第13章包囲を脱出
永遠と続く道を、魔法の明かりを頼りに歩き続ける。
ミレアが僕の服を引っ張った。
「どうした、ミレア」 「お腹空いた」
そういえば、グラゼスに襲われたせいで昼食のことを忘れていた。
「そういえば、ルナがチキンを買ってたから、まだ残ってるかもしれんぞ」 コメルの言葉を聞いて、僕はルナに尋ねた。
「まだ残ってるか?」 「ないよ」
……まあ、そうだよな。お前は食いしん坊だからな。 通路を出たら、何か好きなものをミレアに買ってやろう。
パリッ、パリッ、パリッ
香ばしい匂いと小気味いい音が後ろから聞こえた。嫌な予感がして振り向くと、ルナが揚げ物を頬張っていた。
「それはなんだ?」 「唐揚げ」 「……お前、さっきないって言ったよな?」 「うん、ないよ」
……こいつ、無意識に嘘ついてるのか?
「唐揚げってなんだ?」ミレアが興味深そうに聞く。 「チキンを味付けして揚げたものらしいよ」コメルがさらりと説明した。
「チキンやんけ。ミレアにひとつあげてやってくれ」 しかしルナは、袋を全力で抱え込んだ。
「やだ、自分のだもん」
そこで不意に、ルナが唐揚げの袋をヘリーネにパスした。
「ヘリーネさん、後で私に返して!」
しかし、ヘリーネはニヤリと笑う。
「……『ばば』って言ったの、誰でしたっけ?」
「あ」
その瞬間、ミレアが素早く唐揚げを奪い、迷いなく口の中へ。
「私の唐揚げが――!!」
ルナの悲鳴が響く中、僕たちは暗い地下通路を進み続けた。
長い道のりを歩き続け、ようやく先に微かな光が見えた。息を切らしながら歩調を早める。
「もうすぐ出口だ」
エグランが扉を開けた。
だが、外に広がっていたのは何もないただの平地だった。
「……僕らは逃げ切れたのか?」
「包囲から抜けただけだ、油断するな。急いでもっと遠くへ行かないと捕まるぞ」
緊張感が一気に戻る。空気を震わせるような遠くの足音が聞こえた気がした。
「行くぞ!」
休む間もなく、僕たちは再び走り出した。
どれくらい走っただろうか。ようやく見つけた小屋に駆け込むと、全員が床に崩れ落ちる。
「やっと休めるー。フェルナンド、私走るのもうやだ。次からはだっこして」
「剣士が何を言っていると思えば、だっこのお願いか。お前の方が体力あるだろ」
「ルナはお前のことが好きなんじゃないか?」 コメルは、ひねくれた笑みを浮かべて言った。
「そんなことないし、誰がこんな弱い男を好きになるか!」
「こちらからもごめんだよ、ルナ。借金ばっかり作るからな」
「そうじゃそうじゃ、フェルナンドがいつも苦労してるんだぞ!」
ミレアが久しぶりに大きな声で言った。
僕はそれにかなりビックリした、あまりしゃべらなかった、ミレアがしゃべったのだ。
ヘリーネは言った。
「そんなことより、エグラン...いやエグラン大魔法使い。この後どうすればいいのですか?包囲は抜けたとしてどこに逃げればいいのですか?どこの王国もシルバー連邦帝国の属国だ逃げる場所なんてあるんか?」
エグランは深呼吸をして言った。
「ヘリーネ様たちが逃げれる国は一つ白狼王国です」
ヘリーネは、飲んでいた紅茶をぶちまけた。
「敵国だぞ。しかも人種も違う。すぐ見つかって吊るし首にされるじゃないか」
「しかし、あなた方は帝国に追われてる身彼らに情報提供を材料にすれば亡命も可能なはずです」
「そんなことをしてまで..というかお前はどうするつもりだ。俺らを手伝ったということで死刑になるんじゃないか?」
確かに言われてみれば僕らを助けたと言うことは共犯、同じく排除されると言うこと。
「私が手伝ったことを知っているのはあなた方だけです。こっそり魔法省に戻れば大丈夫です」
そのときだった、コメルが突然動きを止めた、同時に運んでいた紅茶も落とし跪いた。
「コメル?」
「それはどうかな?ミスターエグラン」
コメルの声とは思えない低い声...もしかして。
「見ーつけた。俺が本当にこいつを簡単に返すと思った?このグラゼス様を見くびっては困るね」
グラゼス!コメルの体をして乗っ取ったのか?
「みーんなのためにわざわざサプライズを持ってきたから外へ出て見てみたらいいかもね」
ヘリーネはコメルの顔に手をおき、魔法を握りつぶした。
急いで僕らは外へ出ると僕は腰を抜かした。
巨大飛行戦艦がこちらに向かっていたのだ。大砲が14門くらいはある大型艦だ。
気づけばまた包囲されていた。
次の瞬間
飛行戦艦から無数の砲弾が撃ち込まれた。
「危ない」
小屋は木っ端微塵にされ、ヘリーネとエグランの防御魔法がなければ死んでいたに違いない。
「くそっ、どうする!?」
「もう逃げ場がないぞ!」
ヘリーネたちは武器を構えたが、数え切れないほどの兵士たちが戦艦から降下してくるのを見て、全員が絶望的な表情を浮かべた。
「やれやれ、せっかくのご招待だ、抵抗せずに大人しくれたらたすかるなー」
グラゼスが不敵な笑みを浮かべながら、悠々と歩み寄る。
「ふざけるな! 簡単に捕まるとでも……!」
ルナが剣を振るおうとするが、その前にグラゼスの部下たちが一斉に魔法を放ち、彼女の動きを封じる。
「無駄だ。貴様の動きは全てわかってるんだよ」
次々と魔法の鎖が放たれ、エグランを除く僕らは捕まった。
「動いた瞬間殺すぞ」
グラゼスの部下は前と違って殺気に溢れていた。
「逃げれると思ったお前たちは残念だったな。それとエグラン大魔法使い君も同罪だ。となしく死んでくれ」
グラゼスがそういうとエグランは言った。
「作戦失敗かー。参ったな。ここで言わないと後々めんどくさくなるな...よしいっそう正体を赤そう」
「何をいったいするんだエグラン!」
その時辺りの空気が変わった。
「私の名はエグラン・ノクターン。魔王幹部第七席『虚空の使徒』と言うとしっくりきますかね」
そういって彼は隠していた角を見せた。
それを聞いたヘリーネは絶望していた。
「エグランが魔王軍幹部..嘘だろ。この悪魔が」
「これは驚いた。お前が幹部だとはな……!?まーそれがどうした、どっちにせよ。君は死罪だ」
エグランが魔王幹部!ますます何がなんだかわからなくなってきた。誰が敵で誰が味方なんだ?
「私はあるめいを受けているのです。ここで止めると困るのです」
エグランが杖を振ると、空間が歪み始めた。
「ではまた、近い内に会いましょうへリーネ様」
僕らの目が強力な光で差した。
次の瞬間、僕らは地上が見えないくらい高いところへ飛ばされていた。
「またかよー」