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太陽と不死炎の少女  作者: 木戸銭 佑
スケィリオン編1:地球に落ちてきた女
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エピローグ

×月××日


 おそらくこの日記を書くのもこれで最後になるでしょう。何もかも忘れてしまったし、なによりこの部屋にもう彼女は居ないから。

 あの戦いが現実の物だったとは今でも信じられない。不意に“ドッキリでした”というプラカードが出てきても驚かないくらい現実味がなく、ただ凄まじかった。

 ほとんどの人が知らないままにこの街に危機が訪れ、ほとんどの人が知らないままに危機は去っていった。目が覚めればすぐに消えてしまう夢のようにあっさりと。

 あんな出来事があっても私達三人はいつもと変わらない。のかなは相変わらず冴えない感じだし、るいは逆に活発過ぎるくらいだし、二人を足して割ったらちょうどよくならないかしら?

 私はそんな二人と騒がしくも楽しく日々を過ごしている。不思議な事なんて欠片も無い毎日だけど、あんな経験はしばらく遠慮したいわ、寿命が縮まりそうだもの。

 魔法少女やロボットなんて無かったかのように二人は全くその事に触れない。気にしているのは私だけ? 今でもあの天使の帰りを待っているのは私だけなの?

 彼女は激しい戦いの末に壊されてしまったのは分かっている。それでも死を認められないのはやはりそれがショックだからなんでしょうね。心の整理にしばらく時間がかかりそう。

 誰かが居なくなっても変わらずに明日が来るの。代替の利かない人などいないから。でも、代わりが利くからこそ大切なのだと思いたい。代わりの人が居たとしても、周りの人から見たらそれは代わりなどではなく全くの別人であるはずだから。

「……あら?」

 ふと風を感じた私はいつの間にか窓が開いていた事に気付く。それに疑問を覚えた私は椅子から立ち上がり光差し込むそこへと歩いていく。

 そして、上を見上げると眩い光と共に空から天使が降りて来た。

「うそ…………」

 驚いた私は目を丸くし、言いたい言葉がたくさん浮かび上がったが一番初めに口から出たのは文句だった。

「全く……帰ってくるのが遅いわよ」

「悪い、修理が長引いたんだ。派手に壊されたからな」

 相変わらずの天使に苦笑した私は改めて聞く。

「全部取り戻してきたの?」

 天使はとぼけたような顔で言う。

「いや、全部置いてきた。悲しみも喜びも何もかも、あれはアイツだけの物だ。今のオレは翼を失って地球に落ちてきたしがない女さ。一文無しで帰る所を探してるような。気の利いたジョークと怖い夜の話し相手くらいにしかならないだろうが、泊めてくれるかい? ぐり子」

 少し意地悪そうに私は言った。

「泊める? 嫌だわそんなの。だって、ここはあなたが帰ってくる場所なんだからね」



                       ☆



「ふわぁ…………」

 太陽の光に当たりながら大きなあくびをしたのは道下ことかだった。完全にだらけきった様子でまどろんでいたことかは寝ころんで漫画を読んでいるのかなを一瞥すると誰に言うわけでもなく、呟いた。

「のどかじゃねぇ……。ひねもすのたり、のたりかな…………」

「それどういう意味?」

「知らん」

「ふーん…………」

 のんびりと二人が時間を過ごしていると、窓から望夜めろんが入ってきた。そして気の抜けた二人の様子など全く気にせず、マイペースに元気よく喋る。

「ねぇ、のかなちゃん。スプーン曲げ見せてよ。できるようになったんでしょ?」

「…………」

 漫画を置いて起き上がったのかなはため息をついてスプーンを取りだして曲げた。

「これでいい?」

「わぁ……。凄いね、超能力みたい」

 ふてくされたようにのかなは言う。

「……そうなんだよ。超能力じゃなくて超能力”みたい“なんだよね」

「……? どういう事?」

 無造作にスプーンを投げ捨てたのかなは寝ころんで天井を見上げた。

「確かに電流でも曲げられるけど、それじゃ熱が残っちゃう。デビッタのように上手くはいかないんだ。結局謎は謎のまま。全くデビッタのヤツ、超能力をくれるとか言ったのにさ、やっぱりデビッタは最後まで意地悪いイカサマ女のままだったよ」

「へぇ…………」

 めろんはのかなの顔を見て、くすりと笑った。嘘をついているとすぐに分かったからだ。おそらくのかなはデビッタと同じようにスプーンを曲げる方法を知っている。だが、そのタネを明かす事は彼女を超能力者から普通の人間に落とす事になるだろう。

 だからのかなはタネを明かさない。二人だけが知る秘密。彼女の世界がいつか滅びる日までデビッタは超能力者であり、のかなはその相棒なのだ。

「謎が解けないんなら、デビッタちゃんは本当に超能力者だったのかもね」

「さあ、どうだろ? でも、もしそうならとってもあいつらしいよ、スプーンを曲げるだけのくだらない能力の使い手なんてさ」

 のかなは床に落ちている曲がったスプーンを見て苦笑した。

「やっぱりこんなの何の役にも立たないや」




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