第一章 2
校内を見てまわり、どこにも人だかりができていないことを確認したのかなはおそらく小熊は家に戻ったのだろうと思い自身も家に帰ることにする。
そして校門にたどりついた時、小熊と共に居る見知らぬ少女に遭遇した。
のかなと同じくらいの歳だろうか、この学校では見たことの無い顔で稲妻を跳ね返すような目立つ髪留めを付け、幼いながらもどこか大人びた印象を見る者に与える少女だ。
見知らぬ少女はのかなに気づくとにこりと笑ってあいさつをした。
「こんにちは。私、望夜めろんって言います」
(えっ………あの………その……………)
急な事にのかなが戸惑っているとめろんは失敗に気づいたように恥ずかしそうな顔をして、テレパシーを送った。
「『そう言えば上手く声が出せないんだっけ。ちょっと私、うっかりしてました』」
驚きながらのかなもテレパシーを返す。厳密には魔力を媒介にする通信であるので超能力的なテレパシーとは異なるものであるが機能的にはそれと大差は無い。
「『あなたは?』」
「『テレパシーの時点でもう気づいてると思うけど、あなたと同じ魔法少女です』」
魔法少女と聞き、のかなは警戒する。
「『どうしてここに?』」
「『スクウィールの反応があったから………あ、スクウィールってさっきの怪物の事ね。でも来た時には終わってたみたい。せっかく学校を抜けてきたんだからどうせならそれを倒した魔法少女さんに会ってみようと待ってたんだ。そしたらあなたのパートナーさんに会ったんだよ』」
「『そうなんだ……………』」
正直、のかなは困惑していた。なにぶん魔法少女に会うのは久しぶりであるため、何を話したらいいか分からないということもあるが、何よりこんな友好的な魔法少女に会うのは初めてだったからだ。
かつてのかなが魔法少女だった時期は俗に言う暗黒時代というものであった。誰もが他人を疑い、足を引っ張り、己の欲望のために仲間すら踏み台にした、生き残るために。
何もかもが狂っていた、と過去を振り返り改めてのかなは思う。絶望も希望も関係無かった。ただ“死”という真実だけがそこにあった。自分も心に希望や絶望があったならば死に取り込まれていたのだろうと思うと、過ぎ去った事だというのに背筋が寒くなる。
(全部終わったことなんだ……………)
暗い過去を記憶の彼方に追いやり、のかなは目の前の魔法少女を見つめる。彼女の瞳は一寸の曇りも無く希望に満ち溢れている。
これこそが本当の魔法少女の姿なんだと認識したのかなは優しくほほ笑みながら自己紹介をした。
「『私は桑納のかな。小学四年生です』」
「『あっ、私と同い年なんだ。じゃあ、“のかなちゃん”って呼んでいいかな?』」
「『うん、いいよ』」
普通だ。あまりにのどかな普通。
でもそれがのかなにはとても新鮮で嬉しいことのように感じられる。
(彼女と友達になれたらいいな……………)
特別な願いではない、さして難しい事でもない。だが、かつてののかなにとってそれはベルリンの壁を超えることに等しい困難な事であった。
それが今はなんでもない事だということがのかなにはとてもうれしい事であった。
「『そうだ、のかなちゃん。デバイスのアドレスを交換しようよ』」
「『デバイスのアドレス?』」
「『交換すると変身アイテム同士で通信ができるんだよ。知らないの?』」
「『え、えーっと………』」
知らないも何もそもそものかなは変身アイテムというものをろくに使ったことがなかった。変身のための魔力が足りないために自分には使えないと思い、一応貰ってはいるもののそのまましまいこんで今はどこにあるのかすら分からなくなっていた。
昔は魔法少女同士の仲が悪かったため変身アイテムの通信機能など使う事は無かったし、連絡が必要な時は紙に呪文を書き込んで送りあっていったので不自由はしなかった。
ジェネレーションギャップにショックを受けながらのかなはどうごまかしたものかと悩む。
「『い、家に忘れちゃったから後でいいかな?』」
「『でもさっきスクウィールと戦っていたんじゃ…………』」
「『…………うん、そうだけど………………』」
のかなはこのピンチに頭を抱えた。
正直に「自分は変身アイテムじゃなくて着替えて魔法少女になるんだ」と言うことはできる。おそらくめろんはそれを気にする事もないだろう。しかし、のかなにとってそれは絶対にしたくないことであった。
桑納のかなという人間は自分がイレギュラーであることを自覚していながらも必要最低限出来る限り魔法少女らしくありたいと思っていた。
だから『着替えて魔法少女になる』などと告白することはのかなの魔法少女観からすれば恥そのものであり、耐えがたい苦痛であった。
(どうしよう………ごまかせそうにないよ……………)
首を傾げ不思議そうな目で見てくるめろんにどう説明すれば自分は魔法少女らしくいられるだろうかとのかなは苦悩する。
(音声魔法で変身した―――喋れないから無理。紙魔法で変身した―――変身一回に何十枚紙を使う気なの? 魔法陣で変身した―――式が複雑になりすぎ。魔導装置で変身した―――やっぱこれかな?)
代替案を思考したのかなは多少変な顔をされるのは仕方ないとして、言い訳を始めることにした。
「『へ、変身アイテムは家に忘れちゃったから、マテリアルドライブで変身したんだよ』」
「『そんなことができるんだ、凄いね』」
補助アイテムであるマテリアルドライブで変身することはメジャーではないが可能だ。それを知っているからかめろんは余り疑うような表情はしなかった。
とりあえずこの場は凌げたのかなはボロが出る前にこの場を去ろうと、小熊に声をかけて走り出した。
「『じゃ、じゃあ家に付いたらアドレス送るから急いで帰るね!』」
「『えっ? でも私のアドレス教えてないよ?』」
「『大丈夫! あなたの魔力の波長は覚えたから! あとで火の鳥飛ばすから!』」
「『魔力の波長? 火の鳥?』」
首を傾げるめろんを置いてのかなは疾風のように去っていった。その場に残されためろんはしばらく唖然としていたがやがて苦笑を洩らした。
「のかなちゃんってちょっと変わってるかも」
家に帰ったのかなは部屋をひっくり返すように変身アイテムの捜索を始めた。小熊にも手伝ってもらいしばらく探した所でのかなはあることに気づいた。
「あっー!」
「どうした、のかな」
泣きそうな顔になったのかなは震えながら小熊にテレパシーを送る。
「『ちょっと前にお母さんが埋め立てゴミに出しちゃったかも………』」
「それは致命的だな」
「『どうしよう………めろんちゃんになんて言えば……………』」
愕然とするのかなを励ますように小熊は言う。
「そのまま言えばいい。あいつはオレを可愛いと言ってくれたいいやつだからそんな事気にしないぞ」
「『でも……………』」
「大丈夫。心配ならラー=ミラ=サンがついててやる。オレはのかなを育てるって決めた。だから、のかなが不安な時オレは傍で支えてやる」
それを本心からの言葉だと理解したのかなは優しく小熊の頭をなでた。
「『ありがとう。けど、話せないのは恥ずかしいからだけじゃないんだ。あれじゃなくちゃ駄目だからっていう気持ちもあるからなんだ』」
「どういうことだ?」
のかなの表情がどこか底知れぬ怒りとせつなさが同居したような複雑な物へと変化する。
「『確かに私を見捨てたパートナーの事は嫌いだけど、あれは私の原点でもあるから。たとえ変身できなくても、やっぱりあれは私の魔法少女としての魂なんだ』」
「のかな………」
臭い事を言ってしまったと恥ずかしそうにのかなは続ける。
「『と言っても押入れにしまったまま忘れてたんだけどね。この機会だから、新しいのに変えるのもありかなぁ………なーんて』」
のかなは笑っていたが、小熊にはその表情はどこか寂しげに見えた。
いかにパートナーを憎んでいても渡された魔法少女の魂までは否定することはできないのだ。心でそれを理解した小熊は自分が何をすべきのかなを知り、行動を開始した。
「オレ………探してくる」
「えっ?」
のかなが疑問に思った瞬間には魔法で修繕しておいた窓をぶち破って小熊は外に向かって飛び出していた。
「ラー!」
もう見えない所まで弾丸のように行ってしまった小熊を今から追いかけることは不可能だ。のかなはただ割れた窓から見えるどこまでも青い空を眺めていることしかできなかった。
「ラー……………」
魔法で窓を修繕したのかなはベッドの上に膝を抱えて座り込み、思い出したくも無いパートナーの事を思い出していた。
あの頃はどこもかしこも敵だらけで何を信じたらいいか分からなかった。そんな中、ただひたすらにのかなを信じ、のかなも信じることができたのがそのパートナーであった。
正直、あのパートナーが裏切ったことは今でも信じられない。絶対に切れない固い絆で結ばれていたと信じていたのに、それなのに、
(あいつは………私を裏切ったの!)
もう戦わなくていい。その言葉と共にのかなは刺され、ただでさえ少なかった魔力はゼロと等しいレベルにまで低下した。あれからしばらく経ってようやく戻り始めてはいるものの、もはやまともに戦う事は不可能なレベルだ。
(私は………!)
あの時の失望に満ちた瞳が不意に脳裏に蘇るたびに眠れなくなる。そしてようやく眠りについても魔力が無くなって空から堕ちていき、地面に叩きつけられる悪夢を見る。羽をもがれた鳥のように地面にひれ伏したまま動くことができない、あの時の自分の夢を。
(もう二度と戦わなくていいなんて言わせない………!)
あれから行き場の無い怒りを抱いて生きてきた。
愛とか希望とかを語るべき魔法少女が怒りで動いているなんて恥ずかしいことだ。そう分かっていてもこの怒りは消えることは無く、むしろ消そうとすればするほど激しさを増していく。
(私は魔法少女失格なんだろうね……………)
それでも怒りを止められない自分は魔法少女をやるべきではないのだろう。怪物なんて放っておけば誰かがやってきて退治してくれるのだ。自分のやっていることはただの憂さ晴らしに過ぎない。
分かっていた。こんなものが魔法少女なんかじゃないってことは。
だけど戦わずにはいられない。自らに救世主の面影を見た人間が人のために全てを捧げずにはいられないように。
(きっとそれがヒーローってやつで、きっとそれが魔法少女ってやつだから)
辺りが暗くなっても小熊は帰ってこなかった。
一人で夕食を取ったのかなは黙々と風呂に入り、淡々とベッドに入ってまぶたを閉じた。
何も無い静寂。何も考えず、何も感じない完全なる沈黙。
「『トレイニングモウド………キドウ』」
マテリアルデバイスに内蔵されている演習システムを起動する。基本的に魔法の使用方法は体に刻み込まれているため復習をする必要は無いが、運用の仕方だけは個々の判断によるためどうしても訓練する必要がある。
あらかじめ登録されているテンプレートをカスタマイズして自分に書き込むこともできるが、それは魔力が平均程度あればこそできることであり、魔力がほんの少ししかないのかなにはできることではない。
「まずはターゲットからやっていこうかな?」
「『レディ』」
のかなはトレーニングが何よりも好きであった。魔力量に圧倒的な制限のある現実とは違いトレーニングでは自由に魔法が使えるからである。
体に羽でも生えたかのように自在に空を飛ぶことができる。それだけでものかなは最高の気分であった。現実では反動と共に高く空中に上がり、ホバリングしながら空中を移動するのが精一杯であるから。
手元に展開した魔法陣から好き勝手に炎の塊を飛ばすのが好きだった。現実では手に纏うくらいの炎を出すのが精一杯であるから。
トレーニング空間はのかなの好きな事で満たされていたが、中でも一番好きなのは声による魔法が使えることであった。
「うーん、今日は久しぶりに魔王オールスターをしちゃおっかな?」
登録されている伝説的な魔法少女たちは本物とは比べ物にならないほど弱いものの、並の魔法少女では手も足もでない強さを持っている。しかし、声による魔法も魔力もあるのかなはそれを容易く倒していく。
「やっぱりAIじゃ限界があるよね。そろそろ最新版が欲しいかも」
それでものかなは飽きることなく訓練を続けていった。いや………それはもはや訓練というよりは『研究』だろうか。何度も試行錯誤を繰り返し、どんな状況でどんなものが有効のかなを確認していく。
それでも初めて魔法を使った時のように楽しげに、無邪気に誰よりも純粋な心を忘れず、彼女は魔法を使い夜は更けていった。
やがて朝方、のかなは”がちゃん”という何かが割れるような音と共に目を覚ました。驚いたのかなが辺りを見渡すとそこには汚れた小熊がガラスの破片を踏みつけながら口に何かを加えていた。
それをのかなの前にぽとりと落とすと小熊は満面の笑みを浮かべてこう言った。
「見つけてきた、お前のデバイス」
「え?」
手に取った透明な石ころのようなデバイスを見たのかなの顔が驚きに染まる。まさか本当に見つけてくるとは思わなかったからだ。
こんな小さな物をゴミ捨て場から探し出すのは砂漠に落ちた小石を探すようなものだ。探し物が存在する限り可能性はゼロというわけではないがほとんど不可能と言っていい。
(ありえない………でも……………)
奇跡という言葉はこういうことを表すのだろうか。
白かった体毛が黒くなるまで汚れた小熊を見て、今までずっと探し続けていたのだろうということは想像に難くない。きっと一途に探し続ける小熊のために神さまが奇跡を起こしてくれたのだ。そう信じたい。
だが見つからなかったどうするつもりだったのだろうか、やっぱりずっと探し続けたのだろうか。もしのかなが死んだとしてもずっと探し続けたのだろうか、自分の寿命が尽きるまでずっと探し続けたのだろうか?
馬鹿げてる。
そう思いながらものかなは小熊をぎゅっと抱きしめて瞳からこぼれおちる滴を止めることができなかった。
「ありがと、う。ありがとぅ。ありがとう」
「のかな、泣いているのか? どこか痛いのか?」
首をのかなは横にふった。
「うれっ、しい。で、でも、こん、こんなむ、無茶はもうしなっ、しないで」
なぜ自分が泣いているのか、こんなにも悲しく嬉しいのかのかなは分からなかった。
ただ一つだけ確実なのはこの小熊がのかなにとってとても大切な存在になったということだった。
「『パラテリコス………キドウ』」
のかなの透明な石ころのようなデバイスは傷だらけではあったが問題無く起動し、携帯電話のようなユーザーインターフェースが空中に展開される。
付属のヘルプ機能を見て慣れぬ機械に悪戦苦闘しながらなんとか自分のデバイスのアドレスを見つけ出したのかなは火の鳥を出すための紙魔法にアドレスを書き込み、窓の外から火の鳥を投げ放った。
(………これでいいんだよね?)
久しぶりのためにしっかり届くか心配なのかなであったが、それから数分経って届いたことを知らせるようにデバイスが震えた。
「わっ!」
びくっとしたのかなはおそるおそるデバイスを取り確認すると、フォルダにはめろんからのメールが届いていた。
「『本当に火の鳥が飛んでくるなんて驚いちゃったよ。こんな魔法もあるんだね。昨日はあんまり話せなかったから、今日学校が終わったら会えないかな? お返事待ってまーす』」
(魔法少女同士でお話かぁ………って学校!?)
妄想を膨らませていたのかなは学校、という単語で今がいい時間になっていることを思い出したのかなは慌てて仕度を始め、体を洗ってあげた後に疲れて眠りについた小熊を置いて急いで家を出ていった。
(ち、遅刻しちゃう!)
家庭状況は先生に知られているため遅れてもさして問題は無いのだが、遅れればぐり子に余計な心配をかけるだろう。友達として気遣っているとは言っているが、何故かのかなは本能的にぐり子にだけは弱みを見せてはいけないような気がしていた。
(ぐり子ちゃんってなんか怖いんだよなぁ………押しが強くて、油断すると一気に踏み込まれちゃうような……………)
自分が怖がりだということは理解しているがるいの方にはあまり恐怖を感じないのでどうしてぐり子に対してだけそう思うのかのかなは不思議であった。
(多分、自分に向けられる優しさにどうしたらいいか分からないんだろうね………)
のかなは吃音を患っていることもあり元々他人と付き合うというのが苦手であった。そこにきて誰もが信じられなくなるような魔法少女としての戦いがあった。
本来は極度の人間不信に陥ってもおかしくない状況であったが、かつてはパートナーへの信頼が、今はパートナーへの怒りが全てを上回りのかなは普通でいることができた。
しかし、そんな歪な状態が普通などであるはずがない。やはり異常はあり、のかなは無意識の内に他人を遠ざけてしまうのだ。そのことを自覚したのはぐり子たちと出会って少ししてからのことであった。
(仲良くなりたい………けど、それよりも怖い)
頼る側ではなく頼られる側になれればそうすれば気にならないのにとのかなは思うが、それはもう友達などではなく無関係な有象無象としてぐり子たちを扱うことなのだろのかなは気付いていない。
(私はどうしたらいいんだろう?)
ぼんやりと答えの出ない問いに思いをはせていると曲がり角からサングラスをかけて杖を持った少女が現れた。
(え………わっ!?)
考え込んでいたために一瞬回避の遅れたのかなはその少女と派手に激突した。
「きゃ!」
「おぐっ!?」
派手に転んだのかなは起きあがると同じく転倒した少女が座り込んだまま不自然に地面を探っているのを見た。
「ふぅ………どうにもこの視界には慣れんもんじゃねぇ………」
(あれってもしかして………)
何をしているのかと疑問に思うが、自身も体が不自由であるからかすぐにのかなは彼女の目が見えていないことに気づき、近くに落ちているサングラスと杖を拾って手渡した。
そして彼女はのかなの手を取って立ちあがる。
「ああ、どうも。………しっかし急いでるんじゃろうけど前見ないと危ないよ。私みたいな人間はそう簡単にかわせるもんじゃないけぇ」
「すっ、すいま、すいません」
のかなが慌てているのと勘違いしたのか、なごませるように彼女は笑う。
「あはは、そんなに緊張しなくても大丈夫じゃよ。そんなにやわにはできとらんけぇね」
「で、でも………」
「心配ならこれから病院に行くけぇ、あんたも付いてくる?」
「え、えっと………それ、それは………」
ちらりと時間を確認したのかなはもう遅刻ギリギリの時刻であることを知り焦る。だが、このまま去るわけにもいかずのかなはどうしたらいいかと悩む。
それを察した盲目の少女はやれやれとため息をついた。
「行ってええよ。急いでるんじゃろ? 怪我も無いと思うし、最低限連絡先メモった紙をくれれば。ま、私じゃ何書かれても分からんけぇ、あんたの良心次第なんじゃけどな」
「すい、すいませっ、ん!」
連絡先を書きこんだ紙を渡したのかなは走るだけは間にあわないと思い、杖型のマテリアルドライブ『ラヴハート』を展開し、その力で高くジャンプして家々の屋根を駆け抜けていく。
その場に残された盲目の少女は見えていないはずだというのに驚いた表情でのかなの飛んでいった方向を見つめていた。
「あっ、あいつ! 魔法少女じゃったんか!?」
少女は唖然とした様子でそれを眺めていたが、やがてくしゃりと紙を握り締めるとしみじみとした様子で呟いた。
「………全ての因果は繋がっている…………そういうことじゃね」