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われら肉球防衛隊!  作者: 沙φ亜竜
第5章 肉球は世界を救う!
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-1-

「ふぉっふぉっふぉ、よぉく来たのぉ~。おっと、無理矢理連れてきたのは、わらわじゃったの。ふぉーっふぉっふぉ!」


 気づくとぼくたちの目の前には、なにやら頭に来る笑い声を響かせるデブった灰色の猫が、春だというのに分厚い毛皮のコートに身を包みながらたたずんでいた。


 猫の顔なんて、ぼくたちにはあまり見分けがつかないけど、それでも明らかに、かなりのおばちゃんだと思える雰囲気。

 もし人間だったら、絶対にケバケバな厚化粧で、見るからに不気味さをかもし出しているような、そんな印象だった。

 ……実際には魔界の住人だろうし、こっちの世界に来ると猫の姿になってしまうだけだというのなら、魔界にいるときには完璧にケバいおばちゃんなのかもしれない。


 それはともかく、さっきの言葉を考えると、たくさんの猫たちを操ってぼくたちをここまで連れてきたのは、このおばちゃん猫だということになる。

 そうすると、相当な力の持ち主。

 すなわち、このおばちゃん猫こそが――。


「ふぉっふぉっふぉ! そう、わらわがオメガじゃ!」


 ぼくの思考を読んだのか、おばちゃん猫が名乗りを上げる。


 身構えるぼくたち。

 これだけの人数を前にしても、まったく怯む様子のないオメガ。

 もっとも、無数の猫たちをオメガが操っていると考えれば、人数的に劣っているのはむしろ、こちらのほうということになるわけだけど。


 ただ、人数の問題だけではなく、あのオメガの力は、明らかに強い。

 普通の小学生でしかないぼくでさえも、それは肌で感じられた。


「あ……あなたが、各地の猫を操っているんですか!?」


 雪菜先生が、若干震え気味ではあったものの、どうにか声をしぼり出す。

 今この場にいる中で一番の年長者であり、教育者でもある雪菜先生。

 適当な感じが多々あるとはいえ、教師の端くれ。

 教え子たちを守るために、自分のほうに注意を向ける、という意味合いもあったのだろう。


「ふぉっふぉっふぉ、そうじゃ。こちらの世界に来て、力の加減がわからなかったのでな。軽いデモンストレーションというやつじゃの」


 デモンストレーションで、日本各地、もしかしたら世界各地の猫を操っていた!?

 いったい、どれだけ強大な力を秘めているというのだ、このオメガという不細工な顔のケバいおばちゃん猫は。


「ふぉっふぉっふぉ、そちらのガキんちょから、とっても失礼な思考を感じ取ったのじゃが、さて、どうしてくれようかのぉ?」


 あっ、しまった!

 さっきもぼくの思考を読んだみたいだったのだから、下手なことは考えられないと、心に留めておくべきだった。

 もちろん、オメガの言うガキんちょというのは、ぼくのことだ。


 じわり。

 一歩、オメガがぼくに近づく。


「待ちなさい! 用があるのは、わたくしでしょう? 降人くんたちは関係ないわ! 手を出さないで!」


 ミューちゃんが叫ぶ。

 おそらくそれを、予測していたのだろう。

 満足そうな笑みを浮かべながら、オメガはミューちゃんのほうに向き直る。


「ふぉっふぉっふぉ。よう言うた。やはり、そうでなくてはの。ならば、邪魔の入らないように、力を解放させてもらうぞよ! ふぉあったぁ~!」


 ブワッ!

 オメガが奇妙な雄叫びを響かせると同時に、辺りの空気が熱を帯び、一斉に上空へと舞い上がるように感じた。

 いや、温度が上がったことにより、上昇気流が発生したのだ。

 でもそれは、単なる力の余波でしかなかった。


「うわっ!?」

「な……なによ、これ!?」

「わわわ、動けないよっ!?」


 必死に体を動かそうとするものの、指一本動きはしない。

 そう、ぼくたち肉球防衛隊のメンバーと雪菜先生の人間部隊は全員、オメガの力によって動きを封じられてしまったのだ!

 ただ口だけは動くようで、声を出すことはできた。


「ふぉっふぉっふぉ、あえて言葉だけは封じないでおいてやったのじゃ」


 再びぼくの思考を読んだのか、オメガはそう言い放つ。


「シグマから報告は受けておったからの。……仲間はそこにいてくれるだけで心強い? 仲間からの声援は、勇気とパワーを与えてくれる? ふぉっふぉっふぉ、笑わせてくれるではないか!」


 オメガはゆっくりと、ミューちゃんに歩み寄る。

 その威圧感は、想像を絶する凄まじさだった。

 さっきは意を決してオメガに言葉を向けたであろうミューちゃんでさえも、近寄ってくるどす黒い力の奔流に呑まれ、ヘビに睨まれたカエルのように身動きが取れない。


 オメガは高圧的な態度を崩さないまま、ミューちゃんに向かってこう言い放った。


「絶対的な力の前では、仲間からの声援なんぞ無意味だということを、このわらわが思い知らせてくれるわ!」


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