第十二話
さて、
困った事に、
元帥から頂いた爺さんは、
何とマウスまでもらって来たのだ、
どれほどエルンが説得しようが、
『コイツにはワシが頼りなんだ!』
の一点張り、
泣く泣く、ポルシェティーガーと共に町に帰る事になった、
流石に町にはそんなデカイ建物はあるのかをラシルに聞くと、
丁度今住んで居る建物の裏に廃工場があるのでそこはどうかと、
実際にいって見ると、まだ工作機械が並び、今にも動き出しそうな新品とは言わないが、
使い込まれた設備はまだ生きて居た、
「俺たちの努力って…」
自虐気味に笑うエルンだった、
早速マウスをバックで工場に入れ、
天井クレーンで砲塔を吊るし、エンジンの点検に爺さんは没頭する。
「ありゃ自分の世界に入ったな」
「お爺さんにはどう見えてるかな?」
家にもどって見ると、
一枚のチラシが玄関に届いて居た、
「何々…芝刈り機レース?」
「町の郊外の田園地帯の一角で芝刈り機でレースをするんですよ、」
「優勝賞金50000ジャン?」
※1ジャン=1円
「賞品も貰えるそうですよ」
「芝刈り機でレースを?無茶があるだろ…」
「実際に見ます?」
そう言われて、
この前の会戦の時に敵さんからかっぱらった貨物運搬用の側車付き自転車改装式サイドカーに乗り会場に行ってみた、
漕ぐのはやはり、エルンだった、
ラシルが側車にのり、道案内をして居た、
「……爺さんが喜びそうだな」
開口一言がこれだった、
何しろ芝刈り機が猛スピードで走り回って居るのだ、
やはり、見ると聞くとでは違う事をエルンは改めて実感する、
ちなみに、
帰ってから爺さんに話した所、
『やる!ワシがやる!やらせろ!ワシもいかせろ!!いくぞ止めるな!』
と、闘魂全開で連日連夜ゴネゴネガミガミクドクドクドと、
余りにもうるさいので許可してやったら、
『決まりだ!!エルン君出動準備!田園の平原が俺たちを呼んで居る!!』
と、全員でいく羽目になった、
これは不運なのか幸運なのか、
はたまたどっちでも無いのか…
次回へ…