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猫の呪い

作者: 神名代洸

うちの近くには昔から野良猫が住み着いていた。

1匹や2匹じゃない。

それでも住人たちからは餌をもらったりして元気いっぱいに走り回っていた。

僕も猫が好きなので、たまに餌をあげる。

懐かれてるのはわかっていたけど、家族からは家猫にするのだけはダメだと言われていた。

ただでさえ苦しい生活がさらに苦しくなるからだ。

餌代、トイレ代、病気にかかれば通院代と人間と同じようにまたそれ以上にかかるのは生活を支えている母さんが1番よく知ってる。

僕は諦めるしかなかった。だから朝だけはこっそりとあげていた。

住みついてから1年くらいした頃か、いなくなる猫がいることがわかった。

成猫もいたから歳取ってたのかな?なんて思ってただけで大して気にもしなかった。


いなくなるのは決まって金曜日。

1匹づついなくなっていた。

その中には子猫も含まれるようになり、疑問が湧き上がった。それは猫に餌をあげている人達からも同様に思われていたようだ。

そこでみんなでお金を少しずつ出し合い、防犯用にカメラを設置した。それも2カ所。

猫たちがしっかりと映るようにセットしておいた。

それから数日後の金曜日、また猫がいなくなる…て言うか、誰?この人。猫を車に積んで走り去っていくではないか。防犯カメラにナンバープレートがしっかりと映り込んでいたので、知り合いの警官の友人に調べてもらうように頼んだ。はじめはできないと言われたのだが、もしかしたらペット虐待かもと話すと、態度が急に変わり、すぐ調べますと言ってくれた。

住所はすぐに割れた。

住人は男性一人のようだ。

近所での聞き込みをしても動物を飼っている様子はない。そしてどうやら生き物を虐待しているのではないかと言う話が聞けた。

たまに動物の鳴き声が聞こえてくるようで、何をしているのかはわからないとのこと。


住人が何か問題を抱えている可能性を考えて、慎重にことを進める事になった。

その問題の家は小さな庭がある。

何か育てているのだろうか?

庭中がガタガタでこんもりとした土が至る所に見受けられた。

まさか、本当に生き物を虐待?

警官は相手から見えない位置で様子を伺っていた。

すると男は洗面器を持ってきた。

水が張られていた。

そこに連れてこられたのは1匹の猫だった。

一体何をするのかと黙って草葉の陰から見ていたが、男は躊躇うことなく猫の首元を掴み、洗面器の中に突っ込んだ。びっくりしたのは猫だけじゃないだろう。僕だって驚いたよ。

猫は暴れたが、ゴム手袋をしている男には何の影響もなく、しばらくするとだらんと手足が垂れた。

時々ピクピクと小さく動くが反応は薄い。

確実に動かなくなるまで水面に顔を沈めており、完全に動かなくなったら庭にポイと放った。

庭の隅に穴があった。

まさか…まさか……そう、それは猫を埋めるための穴だった。酷い。

もしかしてあのこんもりしてる場所全部に猫が埋まってたりしないよな?

もしやってたとしたらペット虐待。あるいは動物保護法に抵触の恐れがある。

警官と僕達は各々手にしていた携帯のカメラモードで写真を撮り続けた。

そして、写真がきちんと撮れていることを確認すると警察に電話した。自分の部署では管轄外の為、他の課に回された。

すぐにこちらに来ると言うことだったので、鑑識も連れてくるように頼んだ。

時間にして20分位だろうか…音を消したパトカーが2台やってきた。

僕らがいる場所までやってくると状況説明を求められ皆で順番に説明した。

そして携帯に載っている写真の猫達の様子を確認し、乗り込んだ。驚いたのは住人の男だ。

突然警官たちがなだれ込んできたのだ。男の足元にはまださっき使ったばかりの洗面器が置かれていた。

それを奪われまいと男はサッと取ろうとしたが警官の方が素早かった。あっという間に取り上げられ鑑識と描かれた制服の警官に渡された。他の警官たちはスコップを持っており、こんもりと盛り上がった土の上を掘り始めた。

「な、何してる!私の庭だぞ!礼状もなく勝手なことはさせんぞ!」

「そうですか、なら礼状もすぐ手配します。ここに埋まっているであろう動物達を掘り出してからね。」

男は真っ青になった。

まさか…と。

バレていないと思っていたのだから。

次々とこやまは掘り起こされ犬や猫達の変わり果てた姿が現れた。中には白骨になり始めているものもあった。

明白である。


全部で20体。埋められていた。

余罪がありそうなので建物内もガサ入れをした。

すると押入れなどの場所にも死骸があり、臭いが漂っていた。


「あんた一体何匹殺した?法律で禁止されていることだぞ!動物保護法に当たる。

現行犯逮捕だ。

男は手錠をかけられてパトカーに乗せられた。

その日の夕方は牢屋の中で過ごすことになった。ここには刑務所がないからだ。



その日の夜、夢を見ていた。

それは…。


男は1人海辺に立っていた。

夕日を見ていたのだ。

時間は夕方だった。

そろそろ帰ろうかと思った時目の前に子猫が歩いてきた。

警戒していないようだ。

そこで男はその子猫を捕まえようという気になった。だからそーっと近づいて行ったが子猫は逃げなかった。そっと手を出して首元を掴もうとした時だった。それまでおとなしかった子猫が突然鳴き出したのだ。するとどこからか猫の鳴き声が聞こえてくるようになった。それも1匹や2匹じゃない。あたりは暗くなりつつあったが、ギラリと光る二つの目達が男を見ていた。

どうやら怒っているようだ。

何に倒して怒っているのかわからないまま男は徐々に下がり始めた。

するとこんなにもどこにいたのか?って言うくらいの猫達が出てきた。唸り声はおさまってない。怒っているようだ。

たかが猫くらいが1匹2匹減ったくらいでどうと言うことはなかろうと隠し持っていた折りたたみナイフを伸ばして猫に飛びかかろうとしていた。でも猫の方が動きが早くて逆に後ろへ追い詰められて行った。振り向いたらそこは海だった。


「な、何だよ。お前ら人間に楯突くつもりか?人間の方が偉いんだぜ!」そう言ってナイフを振り回すも猫達は器用に避けて飛び跳ねる。

そして他の猫が前足で攻撃してきた。

ナイフを持つ手に鋭い爪があたり、出血した。


「いてー!いてーよ。」

そう言いながら徐々に水のそばに追い詰められていく。振り返ったら海だった。

だからそこから逃げようとしたんだ。けど猫達は攻撃の手を緩めない。

あきらめて水の中に入っていく。

するとどうだ?猫達は追いかけてこようとはしなかった。やったぁと思って泳ぎ出したらその行く方へ集まっていく。

逃げ場がない。

あまり深くに行くと溺れる危険があると感じ、浅瀬に向かうがそうすると猫が海に入ってきた。

やば!

慌てて引き返すもその時何かが足に絡みついた。何だ?水の上からでは見づらくわかりにくい。だから水の中に潜った。その目で見たものは猫のしっぽがいくつも足に絡まっている様子だった。

1匹どころじゃない。

視界に入る全てに猫がいた。

尻尾は絡まっていた。

男は息が続かなくなり海面に顔を出した。しかし直ぐにまた水の中に引き摺り込まれる。

猫がジッと見ている。

恐怖しか感じなかった。

逃げたい。死にたくない。

男は腕もバタバタしたが、猫の方が力があるのか海底に沈み始める。


もう死ぬ…と、そう思った時目が覚めた。全身汗でべっしょりだった。

喉が渇いたので水を飲んだ。

けど夢に見たあの猫たちの事が頭をよぎってしまい、もう寝られそうもなかった。

見回りの警護官が部屋の前を通り過ぎた。


その時だ。

ペットボトルが動き出した。中の水が波打っていた。そして机から落ちた。

キャップがくるくるとゆっくり動き出し、終わった時にはキャップはペットボトルから落ちていた。

中の水がコポコポと出てくる。そして床にシミを作る。

水たまりができた時にその中に光る何かを見た気がした。

そう、二つの光るもの…目だ。

怖くなって部屋の反対の隅に逃げたが、それ以上逃げることができない為怯えて小さくなって震えていた。

「た、頼む。悪かった。僕が悪かったよ。成仏してくれ〜。」

光るものが水の中でどんどんと増えていった。

水たまりの中は目だらけだ。

どれも光って僕を睨んでいた。


猫達の怒り、悲しみ、憎しみは想像を絶するものだった。


監視官が戻ってきて部屋の中を見た時、男はすでに事切れていた。


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