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われら肉球防衛隊!  作者: 沙φ亜竜
第4章 肉球バトルロワイヤル! レディ、ファイト!
22/30

-4-

 翌日は土曜日。学校は休みだった。

 とはいえ、当然ながらぼくたちは学校に行く。

 それが肉球防衛隊としての務めなのだ。


「眠ぅ~……。わたしはあとから行く、ってのじゃダメかなぁ~?」

「ダメだよ! 羽浮姉ちゃんは隊長でしょ!?」

「うう~、でも眠いのさ~」


 なにやらダメダメな朝が弱い羽浮姉ちゃんを引きずりつつ、ぼくは小走りで小学校へと向かう。

 二度あることは三度ある。

 今日もまたシグマがミューちゃんを襲撃に来る可能性は高い。


 高いというよりも、おそらく確実だろう。

 そう考えられるわけだから、一刻も早くミューちゃんのもとに駆けつける必要があった。


 ぼくたちが学校に着くと、ちょうど夢ちゃんと希望くんの姉弟と、いちごとみるくちゃんの双子姉妹も到着したところだった。

 校門の前で挨拶を交わしているあいだに、拳志郎と南ちゃん、さらには将流も到着。

 肉球防衛隊メンバー勢揃いだ。


「って、こんなところで無駄話してる時間はないっての! 早くミューちゃんのとこに行くわよ!」


 いちごの声にぼくたちは頷くと、中庭を抜けて、ミューちゃんの待つウサギ小屋の横へと向かった。



 ☆☆☆☆☆



 そこには、二匹の猫がいた。


 そう、二匹。

 シグマと、ミューちゃんだ。


「シグマ。今日は仲間の姿が見えないようだけど?」


 ミューちゃんが凛とした声をぶつける。

 対するシグマに、怯む様子なんてまったくない。


「ミュー姉、最後の決着だ。仲間に任せていても、埒が明かないからな。オレ様自らが、ミュー姉をねじ伏せてやる!」


 余裕のセリフを吐くシグマではあったけど、その頬にはひと筋の汗が流れていた。


「へぇ~。あんたがわたくしをねじ伏せる? いい度胸ね。あんた今まで、わたくしに勝てたことなんて、一度もないくせに」

「それはミュー姉が一応女だからさ。いくら女性優位な社会になっているとはいえ、物理的な力では男のほうが上なんだからな。いつだって打ち負かして従わせることができるんだぜ? だがそうしないのは、オレ様たち男のほうが理性を持っていることの証さ」

「ふん。負け犬の遠吠えね」

「なんとでも言え。ともかく今日は一対一だ! タイマンで勝負しろ!」

「ふふっ、いいでしょう。望むところよ!」


 駆けつけたぼくたちは、完全に蚊帳の外。ふたりの話は、口を挟むこともできずに進んでいく。

 いや、ミューちゃんはしっかりと、ぼくたちの存在に気づいていたようだ。


「……というわけだから。みんな、手出しは無用よ!」


 ぼくたちのほうに視線を向け、そう言い放つミューちゃん。


「うわわっ! ミューちゃんカッコいいっ!」


 夢ちゃんは歓喜の声を上げていたけど。


「でも、シグマは今まで散々、仲間とか動物とかを使って負け続けてるじゃん。それなのに、今さらタイマン勝負で決着をつけるなんて、さすがに勝手すぎるんじゃないかな?」


 ぼくのツッコミに、ミューちゃんは反論を返してくる。


「いいのよ、降人くん。今までだって、わたくしはあなたたちがいたから勝てただけ。それに、シグマ自身には指一本たりとも触れていない。つまりは、勝負すらしていないのと同じなのよ」

「そういうことだ。それともこの世界の人間は、本人同士が納得しているタイマン勝負に手を出すなんて、そんな野暮な真似をするような人種なのか?」

「う……」


 ミューちゃんとシグマから続けざまにそう言われたら、ぼくたちにはもう、止める手立てはない。

 ポン。

 ぼくの肩を、拳志郎が叩く。


「おれたちは黙って見守ろう」

「…………うん」


 その言葉に、ぼくは素直に頷くしかなかった。



 ☆☆☆☆☆



「それじゃ、行くぜ!」

「ふふっ、かかってきなさい!」


 ミューちゃんとシグマは、すっと右腕を伸ばす。


「おおっ!」


 観衆と化しているぼくたちから、どよめきが湧き起こる。

 伸ばした手の先が光ったと思ったら、次の瞬間には武器が握られていたのだ。

 猫の姿をしてはいるけど、さすがに魔界のプリンセスとプリンスだけのことはある、といったところか。

 空気中のエネルギーを集め具現化したとか、そういった原理なのだろう。


 だけど……。


「にゃはははっ! なんか、楽しそうっ!」

「そうねぇ……。タイマンの真剣勝負、というふうには、どう考えても見えなくなったわよね……」

「でもぉ~。怖くなくなって、あたちはよかったと思うのぉ~」


 口々に感想をこぼすみんな。

 ミューちゃんの手に握られているのは、巨大なピコピコハンマー、

 そしてシグマの手に握られているのは、巨大なハリセンだった。


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