right game
さあ、ヒカリノゲームの始まりです。
智紀はあの墓場に再び来ていた。あれから、1年が経っているのにもかかわらず、墓場は、昔のままだ。ほとんど変わっていない。その墓場に、8人の墓石が追加されていた。あの・・・ヤミノゲームをした8人である。陰はまだ見つかっていない。行方不明だ。それにしても、あの時の陰はおかしかった。狂っていた。壊れていた・・・。
智紀は花瓶の中の古い水を新しい水に取り換えて、枯れた花を枯れていないきれいな花に取り変えた。時刻は4時43分。線香に煙を立たせ、墓石の前に置いた。そして、まだ新しい墓石に水をかけ、手と手を合わせた。
時刻4時44分・・・。
智紀は、すべてのことを終わらせて墓石が並んでいる道をゆっくりと歩いた。しかし、何かに躓いて転んだ。智紀は足をみる。そのとたんに一年前の恐怖が一気に戻ってきた。
「う、うそだろおぉぉぉぉ!?あの老人は死んだんじゃっ!?」
智紀の両足をつかんでいるのは、普通のニンゲンの手だった。何一つおかしな点はない。手だけに関しては。しかし、その普通の手が地面から生えてきて、智紀の両足をつかんでいるのだ。ものすごい力で。そして、抵抗する間もなく、智紀は地面の中へ吸い込まれていった。
時刻は4時44分44秒だった。
智紀は寒気がして目を覚ました。目をあけると誰かがこちらの顔を覗いていた。・・・懐かしい顔と声だ。
「ぅ・・・ん?」
智紀が声を出すと、その人はふうとため息をついた。
「智紀、やっと目を覚ましたか。お前なんで気絶したんだよ。」
「・・・え?っていうか、おまえは・・・!」
そう、目の前にいるのはあのヤミノゲームをしていた9人だ。生きている。みんな生きている!しかし、そう思うのもつかの間だった。あり得ないのだ。一度死んだ奴らが生き返るはずがない。そんなこと・・・非論理的だ。しかも、陰もその9人の中にいた。絵を描いていた。
智紀は陰を睨んだ。陰はそれに気づいていない様子で、絵を黙々と描き続けている。今は夜だ。それに、寒い。こんな夜に墓場でいったい・・・。
剛志は顔を軽く顰めた。
「なんだよ。何がおまえは・・・!だよ。それより、早くやろーぜ。チーム決めるためのじゃんけん。」
「「おぉーー!!」」
陰と智紀以外の皆が大きな声で返事をする。それが墓場全体に響いた。・・・何だか嫌な予感がする。そう、ヤミノゲームをやった時と同じ・・・。少し違うがそれは、智紀が気絶したということになっているからであろう。・・・タイムスリップしたのか?
智紀は戸惑いながらもじゃんけんをした。陰も一応絵を描くのをやめ、じゃんけんをした。