今更不安になってきました。
ドキドキする。そりゃあするよな。
私、これから男子校に通うんだから。
仰いで、その門の大きさに呆れた。こんなに大きくする必要あるのかな、と思ったけれど考えてみたらここはお坊ちゃん学園。車で送迎されてもおかしくないのだ。
…と、思ったけど、確かここって全寮制だった。
ため息が思わずこぼれた。前の学校よりひどい金遣いだ。
「すみません」
しかし、困った。どうやって入ればいいんだろう。インターフォンも見あたらないし、事務室も見あたらない。
「あの、すみません?」
うーん、どうしよう。伯父さん待たせると面倒なんだよな。やたらと心配されて、かなりの大事にされるから。
「すみません!」
「あ、わ…俺でしたか」
振りかえると、かなりの美人がたっていた。思わず女性かと思ったが、男子の制服を着ている。同じ格好だということは、ここの生徒なんだろう。
それにしても、綺麗な人だな。絵本とか、少女漫画に出てくる王子様のようだ。
「すみません、何ですか?」
「ったく…無駄な時間かけさせないでください」
そんなに怒らなくても。でも自分が悪いか。
「ごめんなさい」
もう一度謝ると、素直に謝ったのが良かったのか王子様(仮)は怒りにゆがめていた顔を戻した。
「…僕はここの副会長、睦月幸です。貴方、如月光さんでしょう?」
「はい」
「理事長に案内を頼まれました。」
「………え」
「何ですか?不満なんですか?」
「え、えっと。伯父さん過保護だな、と…」
王子様(仮)……じゃなくて、睦月さんは片眉をあげた。その上、何故か首をかしげられる。
「貴方、本当に如月さんですか?」
「……どうしてですか」
「理事長が言っていた印象とまるで違うので」
何を言ったんだ伯父さん。それが伝わったのか、睦月さんはあっさりと教えてくれた。
「天使のような子で、人目で惚れるくらい可愛いと」
「ねーよ」
あ。睦月さんは一瞬驚いた顔をしてから、すぐに真顔になった。
「そのようですね。顔も平凡だし、背も高い。僕の天使像とはかけ離れています」
「……はぁ、そうですか」
その通りだけど。天使像って何。
普通とかけはなれた見た目だけど、中身も普通とかけ離れている。天然なのだろうか。
「話し込んでしまいましたね。行きましょうか。」
「はい」
先に行く睦月さんのあとをついていきながら、ふと不安がこみあげてきた。
私、やっていけるんだろうか。
あんなところにボタンがあったのか。一回押すだけであんな重い門が開くなんて、凄い通り越して恐ろしい。