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第十六話


東部戦線、


既にドイツ軍は敗走していた、

とにかく西へ、西へ!


ソ連に捕まり、

シベリアで死ぬのよりかはましである、

東部戦線は崩壊した、


そして、

敗走の大地の森林に、

今回の主役が居た、


「クソー、バルト隊長が居れば、」

「今頃愚痴るな、あの倒壊家屋から這い出せただけでも御の文字だ」

「バルト隊長が恋しい…」

「有能な方だった…」


初回登場の倒壊家屋に残されたバルト隊長の部下だ、

バルト隊長とはエルケンバルトの事だ、


彼らの装備はStG44だ、

これだけであのソ連の量の暴力を戦い抜いたのだから、

読者はか彼らがどれほど凄いか予想が付くだろうか?


そして、彼らは見つけた、


「あれ?あれってポルシェティーガー?」

森林の中で一際目立つ影がそこにはあった、


「違うだろ、ポルシェティーガーはあんなに小さくない、」

「しかも形が微妙に違うだろ、」

「しかもここは丁度森が開けた所だぜ、動かせたら頂こう、」

「一寸待て!これVK3001(P)だ!!」

「本国も必死だなオイ、試作戦車まで駆り出して…」

「さて、主砲口径が、…8.8、アハト・アハトだ!!」

「「「やったあ!!!」」」

「何だこれ、簡単なエンジン故障じゃないか!」

「俺は食いもんを見つけて来る、」


VK3001(P)を寄って集って三人がかりで始動させる、

主砲砲塔は何処か小さなティーガー戦車の印象を受ける、

特に主砲防盾はティーガー戦車流用と言う事が後にわかる、


四人の内一人が目の前の森の境界線の小さな街に向かう、

VK3001(P)が治ったらこの街で落合う予定だ、


ソ連が直ぐそこまで来てるので街には人の気配が無い、

こういう街が略奪の対象になる、


「バウ!バウ!」

「ん?犬?可哀想に、捨てられたのか?」

「バウ!バウ!バウ!バウ!バウ!バウ!!」

「イィデデデデデデデデデッ!!!!!!!やめろ!痛い痛い痛い!!ヤメロ!!離せ!!!は!な!せ!イデデデ!!!」

「おやめトール!!」


石垣の影から一人の少女が駆け寄って来る、

ズボンのポケットを食いちぎり黒い大型犬は少女に駆け寄っていく、


ちなみに犬種はシェパード、


「すみません、この子緑色に敏感なんです」

「あ、あぁ、いいよ(寒いなー…)」

ポケットから入る冬の風は寒すぎた、


「お嬢さん、避難なさらないんですか?じきにソ連兵がここに来ますよ?」

「用意はしたのですが、まだ迎えの者が来ません、祖母は足が悪くて歩くのは無理です、」

石垣の中庭に案内され、

さらに裏口から立派な古い木造住宅に入る、

リビングに大きな旅行カバンが幾つかあった、

窓際には祖母さんが腰をかけている、


「エーファや、ソ連兵ですよ、可哀想に、明日からお隣のビーフシチューは届きませんね、」

外を見ると、

隣のレストランが略奪の対象になっていた、


『リャクダツター!』

「エーファや、迎えの者を待っても無駄です、貴女だけ行きなさい、」

「いや!おばあさんを独り残して行くなんて!」

「だけど貴女は若いわ、」


窓際でエーファとおばあさんが何かやっている間に、

彼は考え事をしていた、


「ソ連兵の事だ、若い女の子は、…………」

『ブロロロ!!』

「!!」


目の前の道をゆっくりとVK3001(P)が進んでいた、


「丁度よかった!ガスは有るか?」

「満タンだ!ポルシェティーガーよりかはましだろ?」

「玄関前に付けろ、客さんを乗せる!」

「砲塔0時へ、もうちょい暖機させます」

「おいおい、Ⅳ号J型の癖が残ってるなぁ!いい加減に忘れようぜ?」


ここで、

作者の豆知識!

Ⅳ号J型はシュルツェンの所為で砲塔をいちいち回してエンジンハッチを開けなければならなかったのだ、

おまけにⅣ号J型は戦時簡易急造省力型(ヤスアガリテヌキ)であり、

砲塔は手動旋回で、砲塔用のエンジンは積んでいない、

代わりにガソリンタンクがある、

しかも、この型は85回転で90°旋回出来る、

昔、プールの換気窓で作者は実験してみた、

同じ数を回すのに30秒程、そして、彼は死んだ、


「送れる所まで送ります、バァさんと荷物を早く!」

この時点でVK3001(P)は周りの大破したⅣ号のシュルツェンを引っ剥がし、

やっつけ仕事で装備させた、


『バウ!バウ!』

森の中でトールが吠えていた、


「トール!!」

『バウ!バウ!バウ!』

『ダーン!ダダダ!』

『イヌー!!』

ソ連兵の声も聞こえた、

愈々危なくなった、


「ソ連兵だ!近いぞ!!」

「お嬢さん!急いで!ここから!」


シュルツェンで高くなった側面より、

前面の低いところに行かせる、

しかし、相手は少女だ、まだ高かった為手で引き上げる、

自然と少女が引っ張られこちらに倒れる、

支えてやった途端、少女の香りが彼を包み込んだ、

胸がドクドクと高らかに鳴り出す、

これが…


「アダム!何やっている!早くしろ!」

「う、うるせー!ロキ!!あとはバァさんだけだ、」

ちなみに先程から指示を出していたのはアダムで、

街の散策に出たのもアダムだ、


「ツィウ!オーディン!!まだか!!」

裏口に漸く二人の影が確認できた、


が、


『ダダダ!ダーンダーン!!』

直ぐ横で発砲音!

これは近かった!


VK3001(P)に居たアダム、ロキ、そして少女のエーファは車内に、

裏口に居たツィウ、オーディン、それにバァさんはその場でしゃがみ込んだ、


横の森の中からソ連兵がうじゃうじゃと這い出してきた、

全員、鹵獲したパンツァーファウストを抱えている、


「ヤイヤイ!惨敗兵!!デテコイ!!」

「マケイヌ!!」

散々な言いようである、


「いいか、合図と共にエンジンを吹かせ、行くぞ」

そうやってアダムは言うと、

砲塔の近接防衛兵器に弾(本当は地雷)を装填する、


トリガーが引かれた、

打撃機構が地雷を叩き、

地雷を爆発の勢いで車体上方へ送り出す、


散弾がソ連兵を襲った、

やられ損ねた者パンツァーファウストを構え、

目の前のデカブツに叩き込む、


が、


シュルツェン装備なのであまり効いていない、

代わりに返事が地雷だった!


「ウワー!」

「タスケテ!」

「シヌー!」

「イテー!」

「ママー!」


外でソ連兵の呻き声が聞こえる、

裏口から急いでバァさんを連れだす、


「ドイツノブター!!」

『ダーン!!』


凶弾が戦場を駆けた、


その場に弱かった膝を下ろすようにバァさんは、

服を血に染めて倒れた、


「おばあさん!!カールおばあさん!!」

「バァさん!!」

「ソ連兵のクソ野郎!!」

ツィウとオーディンも銃弾に倒れた、

まだ20にもならない若者の命がまた一つ消えた


荷物は既に積み込んでいた、

エンジンの機嫌が良い今がチャンスだった、


アダム少尉は、

砲塔で地雷を装填した、泣きながら、


「バルト隊長、あなたが愛したこの隊の隊員を私はまた守れませんでした、」

そう言いながら彼は少女を砲塔に引きずり込み、

打撃機構のトリガーを引いた、





西への扉は開いたばかりだ、


次回へ…




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