創成神話
原初の前、この世は渾沌としたカオスであったが、何らかの作用(神の一手と呼ばれているもの)により「森羅万象は無に帰した」。そして、時間も空間もない均質な世界ができるはずであった。しかし、「森羅万象が無に帰する」その最後の一瞬間のその中、本来ならばすべてが無になるそのときに、これも何らかの作用によって、ほんの僅かなひずみが残った。その歪みは無に帰するはずであったすべてを狂わせ、大きく広がり、再びこの世に時間と空間と渾沌を生み出した。その最後に残ったその歪みの原因それは「青い木の実」であるといわれる。この世に再び時間と空間と渾沌が現れると、その渾沌の中からまず三つの物体ができた。それは今日三種の神器といわれる「剣」、「盾」、「首飾り」であり、この世に「生」が生まれた。しかし、それら神器が生まれる過程で副産物としてもうひとつの「剣」ができた。それは「死」を生み出した。
「これが今分かっている創成神話だよ。」周りには町の子どもたちが遊んでいた。
「青い木の実ってなんのこと。」話を真面目に聞いていた子どもが言った。
「ただの変哲もない木の実だよ。でも本当は「青い木の実」であるはずはなかったんだけど何かの間違いで「青い木の実」になってしまったんだ。だからこの世が何も無くなる予定であったのにそれだけはうまく無くならず、渾沌が生まれる原因になったんだ。」
「お兄さんは何でそんなことを知っているの?」子どもは尋ねた。
「お兄さんかい?それはね…。」話し手がそう言いかけると子どもはどこかへ走って行ってしまった。周りの子どもたちもいつの間にかいなくなっていた。後には路上の話し手だけが残っていた。