第六話
先ほど、
漸くエンジンが愚図りだし安心したエルンが、
エンジンルームの換気口から身を乗り込ませてスパナを回して居た、
「クッソー、やっぱり安心するんじゃ無かった、よし、ラシルさん!ゆっくりエンジンを掛けて下さい!」
プスンプスンと音を立てて、
エンジンがゆったりと回り出す、
本隊に遅れる事2時間37分、
元々は2時間15分だったが、泥道で慎重になり、更に遅れて、
更に今、エンジンを治してた為に更に更に遅れる事になった、
『ガウッ』
森の中は既に発砲音に包まれており、
未だにその前線に到着しないポルシェティーガー、第675特別戦闘組も焦りを感じていた、
「かなり押されてるな、早くしないと!」
ここで焦って急発進と言う愚かな行為はしない、
ただでさえ遅れてるのに、
余計遅くなるのだからたまったものではない、
「敵の戦力は?」
「これです、写真も入って居ますので、」
茶封筒を貰うとキューポラから一度周りを確かめてから中身を読む
戦力は史実で言う、
T-18、T-24、ARU-57、PT-76、T-44、B-4 203mm榴弾砲、
これだけの種類の戦力がこの戦線に投入されたのだ、
特にB-4はとても厄介で、射程外から20.3cm砲弾をバカスカ打ち込んでくるのだ、
T-44何て無双状態だ、対応できる、または対抗しえる戦車は此方ではまだできていないのだ、
頼りのダッチラント共和国駐留軍もまだ到着して居ない、
「ん?駆逐戦車だ、しかも小さいな…」
これはASU-57で、
史実の空挺対戦車自走砲で、
速度も45と意外と低く、装甲が6mmしか無いのだ、
「装甲が薄そうだな、キャニスター弾用意して!」
二人の砲塔員に命令を出す、
キャニスター弾とは、戦車砲用の巨大な散弾弾だと思えばいいのだ、
M1エイブラムズ戦車のキャニスター弾にいたっては乗用車を一撃で撃破炎上させる事が出来るのだ、
『ボウッ‼』
『バチバチバチッ‼』
見事にASU-57は誘爆により炎上を始める、
この世界に来てから始めてポルシェティーガーの砲身は唸りを上げた、
しかし、まだ前線には到着して居ない、
こう言う時こそ、焦るのではなく、心を無心にする、
すると、
面白いほど時間が過ぎて行く、
ただし、無心になり過ぎると敵戦車の反撃に急には対処出来ないので、
注意が必要だ、
暫くは敵の戦車に会わずに居た為か、
長時間の無心状態が出来た、
あっという間に前線だ、
「うわ、あっちこっちに居る、徹甲弾用意!」
先ずは目の前のPT-76からだ、
史実では水陸両用戦車だか、この世界ではただ単にこのデザインなだけである、
『ボウッ‼』
『グワッ』
砲塔が爆発の威力で天高く吹き飛ぶ、
しかし、まだ味方は苦戦を強いられてようだ、
「やはり、奴ら量の暴力できたか、」
キューポラから周りを確認する、
敵の影が鬱蒼と生い茂る森の中でもわかるくらいだ、
しかし、その割には命中率が低い、
「BT-42が勝敗の鍵になりそうだな」
「エルンさん、大丈夫なのでしょうか?この戦局、」
「不安だ、最善の行動は取る、前進用意!」
北の森林の戦いは、
まだ続く様だ。
次回へ…