間奏
久しぶりに三人が集まった事でアンジェラの博打うちとしての血が騒いだ。それはのかなも同じだったが、数合わせのノミは正直興味が無かった。
話の流れで久しぶりに麻雀でもしようという事になったのかな達だが、この中にイカサマ使いが二人も居るのだ、到底まともな勝負になりそうになかった。
「三麻でも構わないが、見知った顔だけで打ってもつまらないな。誰か『生贄』はいないか? 勝負の道理を知ってて、むしっても大丈夫そうなヤツがいい。雑魚と貧乏人相手じゃ面白くない」
「うーん……お金は難しいかもしれないけど、実力なら私に心当たりがあるよ」
「ほぅ、そいつはどれくらい強いんだ?」
のかなは肩をすくめた。
「さあ? そんなの分かんないよ、だって初めてだろうし」
のかなは望夜めろんを呼ぶ事を提案する。麻雀などやったどころか牌に触れた事も無い初心者だが、圧倒的な豪運と才能は戦いの中で進化していく可能性が感じさせる。
「初心者? 冗談だろ、そんなヤツを呼んでどうする」
「全部の牌を寸分の狂いなく覚えられる初心者なら?」
前にのかなはめろんの記憶能力を見せてもらった事があった。
『写真記憶』
見た物を写真のように瞬時に記憶できる能力。そこに凄まじい判断力と動体視力が加わり、シャッフルされたトランプを上から全部言い当てる事ほどの力を発揮する。
アンジェラはしみじみと語る。
「完全記憶能力者か……。そいつらと打った時はヤバかったな。一人は薬中で一人は限界まで目と脳を酷使していやがった。強かったぜ、どっちも。反則気味なくらいだった。牌を積むのが一瞬でも遅れると全部見られちまう。あの時ばかりはさすがのオレも仕込む余裕はなかったな」
「じゃあ、呼んでいいかな?」
「ああ。向こうが打ってくれるって言うならな」
のかなはめろんをデバイスで呼び出し、快く引き受けてくれた事に感謝をする。そしてめろんに軽くルールを説明し、要領のいいめろんは僅か五分でその全てを把握した。
全員が卓についた所でアンジェラは皆に提案する。
「このメンツじゃ金を賭けるってのもあれだ。しかし、何も賭けないのもつまらない。ここは健全に罰ゲームありの脱衣麻雀といこうぜ」
その時、ノミに電流走る。
「脱衣麻雀? フッ、構わないが、キミに脱ぐ服はないだろう。どうする気だ?」
「そこは魔法で何とかする。望夜とか言ったな、変身魔法は使えるか?」
「うん、大丈夫だよ」
そうしてめろんの魔法により一時的にアンジェラは人間の姿となる。さすがにデビッタと同じ姿にはならなかったが、中身はともかく見た目は天使のように可憐な少女となった。
「これで準備は整った。持ち点は二万五千で飛ばされる毎に一枚ずつ脱いでいくって事で。それじゃ……始めるぜ」
のかなの親にて勝負が始まる。だがこの時、のかな達は少しも予想していなかった。僅か五分間でルールを覚えただけの全くの初心者であるめろんが後に『終神』と呼ばれ、長きにわたり世界に君臨する存在になるかもしれないという事を。
「じゃあ、私から…………」
「ねぇ、のかなちゃん」
のかなが牌を取ろうとした時、困った顔でめろんは言った。
「もうアガってるんだけど……こういう時はどうしたらいいの?」
「え?」
三人はめろんの言葉に目を丸くした。いくらめろんが慣れるまで積み込みはしないという暗黙の了解があり、純粋に運だけで配牌が行われるとしてもそんな事が起こることなどまずあり得ない。
あまりの異常さにごくりと唾を飲んだのかなは動揺しながら言う。
「そ、そういう時はアガリを宣言して牌を倒すんだよ。できれば他の人にも分かるように役を言った方がいいよ」
「ふーん。でも、役なんて私分かんないよ。点数計算はのかなちゃんに頼んでもいいかな?」
そう言ってぱたんと倒されためろんの牌を見た瞬間、あまりの衝撃にのかなは気を失いそうになる。
「大三元!? 仕込みも無しにそんな!」
いきなり役満を引いてくる。それも配牌の時点で。もはや運や偶然を越えて奇跡に近い所業だ。あまりの凄まじさに目の前に居る友人がまるで別次元の存在であるかのような錯覚を受ける。
顔面蒼白で震えるのかなを落ち着かせるようにアンジェラは言う。
「ビギナーズラックだ。呑まれるなよ」
「だけど、こんな事って…………」
「慌てるな、これが本物かどうかはすぐに分かるさ」
アンジェラの顔は言葉とは裏腹に真剣味を帯びていた。まるでこの光景をどこかで見た事があるかのように、その真偽を確かめようとしている。
親がめろんへと移り、再開する。さすがに二回連続で偶然が起きる事がないだろうとのかなは思っていたが、嫌な予感を拭えずに居た。
配牌が終わった所でめろんの手が止まる。もしかしたら取る山が分からないのではと思ったのかなが声をかけようとするが不意にめろんが自分の牌をゆっくりと倒す。
「……まさか!」
にこりと微笑みながらめろんは言う。
「三つずつが四個に同じ牌が二個。うん、アガリだね」
「天和!? そんな馬鹿な!」
のかなが驚きの声を上げると同時にアンジェラは立ち上がっていた。そして硬直した顔でぽつりと言葉を漏らす。
「の、能力持ちだ…………!」
「アンジェラ?」
自分が機械であるという事も忘れて額の汗を拭うように手を動かしたアンジェラは「少し顔を洗ってくる」と言うと、のかなをトイレへと引っ張っていった。
そこで頭を冷やしたアンジェラはふぅと息を吐いてのかなに言う。
「博打を打っているとたまにイカサマや理屈を越えた因果の持ち主に出会う事がある。それをオレは『能力持ち』と呼んでいる。そいつらは本当にイカれた打ち方をするんだ、やたらめったら鳴いたり、一定の手ばかりでアガったりとかな。正直、常識を蹴り飛ばしたようなヤツばかりだが………。初めてだぜ、麻雀自体をぶち壊してきたヤツは」
牌が配られた時点で上がっている。それは人の手ではどうやっても抗いようのない領域だ。初めから上がってしまっている以上、どんなイカサマを持ってしても引き分けにしか持っていけない。
予想外の出来事にさすがのアンジェラも困惑しているようだった。
「配牌の時点でアガってるなんてどうすればいいんだ? 正直対処のしようがない」
「山を積み込めば? ダイスコントロールをすれば出る牌は決まってるでしょ?」
アンジェラは深刻に首を横に振った。
「無理だ。配牌操作の能力持ち相手にサイコロ操作は難しい。ヤツらの雰囲気だか威圧感に感覚が狂わされるんだ。やってやれない事もないが成功確率は極めて低くなる」
「そんな…………」
自分の提案がまさかこのような事態を招くとは思わなかったのかなは頭を抱える。
「このままじゃ私達はめろんちゃんに全裸に剥かれちゃうって事?」
「ああ、とんだ事になったぜ。初心者の望夜の圧勝されちゃ、場も白けるしそうなったら向こうも気分が悪いだろう。何よりこっちが情けないしな」
「主にそれが理由だよね」
はぁ、とアンジェラはため息をついた。
「っていうか、なんでこんなヤツ呼んだの? 久しぶりなんだからテキトーに打ってくれるやつ呼べばいいんだよ。それをこんな核弾頭みたいなヤツ呼びやがって…………」
じとっとした目で見られたのかなは抗議の声をあげる。
「なんだよ! デビッタだってノリノリだったじゃん! 『オレより強いヤツに会いに行く』って感じでさ、あんまり無責任な事言うと背中の隻翼毟り取るぞコノヤロー!」
「おい触んな! そのコスプレ染みた服ごと引き裂くぞ! このギーク女!」
二人は醜い争いを初め、収拾がつかなくなる。いつまでたってもトイレから戻らない二人の事を察したノミが入り口から顔を出す。
「望夜に帰ってもらうか?」
二人は声を揃えて言う。
「「今行くよ!」」
「……………………はぁ」
呆れたような顔をしたノミは肩をすくめ、席に戻っていく。乱れた服と髪で二人はとりあえず落ち着きを取り戻す。
「もうなんだかんだ言ってられるか、イカサマ使うぞ」
「でも、どうやってめろんちゃんの能力に対抗するの? 初めからアガられてちゃ勝負にならないよ」
「そこは…………」
自分に言い聞かせるようにアンジェラは言う。
「気合いだ、気合い。頑張ればなんとかなる」
「どう頑張ればいいのさ…………」
頭を抱えるのかなにアンジェラは語る。
「とりあえずスケィラでプレッシャーをかけよう。能力者相手には結構有効なんだ。どこまで効くかは分からないが、常時アガリの状態からテンパイくらいには下げられるはずだ。それでも一、二巡目くらいにはアガられるだろうが、時間は稼げる」
その言葉にのかなはそこはかとない頭痛を覚えた。
「こんな事にスケィラを使うなんて…………。無駄遣いもいいところだよ」
「別にいいだろ。力ってのは平和的に使われるべきだ。こうやってくだらない事に使うのが一番正しいんだよ。それに、負けた時に使わなかった事を言いわけにしたくないだろ?」
「まあ、それもそうだけど…………」
これ以上、トイレで話をしているわけにもいかないと思ったのかなは渋々ながらアンジェラの言葉を受け入れる事にする。
「協力する気はさらさらないが、まずは望夜をどうにかするぜ。だが、油断してるようなら容赦なく食ってやるから覚悟しておけよ」
「それはこっちの台詞だよ。裸に剥いた後、着せ替え人形にして辱めてやるんだから覚悟しておいてよね!」
「へっ! 上等だ。お前にお似合いなザコ戦闘員の服を着せて動画を撮ってやる。奇声付きでな!」
そう言って二人は目に見えない火花を散らす。白熱するのは卓の上だけにして欲しいとめろんに同意を求めるように肩をすくめた。
勝負が再開すると共に二人は自らの山に積み込みをした。そして周りの注意が配られた自分の牌の整理に向いている一瞬で山に積み込んだ牌と配られた牌を入れ替えた。俗に言う『ツバメ返し』というイカサマである。
めろんは整牌が済んだ時、配牌がテンパイ状態であれどもアガリではない事に少しの違和感を覚えるが、麻雀というゲームはそういう時もあるのだろうと気にせず牌を取った。
(あれ? おかしいなぁ…………)
牌を引いてもアガる事ができず、仕方なくめろんはターンを回す。だが、何気なく場に出された牌に二人は同時反応した。
「「それだ(よ)!」」
「えっ?」
二人同時のアガリ。これによって一気にめろんから点数を取り返し逆に追い詰めるが、イカサマをしていた事を直感的にめろんに悟られる事となる。
(なんだか知らないけど、二人とも本気って事だね)
にこりと笑っためろんは飄々とした調子で言う。
「へぇ、ずいぶんと手の込んだ事をするなぁ。私はもっとストレートに行くよ」
「!!」
めろんから噴き出す圧倒的なプレッシャー。スケィラによりプレッシャーをかけているはずの二人が逆に気押されるほどの圧力。それを見せつけるかのようにめろんは静かに宣言する。
「天和…………だね」
「くっ…………こいつ!」
一人点数の少なかったノミが飛ばされ全員の点数がリセットされる。だが、圧倒的なプレッシャーに支配された場の雰囲気は変える事はできない。
積み込みを見切っためろんは完全記憶能力を使用しながら二人の積み込みに不要牌を混ぜていく。自分の山に積み込むような真似はしない。それだけで十分なのだ。人の手が牌に入らなければ自分は必ず上がれる宿命にあるのだから。
気がつけばめろん以外の者はすでに最後の上着に手をかけ始める所まで脱がされていた。
(くそっ…………なんてプレッシャーだ。こんなに見られてちゃすり替えもぶっこ抜きもできやしねぇ。全員を同時に見るなんてこの望夜とか言うヤツは化け物か?)
能力持ちの恐ろしさを再確認したアンジェラはちらりとのかなを見る。
(協力するか? …………いや、駄目だ。イカサマは能力持ちにギリギリお相子としてもコンビ打ちは卑怯過ぎる。これはあくまで個人の戦いなんだからな、自分の力でどうにかするぜ!)
アンジェラはベクトル操作能力を使い、己の手の平に牌を張り付ける。そうして山から持ってきた牌と自然にすり替える。
(何もかもが変わっても、イカサマは変わらねぇな!)
「ツモ! 役満だ!」
にやりとのかなは笑う。
(デビッタ…………! 私も負けてられないね!)
山から牌を取るのかなはそれを強い圧力を加え、その表面を削りとって真っ白な牌を作る。魔法少女のパワーを持って初めて成立する力技のイカサマだ。
「ライジングサン! …………じゃなくて国士無双!」
ようやく調子の出て来た二人はめろんを押し始める。そうしてなんとかめろんを自分達と同じ状況まで持ってくるが、さすがに無傷とはいかず、ついに最後の砦とも言える上着の最後をはぎ取られ、下着が露わになる。
「あっ! のかな、てめぇ絶壁の癖にブラジャーしてやがるのか! 枚数稼ぎしやがって、この卑怯者!」
「いいじゃん別に! そういうデビッタだってニプレスしてるじゃないか! あんまり騒ぐと力ずくに剥ぎ取るよ!?」
白熱する二人を見て、めろんは苦笑する。
「ふたりとも気合い入ってるなぁ。どうして服を脱がすだけでこんなに熱くなれるんだろ?」
「キミは楽しくないのかい?」
ノミの問いに何を当たり前な事をとめろんは言う。
「こんなに熱くなって楽しくないはずがないよ。初めてだったけど、麻雀って楽しいよね!」
もうまどろっこしい事は無しだと、次から飛ばされた者は二枚脱ぐようにルールが変更される。全員が二枚以下の今の状況では文字通りの最後の戦いだ。
二人のイカサマが勝つか、それともめろんの能力が勝つか。どちらも一歩の譲らない戦いが続き、そして…………!
「あっ、ツモった」
全く関係ないノミが勝った。
「「ぬわああああああああああああああああああ!!」」
迂闊、あまりにも迂闊。二人はめろんに気を取られ、ノミの事を完全に忘れていた。三人と互角に戦い、ここまで生き残っているノミはかなりの実力を持っているはずだと分かっているのに熱くなりすぎて注意がおそろかになっていたのだ。
「ふふふ、これでキミ達のおっぱいは私の物だ!」
「くっ……! 恐るべしおっぱい魔人ノミ!」
「おっぱいくらいなら頼めば触らせてあげるんだけどなぁ」
ちっちっ、とノミは指を振る。
「戦って勝ちとったおっぱいにこそ価値があるのだ、望夜めろん」
じとっとした目でのかなは言う。
「どうでもいいけどあんまりおっぱい連呼しないでよ、恥ずかしいよ」
「ふっ、その程度で恥ずかしがってるようでは先が思いやられるな。今からそこに触れるのだぞ、お体に触りますのだぞ!」
ノミの瞳が妖しく光り、のかなは思わず胸を押さえた。
「おっ、お触り禁止ぃぃぃぃぃ!」
荒らぶったノミがのかなへと襲いかかると後ろから平らな胸を掴み、優しく揉みしだいた。そこから伝わる未知の感覚にのかなは色っぽい声を出す。
「あんっ! だ、だめぇ…………」
その様子にドキドキしながらめろんがぽつりと呟く。
「のかなちゃん、ちょっとえっちぃかも…………」
「ノミは相変わらず手慣れてるな。また腕を上げたか?」
「二人とも! わ、わっふぅ! 見てないで助けてよ!」
しばらくの間、ノミにもてあそばれ続けたのかなは打ち上げられた魚のようにびくびくとしながら床に転がった。
ノミは恍惚とした顔でふぅと満足げに息を吐いた。
「まな板もたまには悪くないな。だいぶ満足できた」
「どうする? オレたちのも揉むか?」
さわやかにノミは断る。
「いや、キミのは偽物だし、望夜は気の知れた仲じゃないから止めておくよ。もっと仲良くなってからやらせてもらう」
「お手柔らかにね」
ノミとめろんは固い握手が交わし、二人の間に奇妙な友情が生まれた。
「じゃ、このままじゃ冷えるし服着るか」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
瞬間、起き上がったのかなが抗議の声を上げた。
「これじゃ私だけやられ損じゃん! めろんちゃんは無しにしてもいいけど、デビッタには罰ゲームしてよ!」
困ったようにノミは言う。
「だけど、私は満足したし…………」
「このままじゃ私が納得できないよ! 揉めよ、能見クラウ! 情熱のままに!」
「…………ふむ」
少し考えたノミはのかなの肩を叩いて言う。
「よし、のかな。キミが揉め! 私が許す!」
「はいぃぃぃぃぃぃ!?」
「キミの言葉から限りないおっぱいへの愛を感じた。もしかしたらキミは乳タイプとして人類を導いてくれる希望なのかもしれない」
突然の事にのかなは対応できず動揺する。
「ど、どうしてそうなるのさ!? 私、そんな趣味ないよ!」
「臆するな、たかが罰ゲームだ、深く考える事はない。日頃溜まっているデビッタへのうっぷんをこの機会に晴らせばいいのだ。私の知るキミはやられっぱなしで我慢できるほど収まりのいい女では無かったぞ」
「うっぷんを晴らす……!」
ごくりと唾を呑んだのかなはアンジェラを見る。度々言い争っているアンジェラを一方的にいじれるチャンスなのだ。そう思うと、のかなの中で黒い感情がふつふつとわきあがってくるのが分かった。
「行け、のかな! 今こそ太陽の手のマッサージ効果を見せる時だ!」
「おおおおおおお! デビッタ覚悟ォ!」
凄まじい気迫にアンジェラはたじろぐ。
「お、オレはロボットなんだぞ! それでいいのか!?」
「そんな事知らないよ! 一人辱められた私の気持ちを味わえ!」
のかなは初めてだというのに熟達した動きでアンジェラに触れていく。ノミのテクニックを頭ではなく体で理解したのだ。機械であるはずのアンジェラも心と心を繋げていくようなのかなの技術に感じ始めていた。
(なんて驚異的なテクだ! しかし、恐怖は感じない。むしろ温かみすら感じるとは……! のかな! これがお前の力か!)
やがて、アンジェラは人の温かみに触れて忘れていた何かを思い出しそうになる。
(のかな…………お前はオレの…………!)
その時、部屋のドアが勢いよく開かれ、真剣な様子のパウラが入ってきた。
「機械兵が動いた、みんな準備をしてくれ!」
「へ?」
この状況を見たパウラは凍りついた。
「…………っておい」
乱痴気騒ぎのこの場でアンジェラの胸を揉んでいるのかなの姿を見たパウラはこわばった顔で引き気味の笑みを浮かべた。
「あー……うん。人には色んな趣味があるよな。お前がそういう趣味でもあたしは気にしないからさ。…………まあ、ほどほどにな」
震える声でのかなは弁明する。
「違う、違うんだよ、パウラちゃん……。これは罰ゲームってやつで…………」
「あたしは先に言ってるから。じゃあな……すけべ大魔王」
ばたんと逃げるように扉が閉じ、正気に戻ったのかなは目の前の現実を否定するように叫んだ。
「うわあああああああ! 私はすけべ大魔王なんかじゃないのにぃぃぃぃぃ!」
のかなは心に癒えない傷を負い、しばらくの間パウラからの視線が生温かいものになったという。




