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われら肉球防衛隊!  作者: 沙φ亜竜
第3章 肉球に忍び寄る危機!?
17/30

-5-

 翌日の放課後、僕たちはまたもや、みんなでいつもの場所に集まっていた。


 昨日のこともあったし、羽浮姉ちゃんも引き続き、部活を休んでまで小学校に来てくれている。

 もっとも、姉ちゃんがいてもあまり意味はないかも、というのがぼくの考えだったりするのだけど。

 それでも肉球防衛隊の隊長にして最年長ということになるわけだから、あんな姉ちゃんでも他の人からは頼りにされているようだ。……一応。


「あっ、ちょっと羽浮さん、ダメですよ! ミューちゃんにハンバーガーなんてあげちゃ! たまねぎが入ってるから、食べると体を壊すんですよ!」

「えっ、そうなの? なんか、すごく食べたそうにしてたから、つい~」

「はっはっは、羽浮さんらしいな!」

「笑いごとじゃないってば。まったくもう……」


 ……う~ん、やっぱりあまり頼りにされている感じでもなさそうだけど。

 それ以前に、ひとりだけハンバーガーとフライドポテトを買ってきて、ぱくぱくと食べているなんて、年長者として失格ではなかろうか。

 と、そんなぼくたちの前に、再び新たな襲撃者が牙をむいてきた。



 ☆☆☆☆☆



 シュルシュルシュル!

 奇妙な音を立てながら器用に体をくねらせ、ぼくたちに迫りくる。


「きゃっ!」

「うわっ、でか!」


 どうにかぼくたちは、飛び退いて襲撃者の魔の手をかわす。

 いや、まぁ、正確に言えば襲撃「者」ではないし、「手」もないわけだけど。


「なによ、このヘビ! どこから湧いてきたの!?」


 いちごが叫び声を上げる。

 そう、その襲撃者は、ヘビだった。

 それも、とても巨大なヘビだ。

 体をくねらせているから正確な長さはわからないけど、優に五メートル以上はありそうな、そんな大蛇が、ぼくたちに襲いかかってきたのだ!


 身をかわしたぼくたちの横を通り過ぎたヘビは、ピタリと止まり、ゆっくりと頭を持ち上げると、舌をちょろちょろと出しながらこちらを睨む。

 もちろん、ヘビの目から表情を読み取ることなんてできないけど、それでも明らかに、睨んでいるといったような雰囲気だった。


 シャーーーーーッ!!

 ヘビは威嚇の音を発しながら、じわりじわりとぼくたちに近づいてくる。


「うう~、怖いよぉ~」

「だ……大丈夫だよ、みるくちゃん~。このボクが、守って、あげるからねぇ~」

「ふえぇ~」


 泣きべそをかいているみるくちゃんに、将流が優しく声をかける。

 それだけならカッコいい場面と言えるだろうけど、将流自身もガタガタと震えていたりするから、さすがにちょっと情けない。

 でも、みるくちゃんとしてはワラにもすがりたい気持ちなのか、将流の陰に隠れるようにしながら、彼の服の裾をぎゅっと握っていた。


「どこからこんなヘビが入ってきたのよ!」


 再び、さっきと同じような叫び声を上げるいちご。彼女も彼女でパニックになっているのだろう。

 だけど、確かにおかしい。

 こんな大きなヘビ、普通に日本に生息しているとは思えないし。


「それにさ、毒ヘビだったりとかしないかな!?」


 姉ちゃんがへっぴり腰で情けなくぼくにすがりつきながら言う。

 そうだ。もしあれが毒ヘビだったら、この状況は危険すぎる。

 焦りの念がぼくたちをすっぽりと包み込んだ、そのとき。


「……大丈夫、毒はない。アミメニシキヘビ。東南アジアなどの熱帯雨林なんかに生息。ペットとして飼われることもある……」


 希望くんが解説染みた、というよりも解説そのもの、といったつぶやきを漏らす。

 うわっ、なにげに物知りだ。


「あははっ! 希望は図鑑を読むのが趣味だからねっ!」


 夢ちゃんがそう言った。

 緊迫した状況で、みんなして冷や汗をたらしている中、この姉弟だけはちょっと余裕があるような……。


「ふふふっ! わたし、ニャンコだけじゃなくて爬虫類も大好きだからっ! ああ~、大っきなヘビさん、ラブリ~!」


 こんな大蛇に睨まれ、威嚇されながらも、うっとりと恍惚の表情を浮かべている夢ちゃん。

 ああ、やっぱり夢ちゃんって、変わってるんだなぁ。


 と、そんなことを考えてる場合じゃない!

 大蛇は威嚇を続け、矢継ぎ早にぼくたちに飛びかかってくる。

 なんとか避けてはいるものの、何度も繰り返される攻撃によって、ぼくたちは徐々に追い込まれてしまった。


「どうすれば……」


 汗が地面にまでポタリポタリとこぼれる。


「あっ、そうだ!」


 不意に姉ちゃんが大声を上げた。

 ポケットから取り出した、なにか金属製の箱型のようなものを、目の前に掲げる。

 そして、


 カチカチカチ、シュボッ!


 火を点けた。それはライターだった。


 目の前で突然燃え上がった炎を見て、明らかに動きを止めるヘビ。

 じわじじわりと、後ずさりするようにぼくたちから離れると、身を翻して一気に裏門のほうへと逃げ去っていった。



 ☆☆☆☆☆



「ふ~、危なかったわね! でも、隊長であるわたしの機転のおかげで、こうして無事撃退できた! ほらあんたたち、大いに感謝しなさいな!」


 姉ちゃんのそんな横柄な物言いに、さすがに困惑しながらではあったけど、みんなは一応「ありがとう」と声を揃える。


「それにしても、姉ちゃん。どうしてライターなんて持ってたの?」

「ふふふっ、これよ!」


 ぼくの問いに、姉ちゃんはさらにポケットから、もうひとつの箱状のものを取り出した。

 いや、今度は本当に箱だった。

 すかさず、その中から一本の細長い筒状の物体を取り出す。


「え? 姉ちゃん!?」


 それは……! いや、でも、それって、ダメなんじゃ……!?

 焦るぼくたちの目の前で、姉ちゃんは筒状の物体の先端にライターの火を近づける。


 次の瞬間。

 くるり。

 その物体を素早く反転させ、火にあぶったほうを口にくわえた。


「う~ん、火にあぶったシガレットチョコは、やっぱり格別だわ!」


 …………。

 ツッコミどころ満載な姉ちゃんに、ぼくはどこからツッコミを入れていいかわからず、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


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