第五章 昼食
「そんな話は置いといて。外だから飯がさめてしまう。はやく食べよう」
「そうだな」
話に夢中になりすぎて、ついここに来た目的を忘れていた。
僕が食べようとした瞬間、ミレアがびくっと体を震わせた。
「ミレア、大丈夫か?」
そんな僕の声掛けを無視して恐る恐る上を見た。僕もここで違和感を感じていた。
辺り一帯が不気味な影に包まれた。
次の瞬間、鉄の腕らしき巨大な物体が日傘を突き破り、机を粉々にした。とっさにミレアが魔方陣を盾に使い、威力を弱めた。
奇跡的に僕らはかすり傷で済んだが巨大な物体は次の攻撃をしようとしていた。
「ゴーレムだ、逃げろー」
人々の悲鳴が響き、辺りは一瞬で混乱に包まれた。
「フェルナンド!。ミレアを連れて早く逃げろ!私が時間を稼いでいる間に」
ルナが叫び、僕たちは慌てて席を立った。
周囲の人々も我先にと出口へ押し寄せる。
僕の頭は恐怖と混乱で真っ白だった。
恐怖で足がすくみ、動けなくなった僕をルナが背中から強く押した。
その瞬間、ようやく体が動き、皆で出口に向かって駆け出した。
コメルは慌てて指をさした。
「こっちだ、あそこに行けば街の中心へ行ける」
「急げ」
壁から離れるように、僕たちは必死に駆け出した。しかし、20mの塀と同じくらいの高いゴーレムは容赦なく塀をぶち破り迫ってくる。
「一旦かくれろー」
兵士が言った次の瞬間、家々が砕かれ、石畳の道がひび割れる。
その光景はまるで悪夢だった。
「くそっ!どうするんだよ!」
周りの人は恐怖で混乱していた。
ルナはすでに剣を抜き、僕たちの後ろでゴーレムの進行を食い止めようとしていた。
しかし、ゴーレムの圧倒的な力に対し、彼女の攻撃はほとんど通じていないようだった。
A級の龍を切った剣にひびが入るほど堅かったのだ。
近くの兵士たちが次々と槍を突き立てたが、その全てが無惨にへし折られた。
ゴーレムが剣を一振りすると、兵士たちは瞬く間に砕かれ、地面には無惨な残骸だけが残った。
隣にいた人は言う。
「あれは、滅びの戦士だ」
俺はそいつに聞いた「どう言うことだ?」
「あれはゴーレムじゃない。伝説に語られる悪魔の兵士だ」
生き残っていた兵士たちは食い止めるのを諦め、住民の避難誘導に全力を注ぐことを決めた。
「市民を安全な場所へ!早く!」
兵士の叫び声が響き、僕たちは出口を目指して走り続けた。だが、背後から聞こえる剣の音に振り返ると、ルナが剣を握り直して立ち上がる姿が目に入った。
「加護を使う!加護よ、現れよ。我とともにゴーレム止めるのだ」
彼女の声が響き、その瞬間、彼女の体が光り輝き始めた。次の瞬間、分身が現れ、ゴーレムに向かって同時に攻撃を仕掛けた。
鉄の盾にひびをいれることに成功した。
いける、ルナならゴーレムを倒せる。
区域を抜けられるトンネルが見えてきた。
しかし、ゴーレムを見た時にはルナの精霊は握り潰された。
精霊が消え去ると同時に、ルナはゴーレムの一撃を食らい壁に叩きつかれた。
同時に剣が真っ二つに折れた。
「そんな…」
みんなは絶望に染まっていった。
彼女が頼みの綱だと思っていただけに、その光景は耐えがたいものだった。
「固定砲台が動き出したぞ、打つつもりだ」
兵士たちは最後の手段として砲台を使った。
街のあちこちに設置された大砲が、ゴーレムに向いた。
「撃てー」
号令と同時に火を噴き、ゴーレムに向けて一斉射撃が行われた。
「今度こそやったのか?」
隣にあった塀どころか半径20mのものは跡形もなく崩れた。
「これを耐えたら勝ち目は正直ない」
煙が風に流されゴーレムが見えてきた。
動きは止まっていた。
「止まったのか?」
しかし、先ほどとは違い盾を地面に練り込ませて防御していた。
希望はむなしかった。
盾を引き抜き剣をしまいった。
銃らしきものを取り出した瞬間、ゴーレムは銃で砲台を次々と破壊していった。
「無理だ…あれを止める手段がない…」
絶望が街全体を包み込む中、突然、機械音のような大きな警報音が鳴り響いた。
「緊急事態発生、緊急事態発生。緊急閉鎖を発動します!」
教会から街の上空にレーザーが照査され、巨大な円形のシールドが街を覆うように展開された。
同時に街がいくつかの区域に分けられ、それぞれをさらに小さなシールドで防御する仕組みになっていた。
「こんなの初めてだ、と言うかこんなシステム知らないぞ」
コメルが息を切らしながら言った。
しかし、僕らは安堵できなかった。
ゴーレムがいる区域に僕らがまだいるといことだ。
あのシールドは進行を遅らすために俺らを分離し閉じ込めたのだ。
コメルは急いでどこかへ飛び出した。
何をするつもりなのか分からないが彼は消えていった。
帰ってきたと思えばルナを背負っていた。
彼女は頑丈とは言え大ダメージを食らってしまっては動けない、と言うか生きていたのが奇跡だ。
「フェルナンド、俺がルナをかついでい持っていくから君はミレアを頼んだ。最後の出口へ向かうぞ」
俺らは全力で走って向かった。
出口のすぐそばまできた瞬間。
ゴーレムの弾で建物が崩壊し、俺らは下敷き担った。
意識がもうろうとするなかどうにか僕は、抜け出した。
「動けない、すまんフェルナンド手を貸してくれ」
コメルが助けを求めていた、よくよく見ればみんな下敷きになった。
ミレアは頭から血を流していた。
どうする?時間はない、誰を助けるか。そんなこと考えていた。
フェルナンドの瓦礫をどかそうとした。
パッと上を見たら、ゴーレムが、じろっと見ていた。
終わった、ここで俺らは死ぬんだ。
いや、ここで死ねない、死にたくない。
「まだ僕は何も成し遂げていない」
銃口はこちらを向き弾が発射されようとした。