかなは男の姿を見る。ライダースーツのようなぴっちりとした服に身を包み、目には獲物を狙う鷹のような鋭い眼光。年はのかなとそう離れていないように見受けられるが、その顔は幾つもの試練を乗り越えてきたかのように精悍(せいかん)であった。

『識別番号A―12365。上級執行官、天羽狂志郎(あもうきょうしろう)

「じょ、上級執行官じゃと!?」

 のかなは小声で聞く。

「『知っているの?』」

「ああ、組織には独自権限で魔法少女を審判できるオンブズマン的な役割を持つ部署がある。それが『執行官』。その中でも上級とされる者は自分の判断で魔法少女を裁く事ができると言われているそうじゃ。そして、上級執行官の力は一人で軍隊と同等とも言われておる…………」

「『それじゃこの人が私達に向けられた刺客………そして多分警告はダミー………』」

「どうやら嵌められたみたいじゃね…………」

 狂志郎はことかの言葉が終わるのを待って話し始める。

「『俺はお前達の生殺与奪を握っている、無駄な抵抗は命取りだ』」

「無駄かどうかはやってみないと分からんじゃろ!」

 当然のように狂志郎は言う。

「『いいや、分かる。いや、分かっているはずだ。そっちの魔力の乏しい方はともかく、お前程の魔力を持つ魔法少女が分からないはずがないだろう』」

「ちぃ…………」

 狂志郎は紙を読み上げるように淡々と語る。

「『お前達二人には魔法使用における条例違反の嫌疑がかけられている。素直に投降されたし。あまり俺の手を煩わせるな』」

 条例違反などのかな達には身に覚えの無いことだ。それが嘘である事は明白である。しかし、もし素直に投降などすれば弁明など許されずに殺される事となるだろう。狂志郎の言葉に従う事はできない。

 だが、投降しないということは上級執行官である狂志郎と戦うという事を意味する。どちらにしてもその先には死が待ち受けているだろう。

(だけど…………戦わずに負けを認めるなんて事は絶対にしたくない!)

 ことかとて同じ気持ちのはずだとのかなは隣を見るが、そこには信じられないことに地に手と頭をこすりつけていることかが居た。

 悲壮感溢れる顔でことかは嘆く。

「駄目じゃあ! 勝てるはずがない! 上級執行官様に歯向かおうなんて無謀すぎる。私は投降するけぇ、命だけは助けてくれぇ!」

「『こ、ことかちゃん…………?』」

 のかなが茫然としていると狂志郎はつまらなそうに言う。

「『フン………所詮は違反者。立ち向かう気概も無しか…………。そっちのお前はどうする? 素直に投降すれば痛い目を見ずに済むぞ?』」

「『…………』」

 のかなはその答えを無言で杖を構えることによって示す。それを見た狂志郎はにやりと不敵な笑みを浮かべ、拡声器を投げ捨てた。

「フッ…………。その気概や良し! 俺との戦いを冥土で自慢するがいい!」

 言葉と同時に狂志郎が並行世界であるパラダイム空間を展開する。のかなはその隙に扉を破って外へと飛び出す。狭い室内では逃げ回るのは難しい。建物が多く広い場所が少ないここでは巨大な魔法陣を構築することは不可能だ。せめて建物を障害物として利用しながら戦うしかない。

 建物の影に隠れて様子を窺いながらのかなは考える。

(私の魔法じゃ多分あの人を倒せない。私はことかちゃんの行動を信じて待つ。だってことかちゃんは信じて欲しいって言ったから、勝つためにはそれが必要だって言ったから!)

 低すぎる魔力が幸いし、のかなの位置が狂志郎にばれる事はまず無い。だが、それは同時に一切の攻撃が通用しないということでもある。このまま逃げ回っていれば狂志郎が地形を吹き飛ばさない限り見つかる事はない、容易に時間が稼げるだろう。

 しかし、それはのかなの行動への疑問と変わり、ことかが立てている作戦がばれることにもつながる。いつまでも逃げ回ってはいられない。

「出てこい。小細工など俺には通用しない」

 道に仕掛けた紙魔法のトラップを蹴散らしながら狂志郎は悠々と歩いてくる。その手はオーラのような物を纏っているように見える。おそらくあれが狂志郎のマテリアルドライブなのだろう。

(マテリアルドライブは魔力回収だけじゃなくて、魔法の威力を高める効果もある。あれを破壊できれば勝機が見えるかもしれない)

 だが、相手もそう簡単に壊させてはくれないだろう。どうにかして隙を作り、最高威力の魔法を決めなければならない。

(でも魔法陣が展開できない今、私に使えるのは紙の魔法だけ。せめて声が出せれば音声魔法も使えるんだけど…………)

 無い物をねだっても仕方ないとのかなは頭を振って気持ちを切り替える。紙の魔法でも威力を出す方法は無いわけではない。準備に手間がかかる割に効果が薄いとされる紙魔法だが、それはあくまで数枚程度を使用した場合の話だ。

 念じるだけで発動できるということは容易く同時使用ができるということ。強い精神力が必要だが、何十枚もの紙魔法を同時に発動すればその威力は魔法陣にも匹敵する物となる。

(私の持つ火の鳥はそれなりの数がある。これを同時に発動して、同時に命中させられればもしかしたらあの人にダメージを与えられるかもしれない)

 しかし、普通に放つとするならば何十枚もの火の鳥を一切の時間差無く同時に当てることなど不可能だ。本気で当てるつもりならば紙を手で握りこみ、腕自体に魔法を纏い攻撃するしかない。それでも魔法を起動するために敵前での数秒の集中を要する上に発動する腕を捨てるだけの覚悟が必要であり、まだ問題は多い。

 だが、分かっていてもやるしかないのだ。他に勝機は無いのだから。

(…………よし!)

 意を決したのかなはせめて広い場所をと空き倉庫で狂志郎を待つ。床には魔法陣を描きこんである。来ると同時に発動するつもりだ。

 普通に考えればこんな見え見えの罠にかかってくれるような者はいないのだろう。だが、この天羽狂志郎(あもうきょうしろう)という男は真正面から突入し、打ち破ってくる。そんな気がする。いや、それ以外あり得ない。なぜなら、彼は敵の矜持や気概を重んじる男だからだ。敵の策にわざと嵌まりに来るに違いない。

 そしてのかなの予想通り、正面から自信満々に狂志郎は乗り込んできた。

「ふむ………ずいぶんと小細工をしたようだな。よし、それがこの俺に通じるか試してみろ」

「『言われなくても!』」

 のかなは杖で地面を突き、魔法陣を起動させる。吹きあがった炎は倉庫内を包み込み、耐えきれなくなった建物は激しく吹き飛ばされる。

 炎が治まった時、そこに狂志郎の姿は無かった。

(やった? ………いや、あの程度で倒せるわけがない!)

 のかなは狂志郎の姿を探す、上を、左右を、そして下を。奇跡的に地面が盛り上がりに気づいたのかなはとっさに大きく後ろに飛んだ。同時に地面から出てきた狂志郎の鋭い蹴りが入る。かすった程度だがその威力は凄まじく、のかなは大きく吹き飛ばされる。

 体についた土を払いながら狂志郎は語る。

「機械に頼らずここまで正確な魔法陣が描けるとは…………称賛に値する」

「『なら称賛ついでに見逃してくれないかなぁ…………。なーんて…………』」

 きっぱりと狂志郎は言い放つ。

「駄目だ」

「『だよねー…………』」

 先ほどの蹴りをなんとか杖で攻撃を受けたのかなだが、あまりの威力に手が痺れていた。

(かすっただけでこの威力。直撃したら間違いなく一撃で倒される…………!)

 建物が破壊されてしまっため、辺りは見通しが良く隠れる場所までは距離がある。もし一瞬でも背を向ければ狂志郎はのかなに襲い掛かるだろう。

 もはや逃げ場は無い。打つ手が無くなったのかなは目を閉じてあらかじめ包帯のように紙魔法を巻きつけておいた右手に意識を集中させ始める。

「ほう、先ほどのトラップと同じ紙魔法か。手描きの魔法陣といい(ふる)い技術のオンパレードだな。中世からでもやって来たのか? だが目の前で発動を許す程この俺は甘くないぞ!」

 地を滑るように一瞬で距離を詰め、狂志郎はのかなに向けて拳を繰り出した。展開されたバリアを飴のように破壊し、その一撃は体の外から伝わって心臓へと到達する。あまりの衝撃のために心臓が破裂し、のかなの口から声にならない音が漏れる。

「あ………うあ……………」

 焦点の合わない目でふらふらと歩いたのかなはぱたりと崩れ落ちる。その体から赤い液体が染み出して地面に吸い込まれていく。

「後一人」

 狂志郎はぽつりと呟き、踵を返した。


「ここまでくれば…………」

 その頃のことかはパラダイム空間の端に居た。

 先ほどの演技は過剰ではあったが、上級執行官に勝てないというのはことかの本心であった。生半可に実力があるからこそ、その差をありありと感じ取ってしまう。力の差に恐怖してしまったことかではのかなのように勇敢に戦う事などできなかった。

 それにことかにはマリー=マールという絶対に倒さなければならない相手が居る。こんな所で死ぬわけにはいかないのだ。――――例えそれが自分の事を信じると言ってくれた仲間を見捨てることになったとしても。

「後はこの障壁を破壊すれば外に出られる…………」

 ことかは呪文を発動するために詠唱を始めた。しかし、そのために集中しようとすればするほど頭の中に邪念が増えていく。

『敵でも味方でもないよ。私は友達』

『信じられる仲間が居るってこんなにも心強い事なのかな?』

『………ありがとう、ことかちゃん』

 脳裏のよぎる記憶の断片がことかの決意を揺るがせる。復讐のために友も何もかも捨てると決めたあの日を誓いが崩れそうになる。

(私は復讐のために全てを捨てると決めた! これでいいんじゃ! 今から助けに行って何になる、どうせもうのかなも殺されとる。戻ったら私も殺されるのがオチじゃ! 正直に戦っとったら二人とも殺されとった。私の判断は正しい、正しいはずなんじゃ…………)

 振り切るように放ったことかの魔法が壁に当たり、そこに大穴をあける。

(…………じゃあな、のかな)

 ことかは目の前の暗闇に向かって歩き出した。


「…………逃げたか、臆病者め」

 パラダイム空間の破壊を知った狂志郎はつまらなそうに呟いた。逃がしてしまったのは失態だが、もともとそれほど乗り気ではなかった任務だ。特に思う事はない。それより今は非力ながらも自分に挑んだ勇敢なる少女を弔ってやりたいと思った。

「偉大なる戦士よ、その御霊安らかに眠れ」

 死体を回収するために触れようとした瞬間、ぴくりとのかなの体が動き、驚いた狂志郎は大きく飛びのいた。

 右手の包帯のように巻かれた紙が燃え始め、その炎が全身へと広がっていく。不思議な事に炎は服を燃やすような事は無く、地面の血に燃え移り、ゆらりと起き上ったのかなに吸収されて傷を消していく。

「…………聞いた事がある。炎を扱う魔法使いの中には炎の物理的な性質とは異なる法則を持つ再生の炎を使う者が居ると。死者をも蘇らせるというその炎は大戦の最中(さなか)に失われたとされていたが…………」

 やがて、のかなの目に強い光が宿る。ただまっすぐに己の敵を見据え、構えを取る。

「不死炎の魔法少女よ、まだ戦うというのか。もう一人の魔法少女はとっくに逃げてしまったというのに」

「『……ことかちゃんは逃げてなんかいない、私はことかちゃんを信じる!』」

 哀れなのかなを見て狂志郎は難しい顔をした。

「悲しき魔法少女よ。お前は純粋過ぎる。疑う事を知らなければつらいだけだ」

「『それでも私は信じたい。疑うばかりで信じられないなんて悲し過ぎるよ。どんなに裏切られたって構わない。この気持ちを止めるくらいなら!』」

 のかな自身も戦いを続ける事に愚かさを感じていないわけではなかった。ことかが自分を見捨てたというのはおそらく本当だろう。それは少し悲しくもあったが才能が無い自分では仕方ないと思う所もあった。

 みんな自分の元から去っていく。自分に才能が無いから、自分に能力が無いから。それがどうしようもない事だと知りつつものかなは抗う事を止めない。もう二度とあの空を落ちるような経験はしたくないから限界を越えてものかなは引き下がらない。

(この人強い…………まるで敵う気がしない。なんとか戻ってこれたけど、そう何度も戻れるものじゃない。このままじゃまたすぐ殺されちゃう)

 のかなの体が恐怖で震え出す。押さえようとしてもどうしようもなく震えは全身に広がってしまう。

(怖いよ…………逃げ出したいよ…………死ぬほど痛いのだってもう嫌だ。…………でも!)

 ぎゅっと拳を握りしめ、怯えを振り払うようにのかなは叫んだ。

「それでも…………私は魔法少女なんだ!」

 完全なる滑舌により紡ぎ出された言葉はのかなに勇気を与えた。杖を背中に回し、のかなは左手にも紙を巻きつけて両手に炎を纏う。

(右手だけじゃ届かない。この人に勝つには両手じゃなくちゃ。けれど代わりに杖の補助が一切受けられなくなる。そうなれば魔力のチャージもバリアの展開も不可能だ。防御は炎による再生でごまかすしかない。どうせ一撃貰ったら負けなんだ。恐れは全部置き去りにしていく!)

 覚悟を決めたのかなは炎の爆発で加速し、狂志郎に肉薄する。

「来るか炎の、この俺に接近戦を挑んでくるのか? その意気や良し! だがそれは勇気ではない、無謀だ!」

 加速してなお狂志郎の方が速い。連続する炎の拳を受けきり、狂志郎はカウンターの一撃を繰り出す。

()ァ!」

 槍のような鋭い突きは迷いなくのかなの急所を狙う。あまりの速度にのかなは反応しきれずに食らってしまう。

 しかし、狂志郎は妙な手ごたえを感じていた。

「…………むっ!」

 のかなの姿が掻き消える。それは炎の熱によって生み出された陽炎(かげろう)だったのだ。のかなの魔力の異常な低さは幻影との差異を失くし、魔力を持つ残像としてこのチープな迷彩を成立させる。これはのかな自身が狙ってやったわけではない、全ては偶然によるものだ。陽炎による残像もそれによる迷彩も何一つ考えてやったことではない。

 しかし、今の状況は間違いなくのかな自身の諦めない意志が作りだした物であった。

「おおおおお!」

 バリアを張る狂志郎は相変わらずの圧倒的優位にあるにも関わらず、心はこの不気味な敵に恐れを抱き始めていた。

(こいつ…………恐れを知らないのか? 一度殺されてなお、ここまで勇敢に戦える勇気はどこから来るというんだ。いくら再生の炎があるといってもそれは確実ではない。生き返れる保証などどこにも無いというのにどうしてここまで戦える?)

 狂志郎はのかなの瞳に見る、そこに宿る不死の炎を。どんな困難があっても、どんな不可能が立ちふさがることがあっても諦めることのない強い意志の力を。根拠などどこにもない情熱だけで突き進む太陽のような熱さを感じ取った。

(さながら剥き出しの太陽だ。実力から言ったら俺には遠く及ばない。だが、その精神力は俺に得体のしれない恐怖を覚えさせる。俺のバリアをこいつが打ち破る事は不可能だ。しかし……万が一、何か奇跡のようなものが起こったとしたら…………?)

 起こりえるはずの無い何かが起こってしまうような、そんな予感を覚えさせる風を狂志郎はのかなから感じていた。

「フッ…………面白い。意地だけで俺を倒せるかどうか、やってみるがいい」

 不意にバリアを解いた狂志郎は周囲に意識を集中する。体の力を抜いて三百六十度全てに気を張り巡らせ、あらゆる攻撃に反撃する狂志郎の奥義『恐怖に先立つ者(アンテメトゥス)』。発動には極度の集中を要し遠距離からの攻撃には全くの無防備だが、近距離に置いてはいかなる攻撃にも打ち勝ち相手を倒すとされる正真正銘の必殺技だ。

 これまでの流れでのかなに強力な遠距離攻撃が無いという事はバレている。本来ならばこの程度の相手に狂志郎が奥義を使うということはあり得ない。これは狂志郎なりの敬意であり、この偉大なる戦士が自分との戦いを冥土で誇れるようにする手向けの花なのだ。

「おおおおおお!」

 のかなは狂志郎がカウンターを狙っているなどとは露も知らず、バリアが解けた所を狙って拳を叩きこもうとする。おそらくこの攻撃が炸裂する瞬間、狂志郎がその攻撃を打ち破りのかなを殺すだろう。

 さっきは心臓だけであったためになんとか蘇生できたが、今度の一撃は下手をすれば魔法である程度の強化がされているのかなの半身が吹き飛ぶほどの威力であり、どうあがいても蘇ることはできない。

 恐怖を振り払う事によって道を切り開いてきたのかなは皮肉にも恐れを知らない事で倒されるのだ。

「おおおおおおお!」

 動き出したのかなは止まる事を知らず、自らの手で破滅の引き金を引く。狂志郎の動作が始まる。最早死は免れない。

「『恐怖に先立つ者(アンテメトゥス)』」

 繰り出されたのは何の変哲もない拳だ。しかし、それが避ける事も防ぐ事もできず、確実に自分の命を刈り取る死神の鎌であるということは一度死んだのかなには嫌という程理解できた。

(ここで…………こんな所で私は終わりなの…………?)

 死の刹那、のかなの心には絶対にしまいと決めていた後悔があった。それは自分を支えてくれた人たちへの申し訳なさであり、何よりあの日の真実を見つけることができなかった悲しみであった。

(終わりたくない…………私はまだ何も見つけていないんだ!)

 閉じかけた目をカッと開き、のかなは死の方向を見据えた。それが己の急所に向かっている事を理解した瞬間、のかなは驚くべき行動に出た。

「なに!?」

 左手に巻きつけた紙を爆破し、大きく横に吹き飛んだ。当然狂志郎の攻撃は不発となるが。炎を削ってまで攻撃を回避したのかなに左手を再生するだけの力は残っていない、実質的に片腕を失ったのと同義だ。かろうじて生き残ったものの身に纏う炎も消え、陽炎の迷彩も無くなってしまった。 

 残っているのはいまだ燃え続ける右手の炎だけで、もはや立っているのがやっとの状態だ。それでものかなの瞳の炎は消えるどころかより強く燃え盛る。

「…………不死炎の魔法少女よ、『恐怖に先立つ者(アンテメトゥス)』すら退けるお前の度胸と判断力は大したものだ。しかし、それはわずかに死を引き延ばしただけで何の意味も無いのではないか? この先の未来に希望はどこにも無いぞ」

 満身創痍の体を何とか持たせながらのかなは強がりの笑みを浮かべる。

「『確かに死を引き延ばしただけなのかもしれない。あなたに勝てる気なんて全然しないし、痛くて今にも気を失いそうだし、正直逃げ出したい気持ちでいっぱいだよ。…………でも死にたいだなんてこれっぽっちも思わないし、まして未来に希望が無いなんて絶対に信じない。未来は自分で作り出す物なんだ! 私はこの右手であなたを倒す!』」

 狂志郎は事実上のホームラン宣言を受けて声を上げて笑い出した。

「フッ…………ハハハハハハ! この俺にそんな事を言ったヤツは初めてだ。いいだろう、俺も宣言してやる。『恐怖に先立つ者(アンテメトゥス)』によりお前を倒すと」

 両者それぞれの構えを取る。のかなは右手の炎を最大限に高め、狂志郎は目を閉じて意識を集中する。まるで時間が止まってしまったかのように時の流れは遅く、永久にこの瞬間が続いていくような気さえする。だが、時間の抵抗を振り切って少女は未来への一歩を踏み出した。

「おおおおおおおお!」

 今までよりも速く、そして鋭い攻撃だ。最早小細工など必要とせず真正面から狂志郎に突っ込んでいく。対する狂志郎は静を持ってそれを迎え撃つ。のかなの爆発のフェイントを全て読み切り、確実なとどめを狙う。

 最悪、体のどこかを捨てれば回避できるのかなに対し、カウンター狙いの狂志郎が不利な感は否めない。狂志郎自身もそれは分かっているが、あえて『恐怖に先立つ者(アンテメトゥス)』で迎え撃つ事に決めた。

 戦術としてはバリアを張りながら相手の自滅を待つのが一番良いのだろう、そうでなくとも正面から力で叩き伏せることもできる。

 しかし、それでは詰まらないと狂志郎は感じていた。この恐れを知らぬ挑戦者がどこまでやれるのか見たくなってしまった。自分の行動が愚かだと知りつつも狂志郎は一瞬ごとに進化していく少女から目を離せなくなっていた。

(爆発による軌道変化はすでに見切った。今度はどう切り抜ける? 不死炎の魔法少女よ)

 狂志郎はのかなが何かをしてくると確信していた。問題はそれがどういうものであるかということだ。このまま正面からぶつかっていっても勝てないことは分かっているはず、だから必ず何か行動を起こす。そう狂志郎は考えていた。

 しかし、のかなの瞳を見た瞬間、その考えに揺らぎが生じた。

(一点の曇りも無い目をしている…………。まさか、何の策も無しに玉砕覚悟で来るつもりか!?)

 馬鹿な、と狂志郎は思うがすでにのかなは全力を出し切っている、余力などあるはずがないというのも事実だ。それならば無策というのもありえない話ではないが、今まで全力で勝ちに来ていた相手だからこそ、この無謀な突撃がより不思議に思える。

(何故だ? 何故そこまで迷いを振り切れる? 無謀でしかない行動にどうしてそこまで自信を持てる? その力は一体どこから来るというんだ!?)

 何の変哲も無い突撃が狂志郎の迷いを生み、奥義を封じる。不発になった『恐怖に先立つ者(アンテメトゥス)』の代わりに狂志郎はバリアを展開する。

(チィ…………この女、俺を気迫で圧倒するか!)

 そこに隙が生まれた。約束をたがえたという後ろめたさがいつもの狂志郎ではありえない索敵の不足を呼んだ。

「なぁ、アンタ。それは男らしくないんじゃないの?」

「!?」

 狂志郎は自分の耳を疑った。その声は間違いなく、先ほど逃げ出したはすの魔法少女、道下ことかの物であったからだ。

「概念を統べるベルテルスの名を持って告ぐ、【壊れろ】空間!」

 ことかの放った黒い衝撃は狂志郎のバリアを容易く叩き割る。

「いけ! のかな!」

「おおおおおおおおお!」

 体勢の崩れた状態のままで狂志郎はのかなの拳を腕で受け止める。だが、到底止め切れるものではなく大きく吹き飛ばされ、地面を転がった。

「くっ…………!」

 攻撃を受けてなお狂志郎は立ち上がるが、片手は力無く垂れ、その目は明らかな疲弊をたたえていた。このまま戦闘を続行するのはいささか無理があるように見える。

 のかなを庇うように前に出たことかは杖を構えつつ狂志郎を睨みつける。

「まだやる気か? 今度は私が相手じゃよ!」

「………………」

 しばらく無言で二人を見つめていた狂志郎だが、詰まらなそうに鼻を鳴らすと動かない腕を押さえて背を向けた。

「…………今回は俺の負けだ。しかし、次はこうはいかない。覚悟しておけ」

 狂志郎はパラダイム空間を解除するとしゅんと一瞬の内に姿を消した。その後ろ姿にことかは自信満々に言い放つ。

「へっ、おととい来るんじゃな! 誰が逃げ出したって言うんじゃ、好きかって言いよってからに。全ては作戦じゃ! この道下ことかを舐めるんじゃないよ!」

 言いたい事を言えて清々したという顔のことかだったが、のかなのジトっとした視線を感じると慌てていいわけを始めた。

「ほ、ホントに作戦なんじゃって。信じてな、のかな。広島人嘘つかない。その証拠にちゃんと助けに来たじゃろ? な? な?」

 のかなは満面の笑みで炎の拳を震わせる。

「『こーとーかーちゃーん?』」

「ああ! 嘘です! すんません! た、確かに初めは逃げようと思ってたんじゃ! でも、どうしてものかなを見捨てらなくて気が付いたら戻ってきていたんじゃ。信じられんかもしれんけどそれは本当じゃけぇ、どうか炎のパンチだけは勘弁してぇ!」

 体を縮こまらせて震えることかを見たのかなは声を上げて笑い出した。

「あははははははは!」

「…………のかな?」

 何がおかしいのかことかには理解できなかったが、やがてのかなは優しげな笑みを浮かべて言った。

「『別に怒ってないよ。だって、ことかちゃんは嘘ついてないもん。ちゃんと戻って来てくれたし、何よりそのおかげで勝てた。…………ちょっとばかり遅かったけどね』」

「のかな…………」

 驚いた様子のことかは照れくさそうに頭を掻いた。

「敵わんもんじゃねぇ、のかなには。誰かを信じるとか大声で叫ぶなんて私じゃったら赤面もんじゃよ」

 改めて指摘されるとさすがに恥ずかしかったのか、のかなは顔を赤くした。

「『あはははは…………。それはその場の勢いってやつで…………』」

「にひひひ、かわいいヤツじゃな。愛しとるよ、のかな」

「『もう、ことかちゃんたら…………。調子乗らないの』」

 のかなはふぅとため息をつくと、改めてことかを見た。しばらく見つめ合った二人はおもむろに手と手でタッチを交わすと家に向かって歩き出した。



 家に帰り、汚れを落とすために風呂へと入ったのかなはすでに再生した自分の手をじっと見つめた。いまだ全身に炎の熱さが残っているように体が火照っている。しばらくその熱さを感じていたが、はっと気を取り戻すと仕切り直すように頭からお湯を被った。

「ふぅ…………」

 自らの胸を撫で、そこに心臓の鼓動を感じる。とっさの機転だったが、よく再生できたものだとのかなは思う。普段からダメージの多い戦いをしているため、治癒魔法が得意だという事を喜んでいいのかそれとも悲しむべきなのか複雑な気持ちになる。しかし、今はその技術のおかげでここに居られるのだから感謝くらいはしておこうと思った。

 湯船につかり、のかなはぼぅと天井を見上げる。頭ではここに居ると分かっているのに、心はまだ戦いの余韻に満たされている。こうやってゆっくりしていても、あの狂志郎に勝ったという事が信じられず、どこか夢を見ているのようにふわふわとしている。

 あれは現実だったのだろうか…………いや確かに現実であったのだろう。その証拠にのかなの心を包んでいた闇が少しばかり晴れていたのだから。

「――――♪ ――――♪」

 心なしか普段より声が出しやすいような気がする。心の重荷が少しとれたからだろうか、自分の吃音が魔法制御回路による呪いなのだからそんな事は無いはずなのに、のかなはそう信じていた。

 その時、ガラッと扉を開けてことかが中に入って来た。

「ん? 珍しいね、のかなが声出してるの」

 ことかは目が悪いため、のかなの家の風呂に慣れるまではラーかのかなが付いて入る事にしている。数日経って少しは慣れた様子はあるものの、まだ不安の残る足どりでもある。

「『うん。今なら上手く声が出せるような気がしたから』」

 それを聞いたことかは苦笑する。

「そりゃ上級執行官サマをぶっ飛ばせる力と勇気があればなんだってできるじゃろ。一体どんな魔法を使えば、アレに勝てるって言うんじゃ。並のステータスじゃ数秒も持たんよ」

 驕りも無くのかなは答える。

「『相性が良かったんだよ。それと何故かこっちの戦い方に付き合ってくれたみたいだし』」

 狂志郎に殺されかけたのかなだが、意外にもそう悪い印象は持っていなかった。戦いに対する真摯な姿勢に立派な魔法少女であろうとするのかなと共感する所があったのだろう。

 向こうが何かしらの任務を受けている様子がある以上、和解することは難しいだろうがそれでものかなは一度ゆっくり話をしてみたいと思っていた。

「謙虚じゃなぁ、のかなは。私じゃったらしばらく自慢して回るよ。そうすれば噂を聞きつけた強いヤツが来て、上手くスカウトできればチームを強くできる。そいつが名の知れたヤツなら宣伝効果でもっと多くの強いヤツが集まるし、仲間に加えた私の評価もうなぎ昇りってわけじゃ、はははははは!」

 高らかに笑うことかを見て、のかなはことかが魔法少女達を纏めていた存在である事を思い出す。のかなは個人で戦っていたので、そういうチームについての話は興味があった。過去の話はお互いにタブーのようなものだが、取りあえず聞いてみるのも悪くは無いと思った。

「『なんか奥が深そうだね。チーム作りって』」

「もちろんじゃ。ひたすら魔法少女を探しまわったり、他のチームから引き抜いたり、後輩をしごいたりとやる事がたくさんある。活動のための資金繰りも大変じゃし、宣伝するのも色々面倒じゃ。私んとこは私自身が名の知れた魔法少女じゃったからそんなに苦労もしなかったんじゃけど、同盟組んでたとこで大変そうなのは多かったね。魔法性の違いとかの人間関係で別れたり、私生活とか資金の問題とかで無くなったりしたチームもたくさんじゃ。いかにチームを持続させる事が大変なのかはのかなにはいまいちピンとこないかもしれんけどね」

「『まあ、一人だったから…………。でも凄く大変だって事は伝わってくるよ』」

「うん、そうか。けど、もちろんチームはただ大変というわけではないんじゃよ。仲間と連携して戦えるし、危ない時は助けてもらえる。手に入る情報も多いし、何より一人の時より気が楽じゃ。やっぱり協力って大事じゃね」

「『そうだね。さっきもことかちゃんに助けてもらったし』」

「じゃろ? 褒めてくれてもいいじゃよ?」

 のかなから苦い笑いが漏れる。

「『ははははは…………』」

 しかし、とことかは話を変える。

「のかながステータスの割に異様に強いのは分かったけど、それだけで生き残れたもんじゃろうか。はっきり言ってそれくらいの強さの魔法少女はごろごろ居るわけじゃし、一人だと色々と厳しいと思うんじゃよね」

 のかなはうーんと唸る。

「『私もそう思わない事も無いけど、過去の記憶があいまいでよく分かんないんだ。ラーと出会ってからの記憶はしっかりしているんだけどね』」

 曖昧なほほ笑みでことかは語る。

「案外、のかなが助けてくれた人に知らない内に助けられたりしてるのかもしれないね。因果は繋がっとるもんじゃから。もしくは再生の炎で祭り上げられた教祖サマじゃったりして。ま、のかながそんな事をできる人間とは到底思えないんじゃけどね」

「『…………………』」

「…………のかな?」

 返事が無い事を不思議に思ったことかが横を見ると、そこにはすぅすぅと寝息を立てているのかなが居た。いい夢を見ているのだろうか、その顔は幸せそうであった。

 ふぅ、と苦笑したことかはそっとその頭をなでた。

「お疲れさん、のかな」


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