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ピアノを弾く少女
タッタッタと少女が一つのピアノに向かって走ってきた。
僕はピアノを正面にして、本棚の前にあった椅子に腰掛けていた。読んでいたギターの教則本から目を離し少女を見た。
少女と目が合う。
3秒ほど見つめ合う。
不思議そうな顔をしながらも、自然で、無垢な様子でこちらを見ている。たぶん、僕にはロリコンの素質がある。が、今は関係ない。
引き込まれるその目に、別れを告げて買おうか迷っている本に目を通した。
チャランチャラン、ピロンピロピロ
何の曲かは分からないが、リズムは刻まれていた。
今度は目が合うことが無いからと、再び少女の方を見た。
演奏を聴きながら思うことがあった。
無邪気に弾く姿、ピアノめがけて走ってきたその様子。
ピアノは全く弾けないが、せっかくなら弾いてみたいなと思っていたピアノ。でも、僕は一音も弾けなかった。彼女は一音、ニ音、三音‥‥‥と重ねていく。
「はぁ、弾いてみたいな」
心の中でため息まじりに吐き出した声。
手の中の本を難なく読めるほどには才を歳を重ねてきたが、きっと彼女とは比べなくてもわかる物をその最中に失ったのだ。
少女は満足すると、椅子から降りて再び走り出した。僕はその様子を見届けると、再び本に視線を戻した。
ある小説を読んでいたら浮かんだエッセイです。




