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病弱令嬢セシリアはひたすら領民を救いたい 〜領地おこしをしていたら、王国への謀反を暴いて国を救っていた件〜  作者: 早見 羽流


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第13話 正しい道

「「「……」」」



 私を含めた三人はお嬢様の言葉に黙り込んでしまう。

 ここまで言い当てられてしまってはもはや観念するしかないようだ。

 私はパチパチと両手を叩いた。


「見事な推理です。セシリアお嬢様」

「では、あなたが私を監視するために王家が遣わしたヨハン王子の双子の妹、エミリア皇女なのですか?」

「ええ、そうなります」


「「……!」」


 驚いたのはオージェ伯爵父子だった。彼らは私に向けてひざまずくと頭を下げる。


「エミリア様! これまでの無礼をお許しください! どうか我らを許してください!」

「ワシはなんと愚かなことを……あの時、折檻を止めに入ったあなた様を殴り飛ばしてしまうとは……皇女殿下と知っていたらあのような仕打ちは……」


「落ち着いてください。私はもはや王位継承権を放棄した身です。ただのメイドのエミリーだと思って接してください」


 私はそう言って彼らを立たせると、お嬢様に向き直った。そして恭しく一礼をする。


「お見事ですセシリアお嬢様。私はヨハン兄上の命令であなたの監視と身辺警護をしていたのです」

「なぜ? どうしてそのような危険な役目を?」


 お嬢様は不思議そうに首を傾げた。


「最初はただの興味からでした。ブルギニョン男爵家の『忌み子』がどのような人物なのか、見てみたくなったんです」


 私が正直に打ち明けて謝る様子を、フレデリカ嬢とランベールはぽかんとした顔で見つめていた。


「さすが、噂に聞くお転婆(てんば)な皇女様ですね。それで、どうでしたか?」

「セシリア・ブルギニョン──お嬢様は予想以上の人物でした。彼女の力を借りれば王国をもっと発展させられる。──しかし、同時に敵に回せば王国は一瞬で滅んでしまう。そう感じました」

「私がアロイス様の誘いに乗って王国の敵に回れば、即座にあなたが私の息の根を止めたでしょうね」

「ええ、ですがそれは本意では無いので、そのような結末が来ないことを祈っていました」

「ふふっ。では私は誤った選択をせずに済んだ……ということでしょうか」

「いいえ。私はずっと、お嬢様なら無駄な犠牲を生む戦を避けるだろうと信じておりました」


 お嬢様は嬉しそうに微笑むと、「ありがとうございます」と言って私の手を握った。その表情はとても美しく、とても優しい笑顔だった。



「私としたことが、あなたの正体に気づくのにだいぶ時間がかかってしまいました」

「ですが、私はずっと隠し通せているという自信がありましたから、お見事と言う他ありません」

「あなたも私に負けず劣らず聡明な方ですよ」

「光栄です」


 私がニッコリ笑うとお嬢様はフッと笑みを浮かべ、それからすぐに真顔になる。




「では、これからの話をしましょうか。エミリー、いえ、エミリア様?」

「どうぞ以前のようにエミリーと呼んでください」


 私が懇願すると、お嬢様は少し悩んでから小さくうなずく。


「分かりました。──エミリーは私に正体がバレてしまったわけですが、これからどうするつもりですか?」

「もちろん引き続きお嬢様のお側に居させてください。私はまだお嬢様のことをほとんど理解していませんし、公爵位についたからにはこれから更に危険が付きまとってくるでしょう。……警護を続けなければ」


 私は決意を込めて言うと、胸元に手を当てた。


「…………」


 そんな私の様子をしばらく眺めたあと、お嬢様はため息をつく。


「もはやあなたはお役御免でしょう? 私は王国に歯向かう気はないし、身辺のことなら護衛を雇えば……」

「お嬢様。お嬢様は晩餐会の夜、私に話してくださいましたね。今まで冷静にことを進められたのはあなたのおかげだと。頼りにしていると」

「そんなこと言ったかしら?」


 お嬢様がわざととぼけているのは分かっているが、ここは押し切ることにする。


「はい。言いました。私はまだお嬢様の側を離れたくないのです。……お嬢様が嫌でなければ、ですが」


 お嬢様はもう一度深くため息をついた。


「嫌なわけないでしょう。あなたの事を想って暇を与えてあげようと思ってましたのに……そうですか、あなたの望みは私の側に仕えることですか」

「玉座を捨てた皇女のわがままだと思ってください」

「仕方ないですね。それならば私はあなたに甘えさせていただきます」



 そう言って微笑むお嬢様の瞳はいつも通り優しくて、私もつられて頬を緩めた。



 ──こうして私は引き続き、お嬢様の忠実なるメイドとなることができたのだった。



 お嬢様は私のことを聡明だと言ってくださったが、私にはお嬢様の考えていることが全て理解できるわけではないし、むしろ逆だ。お嬢様のことは分からないことだらけ。きっと私はまだまだ未熟なのだろう。


 でも、このままお嬢様に仕えていれば、いつかお嬢様のように聡明な人間になれるのかもしれない。

 それまでは、彼女の元で学び、彼女を支えていこう。


 それが私のわがままを聞いてくれた兄、ヨハン王子への恩返しにもなるのだから。


 と、決意を新たにしたところで、私は一旦筆を置こうと思う。この先の世が平和で民にとっても貴族にとっても住み良い世界になればと切に願う。


 ──おしまい──


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