第10章
「馬に餌あげとくねー」
コメルはそう言ってもう一つの馬車へ行った。
それにしても馬車の中で座りっぱなしだと、腰が痛くなるな。
まだ腰がいたい。
ヘリーネさんが、少し首をかしげて俺を見た。
「フェルナンド君、彼女――ミレアとはどういった関係なの?」
いきなりそんなことを聞かれるとは思わなかった。どうやらミレアのことを気にしているらしい。俺は軽く肩をすくめながら答える。
「二、三週間前に拾ったんですよ。家が見つかるまで保護してあげてるだけです。記憶を失ってるみたいで」
ヘリーネさんはふむ、と頷くと、思い出したように口を開いた。
「そうか。ところで、彼女が“魔法使い”の称号を持っているのは知っているかな?」
「魔法使い? いや、そんな話は初耳ですが……」
確かに、最初にミレアと会ったとき、魔法を使って狼を追い払っていたっけ。あれは何か特別な力だったのか? 俺は思わずミレアの横顔をうかがった。
すると、ミレア本人がきょとんとした顔でつぶやく。
「え……私が魔法使い……なんですか?」
ヘリーネさんはミレアの胸元に視線を向け、軽く指先で示した。
「魔法使いしか持たない『加護のネックレス』を身につけているからね。ちょっと魔力を注いでみるよ」
そう言うと、ヘリーネさんはネックレスに手を当てて目を閉じた。次の瞬間、まばゆい光が辺りを包む。
「な、なんだ!?」
思わず目を細めた俺の前に、天使のように輝く少女がふわりと姿を現した。
「おはようございます! いや~、太陽の光を浴びるのは久しぶりですねぇ。どういったご用で?」
まるでミレアがもう一人増えたみたいな光景だ。普通の少女にしか見えないが、どうやらこれが“精霊”らしい。光が収まると、少女はにこやかに周囲を見回している。
「これは珍しいな……人間型精霊か」
ヘリーネさんが感心したようにつぶやいた。
「人間型? それって何か問題があるんですか?」
俺は気になって口を挟む。すると、ヘリーネさんは苦笑いを浮かべながら首を横に振った。
「問題というほどではない。ただ、人間型精霊はめったに見ないんだよ。普通の精霊は呼び出せば動き、命令すれば実行する……いわば動く機械みたいな存在でね」
普通の精霊――そういえば、ルナがゴーレム戦で使っていたような記憶がある。
「ルナ! そういやお前も精霊を使ってなかったか?」
俺がそう呼びかけると、少し離れたところにいたルナが面倒くさそうな顔をした。
「あれか? 折られた剣に付与されてたやつね。あんまり思い出したくないんだが……。あれは剣に仕込まれてた精霊で、私自身が使いこなしてたわけじゃないんだよ。嫌な記憶を掘り起こすな」
「精霊は、魔法使いでなくても扱えるものがあるんだ。高級武具に付与されているケースが多いね。動物やモンスターの形をしたものもあるし、変わり者が作った無機物の精霊なんて噂もある」
ヘリーネさんが補足するように説明してくれる。
「でも、なぜミレアが人間型精霊を持っているのか……。私が見たところ、王族くらいしか所有していないはずなんだが」
ヘリーネさんは、ミレアと精霊を交互に見比べながら、首をかしげている。
「つまり、ミレアって帝国の後継ぎだったりして?」
俺は冗談めかして言ってみた。が、すかさずルナのツッコミが入る。
「なわけあるか、バカナルド。帝国は三百年以上、皇帝がいないんだぞ。『皇帝無き帝国』って呼ばれてるじゃん。代わりに法王が代々やってるらしいがな」
「バカナルドとはひどいな……後で痛い目に遭わせてやるから覚悟しとけよ」
そう言い返してはみたものの、ルナはまったく動じない様子だ。まったく、いい性格してる。
ともあれ、ミレアが持っている“人間型精霊”の謎は深まるばかり。王族しか持たないはずの加護を、どうして彼女が持っているのか――。
俺はちらりとミレアを見るが、本人もわけがわからないようで、きょとんとした顔をしていた。まあ、記憶喪失だし仕方ないか。
パチパチパチ(拍手)
「いやーそれは大変でしたねー。記憶喪失、大変大変」
ん?聞いたことない声だな。というかいつの間にいた!。思わず声のした方を振り向いた。黒いマントをした少年?剣士のような格好をしている。こんなに晴れているのになぜかフードを被っているのだろう?
しかし、やはり見覚えがない。
「そちら様でしょうか」
「失礼しました、いえ、すいませんでした。では自己紹介をさせていただきます」
フードをおろした瞬間、ヘリーネとルナが構えをとった。なんだこの妙な空気は!
背筋が凍るような悪寒が走った。理由はわからない。ただ、こいつと目が合った瞬間、理屈ではなく"ヤバい"と本能が叫んでいた。
「私は、帝国魔法省親衛隊のグラゼスと言います」
「聞いたことない部隊だな。それはさておき魔法省がなぜここに?」
ヘリーネは、言った。
精霊は耐えられなかったのか?ネックレスの加護に戻った。
しかし帝国魔法省親衛?なんだそれ
グラゼスは不気味に微笑んだ。
「ハハハ。では、私たちに与えられた命令を言いましょう」
なんだこの気持ち悪いやつ、こんなに気持ち悪く感じたのは初めてだ。
「では、言言います。魔法省議会の決定によりヘリーネ一行を排除せよ!とのことです」ニコ
...一行を排除?つまり俺ら全員を殺すと言うことか?なぜ俺ら全員を?いや、そもそも僕らが何をしたって言うんだ。
「ついでにお友達さんの...コメル?だったかな。感がいい人でした、こっそり忍びよろうとしたら、私に短刀で刺して来たんですよ。ひどくないですか?。だから私は、このように痛め付けました」
そう言って手に持っていた目玉を見せちらかした。それだけでなく目玉をなめ始めた、なめるのを止めたとおめば狂気染みた目でこちらを見る。
「これ誰のか?わかります~?」
先ほどからコメルを見ないと思ったら...嘘だろ。
まさか、あの野郎そんな残酷なことを...
思わず僕は怒りが沸いた。
「グラゼス!コメルになにをした?」
「コメル兄ちゃんを返して」
僕とミレアを見てグラゼスは微笑みながら言った。
「ご安心ください、一人だけ旅させるのは、かわいそうと思いまして。生かしておきました。後でご一緒に旅させて差し上げますがね。ダハハハ...まず君たち二人を」
次の瞬間
「アビサルショット」
グラゼスの横から魔法使いが魔法を放った。
とっさにルナは僕とミレアを蹴飛ばし、魔法を避けた。
そのあと馬車を直撃し、粉砕された。
「二人とも大丈夫か?」
「蹴った腹以外は大丈夫だ…いてて」
危なかった、あと10cmズレていたら俺とミレアは死んでいた。
このままだとマズイ、早めに逃げないと。
辺り全体を見渡すと、俺らは囲まれていた。
少なくとも30人入るぞ。
ルナは隙を作ろうと敵に突っ込んだ。
「えーい」
クロマントをかぶった5人を斬った。
続けてへリーネも火の魔法で攻撃した。
「ヴァルフレアス」
攻撃をくらったクロマントたちは跡形もなく消された。
「今だ、またか困れる前に逃げるぞ」
ルナの声で僕らは脱出した。
「逃げてどうするだろー?友達のコメル君は置いていくのか?。まーいいや、すぐに追いつくし別にいいけど」
しかしどうする、そもそもアイツはコメルをどこで拘束してるんだ。助け出そうにも助けれない。




