序章
衝撃、閃光、轟音。いや、それとも閃光、轟音、衝撃の順番か。あるいは全てが同時か。
いずれにしろ、地面に伏した僕に判別する思考の余白はなかった。視界は霞み、背中につけた地面の感触さえ曖昧で。
周囲は嵐のような衝撃と振動が続いているはずなのに、遠い。まるで全身を綿で包まれているかのように、五感が世界から切り離されていた。
そんな中で、そんな中でも、相棒の声だけは、やけにハッキリと聞き取れた。
『しょうた、ろう……』
普段は耳なじみのよい、男性の低音で呼ばれる僕の名前さえ、マイクが壊れているのか、ノイズが混じり、語尾は金属をひっかいたような、耐えがたいものへと変わっていた。見えはしないが、彼もまた、僕と同じように終わりが近づいているのだろう。
心の水底から湧き上がる諦念が生きる力を奪うように、体から力が抜けていく。いや、抜けているのではなく、僕自身が手放しているのだ。もうここでいいと。終わりなのだ、と。
ろくでもない人生だった。でも、深い悲しみもあれば、大きな喜びだってあった。まして、死ぬのは僕だけではなく、相棒も、一緒に逝くのだ。これ以上の幕引きはないだろう。
目を閉じ、終わりを待つ。けれど。
『あき■■るな、しょうた——』
歪んだ、ノイズ混じりの音声が、何かを言う。
ああ、でも、それは僕の望みとは真逆で——。
『諦めるな、正太郎!』
一心同体と信じてきた相棒は僕の心を裏切って、そう叫んだ。
これは絆の物語。
僕と、鋼鉄の友達が、血と、涙と、友情と、愛で紡いだ英雄譚。