短編集その弌~『スカイとアースの価値観』
人の価値観は… その人間にしか理解できない――――
彼は、いつも雲を見ていた。
私は、いつも月を見ていた。
――――――今日もまた…
「やぁ…今日もまた会ったね 」
「ええ…」
2人は、展望台の柵に肘をのせた。
「あっ…」
――――――雲が、月を隠してしまった…
「月…隠れちゃったね…」
「えっ…ええ、そうね」
其れは彼と彼女が交わしたはじめてといっていいほどの会話だった。
――――――今まで、会話という会話をしなかったのに…
唯一、交わす言葉が“また、あったね”や“あら、またあなたなの”くらいだった。
「君は…月を見に来てるんだよね?」
「そうよ…そういう、あなたは…雲を見ているのよね?」
「……よく分かったね。僕が雲を見ているって」
「だって…雲の無い日は、来ないじゃない…あなた…」
「そうだね…其れにしても、何故…君は月を見るんだい?」
「そうね…同じ空でも、見えているものはみんな違う……それじゃ…いけない?」
「でも、強いて言えば…空の上にある月を見ると…なんだか…私も高みに行けるきがするからね…」
「はは…見えているものは、みんな違う…か、すごいね…君は…」
「??…何で、誉められているのか分からないけど…それより…私もあなたに聞きたい事があるの」
「何だい?」
「どうして…あなたは、星や月ではなく…雲を見ているの?」
「さっき、君がいった通りだよ。僕と君が見ているものは違う…」
「でも、きっと僕が雲を見ている理由は…“自由になりたい”からかな…」
「ふふふっ…何か…やっぱりあなたは予想通りの人だったわ」
「あなた…名前は?」
「僕?…僕の名前は――――――――」
――――繰り返し、繰り返し、また…そうやって世界は…廻って…廻って…いく…
――――人の価値は人それぞれ…彼も…私も… 同じ物を見て、違うことをかんがえている。
だから、世界は………
――――面白い……
此れで終わりです。
人の価値観が皆、同じだったらどうなんだろう?と言う変な妄想から出来ちゃった物です。
読んで下さった方々、ありがとうございました。