表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

異世界恋愛系 作品いろいろ

温かな居場所を守るため、これからも働いていきます。〜かつて婚約破棄してきた彼は一人寂しくこの世を去ったようですね〜

作者: 四季
掲載日:2026/07/05

「アリエラ、ちょっといいかい?」

「はい」

「この前作ってもらったこの書類なのだけど」

「えっ。……もしかして、ミスがありましたでしょうか」

「いや、違うんだ。すごく好評だったんだよ! 皆、見やすいって! そう言っていたよ」

「そうですか……! なら良かった、安心しました」


 私アリエラは土地の管理を仕事としている男性エディと半年ほど前に正式に夫婦となった。

 今は彼の仕事を手伝いつつ穏やかに生活している。

 仕事に関してはまだまだ経験が浅い。それゆえ時には不安になることもあるけれど、でも、困った時にはエディが支えてくれるから乗り越えられている。


 私は今のこの居場所が好きだ。

 だからこれからも働くつもり。


 どんな時も温かく見守ってくれる、どんな時も寄り添ってくれる、そんな彼の力に少しでもなれるのなら……そんなに嬉しいことはない。


「君は本当に優秀だね」

「いえ、そんな……」

「この仕事を始めてからまだ半年も経っていないのにここまでのクオリティのものを提出してくれるなんてすごいよ」

「そうでしょうか……正直あまり自身はないのですが」

「そんな! 自身を下げる必要はないよ。君は優秀、そこは確かだから。自信を持ってほしいな」


 エディに出会ったのは、かつて婚約者だったアーバンという人に身勝手に婚約破棄された直後だった。

 理不尽な出来事に心折れていた時、偶然目の前に現れてくれたエディ。彼はよく話を聞いてくれた。辛かったこと、悲しさ、苦しさ、など。どんな感情も真っ直ぐ受け止めてくれた。


 あの時エディに出会っていなかったら、多分、私は今も落ち込んでいたままだったと思う。


「あ、そういえば、昨夜の件なのだけれど」

「データまとめ、ですよね。終わっています。少し待っていてください、すぐに持ってきます」

「も、もう、完成してる!?」

「え……今日までとのことで頼まれていましたので。変でしたか」

「……あ、いや、違うんだ」

「では持ってきますね」

「すまないね、次々言って」


 かつてエディは私を救ってくれた。

 だから今度は私が彼の力になりたい。

 彼のために、一つでも多く、できることをやっていきたい。


「お持ちしました」

「わ! 本当に完成してる! ……しかも、完璧だ」

「ざっくりですみません」

「いや、完成度高いよ。すごく。ここまでできるのか、って、驚いているくらいだよ」


 ちなみにアーバンはというと、私を切り捨てた日からちょうど一年となった日に命を落としたそうだ。

 飲み屋街で酔っ払った賊に絡まれ、喧嘩になり、殴る蹴るの暴行を加えられてしまったそう。で、倒れたのだが。金になりそうなものだけ奪われ、そのまま放置されてしまった。負傷したまま放置されたために、衰弱し、やがて一人寂しくこの世を去っていった……といった感じだったそうである。

 かつて私を身勝手に傷つけた彼は、驚くくらい呆気ない最期を迎えたのだった。


 だが、それはある意味、相応しい結末だったのだろう。

 他者を平気で傷つける者に幸せな未来などあるわけがない。


「そうだアリエラ、この後、少しいいかな」

「何でしょうか」

「お茶でも飲んで休憩しないかい?」

「え……で、でも、お仕事は……」

「ちょっとくらい休んだって大丈夫だよ、またすぐ戻るし」

「そうですね、では、ぜひ」


 あの時アーバンは私のことを役立たずだとか奉仕の精神がなさすぎるだとか言ったけれど、今はもうそんな風に言われる私ではない。

 活躍しているし、必要とされている。認められている私として今日を生きている。もう誰も理不尽に私を否定などできはしない。価値のない女だと悪く言うことも不可能だ。


「好きなのは確か……レモンティーだったかな?」

「はい」

「ではそれを用意するよ」

「ありがとうございます」

「いつも忙しく働いてもらってしまっているからね、たまにはゆっくりしてほしいんだ」

「お気遣いに感謝します」

「じゃ、そこで待っていて。寛いでいていいよ。緊張は不要だからね」


 もう、迷うことはない。


 私は私として、できることをやっていく。

 ただそれだけ。

 派手ではないけれど、でも、今できることをやり続けることがいつか未来を切り拓くはず。


 温かなこの場所を守るために、私は生きる。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ