第8話
宿で寝る前に、ヘリーネさんから頼みがあった。
「明日、すぐに帝都へ行き魔法省にこの事を伝えたいのです。お金は支払いますのでお願いします」
自分の馬車で行けばいいのにと思ったが、ゴーレムの事件で馬車や馬がやられて数がないとの事らしい。
しかし驚いたのはその金額、金貨20枚も、もらえるのだ。(20万)
お金があって困ることはない。
と言うわけで明日の予定は決まった。
元々は、商売の役に立つ知恵を集めながら帝都へ向かうつもりだったが
へリーネからの依頼で直接行くにした。
その後、借りてた部屋に向うも途中でコメルとばったり会った。
「あれ?コメルじゃないか。何でここにいるんだ?」
「言ってなかったかな?。ヘリーネさんがゴーレム事件に遭った人に宿代を全額支給したんだよ。ルナも受け取っていたらしいぞ」
あいつ、もしや何も言わず懐にお金を隠しやがったな。
絶対に問い詰めてやる。
「教えてくれてありがとうコメル。ルナとゆっくり話してくる」
コメルは僕が言ったことを聞き、焦っていた。「あっやべ、伝えない方がよかったかな?」
翌日
「おはよう、フェルナンド朝だよ。起きないとフェルナンドのごはんもらっちゃうぞ」
元気のいいミレアにまた起こされた。
「ふぁー、はいはい。今すぐ起きますから」
ルナも、相変わらずソファーで寝ている。
昨日と違うことがあるとすれば、それは、たんこぶができていることかな?。
僕が渡してた宿代を、全て酒に使い果たしのだ。
5日分の宿代を渡すべきではなかったな。(2万)
「出会った時のこともそうだったな」
ヘリーネさんがいつ来るかも、わからないから取りあえず、宿を出る準備は終わらせておこう。
「早くいかないと朝食券がきれちゃうよ、先行っとくね」
そう言ってミレアは飛び出していった。
「飯!私も行きます」
と言ってルナもミレアを追いかけるように部屋を飛び出した。
本当にルナって飯と酒しか頭にないんだな。
片付けを終え、僕も隣のカフェに行った。
カフェの中へ入ると二人は目をキラキラさせていた。
「ミレア見て、デザートのイチゴ、手のひらサイズはあるぞ」
「ホントだ、ルナさん食べれるの?」
「いけるいける。一口で」
そう言って口に入れようとしていた。
「あれはいらない?」
「何してんだルナ?一口で食えるわけないだろ」
「フェルナンド!ちょうどいいところにいたね。押し込むの手伝って」
一口で食べれるわけもなく、ルナはのどを詰まらせかけていた。
僕は考えるのをやめて、これが普通なんだと自分に言い聞かせた。
「ミレアはするなよ」
ミレアだけは、ちゃんとした人になってもらわんとな。
そう思いつつ、ミレアはつかの間。
「パク...やっぱり一口じゃ入らないや」
同じことをやっていた。
...女神様お助けください。
ミレアもルナみたいにバカになっちゃいそうです。
「やー、フェルナンド。元気か?」
コメルが突然横から声をかけてきた。
「いつの間に!」
「もう少し警戒しとけ、掏られるぞ。」
そう言って、僕の財布を渡してきた。
予定のことばかり考えて、気が抜けていた。
そういえば、あの件について伝えてなかった。
「みんな聞いてくれ。食べ終えたら、へリーネさんと帝都へ直行することになった」
「お前らもか!」
コメルは驚いて言った。
お前らもか...?どういうことだ。
「実は俺もへリーネに帝都へ荷物を運んでくれと頼まれたんだ。追加の荷物ができたかららしい」
帝都へ何を持っていくつもりなんだろう?
ルナは僕らの真剣な話を無視してワイン、ウォッカ、日本酒を次々と飲み比べていた。
「次はど・れ・に・しようかな?」
「おいルナ、少しは話を聞いてよ」
声をかけるも、まったく耳を貸さず、にやけながらグラスを傾けている。
そろそろ本当にパーティーから追放しようかな?
ルナはすっかり酔っ払ってデレデレになってしまった。
「フェルナンド~、もっと飲も~う!」
と絡んでくる始末。
その光景を見ていたミレアは、面白がってベンチでふらついているルナをつんつんと軽く押して遊んでいた。
食べ終えた後、みんなで酔っ払ったルナを荷馬車に乗せ、準備を整える。
時間通りに大魔法使いヘリーネが現れた。
彼女の落ち着いた雰囲気と堂々とした姿が、場の空気を引き締める。
ルナに見習ってほしいもんだ。
「ではでは、出発しましょう」
その言葉に促され、僕とコメルの荷馬車に乗り込み、いよいよ帝都へ向かう旅が始まった。
到着するのは7日後だ。
町を覆う壁を抜け、東へ向かった。
つづく。
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