12話
僕らは急いで村を出ようとしていた。
その時、家と家の隙間から、不意に声がかかる。
「ヘリーネ様……ご無事でしたか?」
背筋が凍る。
「誰だ?」ヘリーネが問う。
フードを被った男は名乗った。「エグラン・シュワーツです」
知らない名だ。魔法省の人間でないことを祈る。
「ミノ共和国の大魔法使い、エグランか!……しかし何の用だ?」
知り合いだったのか。でも、大魔法使いなら魔法省の関係者かもしれない。油断できない。
「手伝いに参りました」
助け?本当に?
「なぜ手伝う?私たちは犯罪者扱いされているんだぞ。いくら五年の仲でも、簡単には信用できない」
確かに、都合が良すぎる。
ルナが剣に手をかける。だが、それ以上に驚いたのは彼女の目だった。あんな殺気を帯びた目は初めて見た。
「信用できる証拠はありません。ただ、魔法省から気になる話を聞きました」
「言ってみろ、エグラン殿」
「あなた方は、今、包囲されています」
「……包囲?それは前の話ではないのか?」
「いえ、現在進行形です。ウルティレジスから西のマルラ町まで、すべてのルートが厳重に監視されています。無人地帯にも監視塔が設置され、高速移動魔法を使っても逃げられません」
包囲が事実なら、詰みだ。
コメルが口を開いた。
「お二人はどんな関係なんでしょう?どちらも大魔法使いのようですが、話し方が堅苦しいのが気になりまして」
エグランは答える。
「いえ、ただの秘書です。ヘリーネさんが大魔法使いになる前、補佐をしていました」
「そんな時もあったな……そういえば、今の秘書はどうなった?」
「予定通り、帝都へ送りました。一時的に尋問されるようですが、すぐに解放するとのことです」
「それだけをいいに来たって訳じゃないでしょ?」
「では、本題に戻りまして。この村に秘密の地下通路があるんです。そこまで案内しようと思いまして」
そう言ってエグランは、ある近くの家に案内した。
「何でこんなとこに地下通路があるんですか?」
「300年から400年前の間に戦争が絶えなかったんだ。そして地下通路が作られていっったってことさ。シルバー連邦帝国のどこにもつながっているんだ。まだ見つかってないのも山ほどあるが」
戦争ってもしかしてコメルが言っていた。最後の皇帝の話のことかな?
でも、魔法省が把握してない根拠はどこからあるんだ。
「そこに兵隊がいない根拠はあるんですか?」
「大魔法使いでも知るものはいません。ヘリーネ様もご存じないですよね」
エグランはヘリーネ問た。
「確かに聞いたことないな」
ミレアが不安そうにしていた。追手が来てないか心配なのだろう。
「フェルナンド兄ちゃんそろそろ、我らも行かなければまずいのでは?」
「そうだな」
急がなければ、来た方向を見るとすでに兵隊が入ってきていた。
前から思ってたけど、ミレアの言い方って昔の言い方っぽいな。
僕らはエグランについていき小屋にある、入り口から入った。