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第十七話


車体装甲、

前面75mm、ハッキリ言って非力だ、今のソ連の主力戦車砲の F-34 76mm戦車砲は1000mで82mmをぬく力がある、

側面60mm、 F-34 76mm戦車砲相手では正直言って1500mでもヤバイ、

後面40mm、 F-34 76mm戦車砲相手では2000m以上でもヤバイ(ティーガーⅠの半分以下)、

砲塔は正面100mm、さらに側面(円筒形では正面以外は同じ厚さ)82mm、

ハッキリ言って車体より砲塔の方が頼もしい…、


速度は前輪駆動で魚雷流用モーターが頑張って驚異の60!!

しかし、ぬかるみや坂道に入ってみろ、あっという間にスピードダウン!


シュルツェンは砲塔が8mm、車体が6mm、

パンツァーファウストには効果的だ、


そして、先程のソ連兵はまいてきた、

ひたすら彼等は西へ突っ走る、


「ロキ、森の中で止めろ、作戦会議だ、」

車内の雰囲気は最悪だった、

機銃手座にはアダム、砲塔にはエーファ、操縦席にはロキが居る、

何しろ、二人の仲間、一人の両親を目の前で殺され、

別れの挨拶すらしていないのだ、


間もなく、

森が見えて来た、その森にVK3001(P)を止め、

砲塔から全員がはい出る、


「トール!居るか?」

「もう偵察に行ったぞ、」

「うーん、流石は忠犬だ、」

トールの仕事の早さに感心する二人だった、


近くの切り株にシュルツェンを一枚載せ、簡易即席テーブルを作る、


「どうする?、出来るだけ街道は避けたいな、」

「知ってる、しかしだな、お前も分かるだろ?あの車体を、」

「あぁ、分かる、魚雷流用モーターには頑張ってもらう、お嬢さん!この辺の土地勘ってありますか?」

「さぁ、わかりません…」

「よし、物は試しだ、この地図を見て下さい、」

「ここはよく馬で回りました!」

「ウーム…、川は?」

そうやって作戦会議をしていると全員の腹が鳴った、

いやはや、腹が減っては戦は出来ぬ、


エーファは車体に積んであるバスケットからサラミとバターに黒パンを取り出すと、

その場でサンドイッチを作った、


「たくさん食べて下さい、」

「幸せだ(泣)」

「おーい、アダム!」

ウーム、流石はドイツ女子、用意がいい…、

久々のちゃんとした食事に泣くアダムをロキは呼ぶ、


「……、お前そんな趣味だったとは…。」

「俺が操縦する、お前は砲塔に立て、今にわかるって、」

トランクケースからバァさんの一番派手なワンピースをアダムに着せる、

いわゆる女装、


『バウ!バウ!』

「ム、トールだ、俺が見てくる、戦闘準備頼んだ!」


ロキは目の前にある2枚のサンドイッチを押し込むと、

足早に森に消えた、


その直後、

二人は急いで車内に入る、

エーファをキューポラから車長席に座らせる、

アダムは砲塔を前から見て斜め後方左の側面ハッチから装填手席に入る(上面ハッチからでも良かったが、登る手間が省けるのでこちらにした)、

砲弾をラックから引き抜き砲身へ押し込む、

そこから急いで砲手席へ移動するが、これがまた苦労する、

キャンバスの薬莢受けが空っぽだからギリギリ出来た、

砲手席では移動中の砲固定装置を解除する、


すると、キューポラで見張りをしていたエーファが叫ぶ、


「アダムさん!あっち!ロキさんが!!」

「何!どっち!?方角は!?」

「もっと右です!右!!」

彼女が軍事用語を知らないのは当然だ…


「見えた!」

漸く照準機にロキとトールの姿を捉えた、

しかし、ロキは何かを指さしていた、


「もっと右!?」

仕方なく右にまた砲塔を回すと、

信じられない物が飛び込んだ!


『バウ!バウ!』

『撃てぇー!!』

「SU-76!!」

何とソ連の自走砲!


とにもかくにも無意識に引き金を引いてしまった、

こういう場合はちゃんと狙わないとダメだが…


そして、見事に…、


「(アセアセ)……、はずした。」

こうも見事に自走砲横の大木を撃ち抜いたとなると、

奇跡かな?


兎に角、砲弾は横の大木に命中した、


『ヘタクソメ!』

相手の76.2㍉砲がこちらを捕捉する、

まさに、絶体絶命!!


すると、

自走砲のソ連兵の頭になにか落ちる、


『ナンジャコリャ?』

『トリノスダネ、』

『イケネ!!!』

気づいた時には遅かった、

横の大木はバキバキメリメリと音を立ててこちらに倒れてきたのだ!


『ワペプッ!!』

『ヒッカカッタ!!ヒッカカッタ!!』

『バック!!バック!!』

見事にオープントップの戦闘室にぶち当たった大木はそのまま自走砲の前進をおさえてしまった、


「逃げるぞ!森の中はあいつらばかりだ!!」

「トール!!」

「お嬢さん顔を出さないで!!」

エンジンを吹かし、

発電モーターを目一杯に回転させる、

発電はどちらかと言うと回転数が優先だ、

馬力なんて二の次、発電モーターが回せるだけの最低限な馬力でも十分だ、

話が逸れた、

発電モーターで発電した電力を前部の魚雷流用モーターに流し込む、


ゆっくりと車体が動き出した、

やがてどんどんと加速し出す、


「お嬢さん道案内を!森を南へ抜ける!!」

「はい!」

「バウ!」

「このまま進んで下さい、トラクター道に出ます、」

「よし、少しは運動性がマシになった、」

「間もなく開けます!」

「了解!」

森の境界線は目の前だ、


一方のソ連兵と自走砲は…


「アノヤロー、」

「ウップ、タマゴクサイ…」

「アッチイッタ、アッチ!」

「ワカッタ、…クサ!」

「ウルへー!」


森の中の自走砲は総集結していた!


「森を抜けたぞ!見張りを頼んだ!」

「ウヒャー!ソ連機の大群だ!!」

既に制空権はソ連へ奪われている、


「ヤバイ気付かれた!一機来るぞ!!」

「慌てるな、手を振れ!次の森まで時間を稼げ!」

一機のLa-5が両翼に爆弾ぶら下げてやってきた、


「集まって来た、ヤバイぞ!」

「振り続けろ!」


戦場に誤射誤爆は付き物だ、

ましてや敵味方入乱れる戦場は特に慎重にならざるを得ない、

写真や絵と違って識別は困難を極める、


そして、

パイロット達は見た、


以下、男達の証言、


『ドイツノセンシャニヒルガエル赤旗ヲミテカンドウシマシタ、』

『アンナニアザヤカニソコクノハタガミエタコトハアリマセン、』

『ツイニドイツジンミンガタチアガッタノデス!!』


『あ、あの旗は…??』

アダム君、

砲塔の中を覗かない事をオススメするよ、

だってあの旗、エーファさんのスカートだから…、


そんな事はつゆ知らず、

アダムは敵機に手を振り続けた、


近くに砲弾が着弾する!


「クソー!下からも来た!! SU-76iだ!!」

「いそがしー!!(アセアセ)」

『バカメ!!100ノバセ!』

『アッ!!』

『エッ!?』

『バカ!チガウ!!』

何とソ連機がソ連自走砲隊に爆撃を始めたのだ!!


ウーム、オソロシア…、


「「おそろしい………。」」

「…。」

張本人のエーファさんは何もなかったかのように頭だけだし、

砲塔の中でスカートをはく、


ソ連軍がたとえ5000輌の戦車を持っていても、

関東地方全域にバラ蒔いたら、ほとんど国に着かなくなる筈だ、(よするに作者が言いたいのは、連携が取れてないといくら戦車でも一輌では意味が無い)


戦場とは、

集まる所には戦車も砲弾も、惨禍も集中するが、

隙間は必ずある、我等がアダム率いるVK3001(P)戦車班(三人なので実質軍隊編成上では最小単位の『班』である)は、その隙間を探して(ロキがかっぱらったチャリンコでトールと偵察を敢行した結果である)突き進んで居た、

止まっては整備の連続だ、トールの耳と鼻、そしてロキの視力が役に立った、

やがて、小規模だか町に出た、舗装された道を気持ち良く真っ直ぐにはしる、


「やゃ!友軍だ!!」

「まだ居たのか…」

バリケードと対戦車砲で武装された広場が見える、


「止まれ!敗兵だな、降りろ!!」

金ピカに油を溜め込んだデブ悪徳指揮官がピストル構えて叫ぶ、


「女子供は歩け!!戦車は我が部隊に編入する!!!」

こういうヤツを登場させるだけでもイライラするけど、

あの時代は沢山居た(例:スターリンのクソヤロー)ので仕方が無い…、


「馬鹿な事はやめろ!!戦争は終わったんだ!バカをやめて兵隊を家に返せ!!」

「裏切り者め、卑怯者め、脱走兵め、ドイツゲルマン民族の恥め!!スパイめ!腰抜けの青年兵め!!!逮捕する!!!!」

アダムの正論に真っ向から反発するデブ悪徳指揮官、

そこに、


「僕らの町を守るんだ!」

町の少年兵がアダム達に小銃を向ける、


「まだ子供じゃないか!」

そうやって、

双方の一歩も引かない無言の攻防戦が始まった、


そんな中、

砲塔に座っていたエーファがスリムな体を匠に利用し、隙間を潜り抜け、

操縦席横の機銃手座に座る、

そして、


「やめなさい!!」

すかさず引き金を引いた!

機銃はバランスで上を向いていたので壁などに当たる(狙ったらそれこそ軍事裁判ものだぞ)、

しかし、当たらなくとも威嚇にはなったのだ、

少年兵が物陰に慌てて隠れ、

デブ悪徳指揮官がその場にしゃがみ込む(これだからこういうヤツは登場させるだけでもイライラする)、


「今だ!!」

ロキが操作レバーを思いっ切り前に倒す、

車体が急発進し、デブ悪徳指揮官を自然と追いかける形になった、

そこへトールが尻に噛み付き、バリケードに引っかかり、脂身はコケた、


「まぁ…機関銃って、簡単なのね、」

砲塔でカチコチに固まって汗を吹き出すアダムは、


(なんちゅう、娘だ…)

と内心思っていたのは別の話だ、


再びそのスリムな体を匠に利用し隙間を抜けて砲塔へ戻って来た(ちなみに、その移動の際の流動感溢れる動きに見とれたアダムは悪くない…と、思う…。)、


「トール!おいで!」

VK3001(P)は町を爽快に走り抜ける、




と言う訳で、まだ続く…、

(VK3001(P)に手出すんじゃなかった!!)


次回へ…




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