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それは俺の生き方じゃないから

よろしくおねがいします。

こんにちは。お嬢さん。(フロイライン)

俺の名前はディレーラ・ロッティンベルグ。

ロッティンベルグ伯爵家の長男で、現在12歳。来月からラビリンス学園に入学することが決まっている。



ところで。

もう一回自己紹介をしたいと思う。聞いてほしい。


俺はアラフォーサラリーマン、安藤健太。


会社の同僚と酒を飲みに歓楽街へと遊びに行って、黒ずくめの男の怪しい勧誘に引っかかってしまう。


ボッタクリ価格の会計に文句をつけるのに夢中になっていた俺は、背後から近づいてくるもう一人の店員に気づかなかった。


俺はその店員にビール瓶で殴られ、目が覚めたら・・・



乙女ゲームの世界の攻略対象になってしまっていた!


異世界人の転生だと周りの人間にばれたら、また命を狙われ、周りの人間にも危害が及ぶ


正体を隠すことにした俺は、目立たないようにおとなしく生きていくことにした。


たった一つの真実目指す。


見た目は子供、頭脳はアラフォー。


その名は、ディレーラ・ロッティンベルグ!


(聞きなれた音楽を鼻づさむ~)



…はい。ご清聴ありがとうございました。


産まれたときから生前の記憶があったので、体が子供のうちにコレやっておきたかったんだよね。

気が済みました。どうもありがとう。


んでね、生まれ変わったこの世界なんだけど、女性向け恋愛シミュレーションゲーム『イケメン迷宮(ラビリンス)~愛の迷宮にようこそ~』の世界だったのね。迷宮と書いてラビリンスと読む。コレ、重要ね。

アラフォーになっても独身だった俺に妹が「女心を知れ!」といって押し付けて来たゲームがこれなわけ。

アニメの録画視聴中に()()()プレイして、一応全ルートクリアしたよ。妹がうるさいからね。

その後、イケメンラビリンスカフェとか連れていかれたけど。

俺は完全に妹の財布にされていたけど。

履修していないヤツをカフェには連れていけないというこだわりが妹にはあったようでさ。

財布に作品を履修させただけで本気で俺の非モテを心配していたわけじゃなかったよねコレ。


さておき。


ゲームのあらすじは、ラビリンス学園っていう地下迷宮の上に建っている学校に入学して、いろんなイケメンと協力して地下迷宮を探索するというゲーム。

学園パートと迷宮探索パートに分かれていて、学園パートでは攻略対象と出会ったりイベントがあったり学園の謎が増えたり減ったりして、迷宮探索パートは普通にアクションRPG。

迷宮攻略は二人一組で行うので、「今日は誰を誘おうかな?」って選択肢で相手を選んでダンジョンに挑む感じ。

学園パートで選択肢ミスってると、この探索パートナーになってくれなかったりする。

当然、一緒に探索する回数が多い方が好感度が上がるんだけど、探索する階層によってはほぼ相手が固定になる場合もあるわけ。

たとえば、氷の魔物が出てくる階層なら、炎の魔法が得意な男の子を連れて行く方が効率がいいとかね。

学園の生徒はみんな探索するのが校則で決まっているので、ヒロインが選ばなかった男の子も別の子と組んで探索している設定なのね。だから迷宮内で偶然「A君とB君が仲良く探索している所」に出くわして会話するなんてイベントもあるそうな。

そのイベントが見たくて、A君推しだけどあえてA君とは探索しないなんてことをしているプレイヤーもいたようだよ。(カフェで知り合った女の子情報)


ちなみに、俺はヒロインをめちゃくちゃ鍛えてパートナーに頼らず物理で殴るという進め方をしていた。パートナーは添えるだけ。もしくはアイテム係。

アジリティ優先して次いでストレングスを伸ばすようにスキル割り振りをしていた。先制攻撃こそ最強という持論があるのでね。他のゲームでも率先して速さを伸ばすことが多い。



そんで、俺。

ディレーラ・ロッティンベルグはそのイケメンラビリンスの攻略対象の一人。

伯爵家の長男で、氷魔法の使い手。青い髪に青い瞳。クール系イケメンなので少し釣り目。冷静沈着でしゃべり方が少し冷たいが、懐に入れた者に対しては優しく接することができるという、いわゆるクーデレ。ぎこちない優しさがたまらないんだとか。

俺のガラじゃないけどね。

それでも、普通に貴族の子として教育をうけていればある程度はそうならざるを得ないかなぁとは今思ってるところ。

さすがに、12年間ディレーラとして育てられれば、ディレーラとしての振る舞いというものが身に付きますとも。


そんでね。

このイケメンラビリンスなんだけどさ。とにかくイケメンとイチャラブしようって趣旨のゲームなんで、ライバル女子とかは別にでてこないのね。

そこは良かったよ。不幸になる女の子はいなかったんだ!

問題は、ヒロインに選ばれなかった攻略対象の末路だよ。末路。


なんていうか、ヒロインが幸せになるためには、選ばれなかった人たちも幸せにならないとイカンというわけなのか、人の不幸の上に立つ幸せっていうのは、物語としても求めてないみたいでさ。うん。

ヒロインに選ばれなかった攻略対象たちもそこそこ幸せになりましたって後日談みたいなのがエンディングでパパパーっと流れるわけさ。

なんか、それまでゲームに出ても来なかった「え?そんな子いた?」という子と結ばれてたり、能力を認められて出世して一生を仕事に捧げたり、男同士の友情パワーで冒険者になり魔王を倒したりする。

新しい扉を開いて男同士の恋人になるパターンもあった。まぁ、女性向けゲームだしね。


で、ディレーラは「魔王討伐派」のキャラクタなのね。

断然、こっちの方が面白そうじゃない? 燃えるよね? イケメンラビリンスも「ダンジョン攻略パートがあるからお兄ちゃんも耐えられるでしょ」と言って妹が貸してくれたぐらいで、まっとうな恋愛物とか背中がかゆくなってダメだったんだよね。男性向けでも恋愛ゲーム苦手だったし。

ヒロインちゃんとの恋愛駆け引きや婚約や結婚とかなんとか、そういうの興味ない。生前のアラフォー独身も、別にモテない事を嘆いてはいなかったし、オタクやってたら独身貴族最高イェー!ってなるじゃん。なるよね?自分で稼いだお金を全部自分の趣味につぎ込めるとか最高じゃん?


なので! 俺はこの世界では冒険者になって魔王討伐の旅に出たい。

そのためには、ヒロインに選ばれてはいかんのですよ。選ばれちゃったら、伯爵家を継いで領地経営したり王城に出仕したりしなきゃならなくなるからね。子ども作って子育てに参加してキャッキャうふふな幸せ生活をしなきゃならない。

それが女性向け恋愛シミュレーションゲームの幸せなエンディングだから仕方がない。

それも、ひとつの幸せな形であることはもちろん否定しない。でも、それは俺の生き方ではないのだ。

幸い、ロッティンベルグ家には弟があと2人もいるし、姉と妹もいるので最悪は姉に婿を取ってもらえばよかろうもん。


そんなこんなで、俺はモテない努力をしてきたのであるよ。

めちゃくちゃ甘いものばかり食べてデブになってみようとしたんだけど、魔法の才能があるタイプの人間はカロリーって魔力に変換されるらしくってさ。魔力上昇して氷魔法のレベルがめっちゃ上がっちゃったのよ。で、魔法が出来る子!って親に見られちゃったらスパルタ家庭教師付けられちゃって、魔法ガンガン使わされるから、どんだけ甘い物食べても太らないんだよね…。


顔を洗うのをやめて、ニキビだらけの顔になってやろう!っていう作戦も考えたんだけどね。貴族の子は無理だったね。

侍女や侍従がくっついて世話してくるから、風呂や洗顔をさぼるということができないんだよね。顔を洗うふりをして水をパチャパチャつけるだけでごまかしてやろうとしたけど、コレをやると床屋で髭剃られる時みたいな待遇で顔を洗われてしまって、すごい恥ずかしい思いをするので出来なくなった。

今ではちゃんと自分で顔あらってますよ。とほほ。


陽当りの良い場所で昼寝して、シミやそばかすだらけの顔になってやろう!という作戦もやったんだけど、前述の通りのスキンケアを侍従にやられてお肌はすべすべ。よく日に当たり良く寝たせいで背がにょきにょき伸びたし健康的になったしで体格がしっかりしてしまった。


やることなすこと、裏目裏目でどんどんイケメンになってしまうのだ。

コレがゲームの強制力というものなのか、単に俺の要領が悪いのかは分からない。


しかし、デブにも不細工にも不潔にもなれず魔法の才能は伸びてしまったこの状況で、学園への入学はもう来月だ。

こうなったら、学園パートでのヒロインとのフラグを回避して探索パートナーに選ばれないようにするしかないよね。

…うん。がんばろう。

こっちは週イチぐらいで更新できたらいいな

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 鼻ずさむってなんですか?
[良い点] 文章が読みやすく、するすると最後まで読むことが出来ました。 最終的にみんながハッピーエンドを迎えるゲームっていいですよね。 誰かを選んだ結果、誰かが不幸になったり救われなかったりするパター…
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