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あやかし吉原 ~幽霊花魁~  作者: 菱沼あゆ
第三章 のっぺらぼう

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のっぺらぼう

 

「おい、桧山はどうだった」


 吉原の帰り、那津が道具屋の前を通ると、隆次が声をかけてきた。


「どうもこうもいつも通りだが。

 やけに桧山を気にするな」

と言うと、そういうわけじゃない、と言いながら、隆次は台の上の本に視線を落としていた。


「覗き女が扇花屋に出るそうだ」


「いろいろと忙しいな、あの見世は。

 幽霊花魁に、辻斬りに覗き女に、のっぺらぼうか」


「辻斬りとのっぺらぼうは関係ないだろう」


「どうかな」

と隆次は言う。


「辻斬りはともかく、のっぺらぼうは関係あるかもしれないぞ」


「どういう意味だ」


「あの小平とかいう同心。

 どうも昔、見たことがある気がするんだ」


 隆次はもちろん、小平を以前から知っていたようなのだが、面と向かって話してから、何かが気になるようだった。


「昔?」

「……吉原に居た頃だな」


 顎に手をやり、隆次は考え込む。


「あの男、吉原は苦手だと言っていた」


「そんなの俺も苦手だ」

と言うと、隆次は笑い、


「そんな男はお前くらいだ」

と言った。


「美しい場所だ、吉原は。

 なにもかも偽物だからこそ、美しい」

と遠い昔を思い起こすように隆次は目を細めていた。


 恐らく、明野の居た頃の吉原を思い出しているのだろう。


「桧山以外にも一流の遊女は居るぞ。

 お前もたまには遊びに行ってこい。


 ああ、一応、一度、桧山のところに登楼しているから他には無理か」


 吉原では、ひとりの女にしか通えないことになっている。

 浮気をしようものなら、誰であろうと、恐ろしい制裁が待っている。


「吉田屋の愉楽ゆらくとか。

 ちょっと気が強すぎて、桧山に喧嘩を売るのが玉にきずだが」


「あの桧山にか?」

 本当に吉原は恐ろしいところだと那津は思った。




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