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外伝 赤と青

作者: 夢野月都

赤と青の生い立ちを描いた作品です。



ハーフエルフの使い魔はスライムです~異世界転生地は3万年先の未来~https://ncode.syosetu.com/n5127fg/

こちらのスピンオフ作品になります。


よろしくお願いいたします。


 神と鬼、両方の力を宿すその部族は、今もこの世界のどこかに住むという。


 天井から吊らされた産綱を掴む母は、声を出すことを許されず歯を食いしばった。

「うっ、んーっ!はーはーはーはー」


 オンギャーオギャーオンギャー


 #鬼神__きじん__#が住むレイン村で産声をあげたのは、双子の姉妹、その姿は瓜二つだったが鬼神としての特徴は持ち合わせてはいなかった。


「おー、かわいい双子の姉妹じゃ」


「おっ、こっこれは」

 いく人もの赤子を取りあげてきた老婆が天を仰ぎ、今ここで産まれた赤子を、母親の視界から隠した。


「奥方様、お生まれになった、赤子には……うっ」


 ーー老婆は感動とは違う、恐怖の涙を流した。

「奥方様、何か秘密をしておりませぬか?」

 母親は人間との間にできた子を身ごもったことを隠し通してきた。


「いえ……なにも、どうしたのです? 可愛らしい泣き声で泣いておるではないか」

 布団の上で横たわる母は我が子の様子を目にすることを心待ちにしている。


「奥方様、申し訳ございませんが、赤子は預からせていただきます」

 老婆の気持ちは複雑、二人を両手に抱え部屋を出た、連れ去ったのだ。


「何を言っておる、待ちなさい、私の子です! 待ちなさい!」

 悔しさがこみ上げるとともに、我が子を一目も見ずに引き離され引き裂かれる心、産後床から動けなかった母親は手を伸ばす、産まれたばかりの赤子は産みの親から引き離なされた。


「私の赤子を! 待ちなさい!」



 デーモン、いわゆる鬼神族は黒髪に単角という特徴を持つ一族で、ここで産み落とされた双子は、同じ血を分けた二人にはその特徴は無かった。

 赤い髪赤い瞳、青い髪青い瞳そして角はなかった、それは何を意味したのか未だにわからない。


 奇形それゆえ、その後は鬼神族の中でも悪魔の子として、山奥で隔離され老婆に育てられた。




ーーーーそれから5年老婆は亡くなった。

「おばあ様! おばあ様!」

 赤と青は老婆の頬に優しく触れ、身を知る雨が辺りを包んだ。


「お姉さま、お母様はどんな方か知っています?」

 物心がつき始めた青髪のエメリは母という存在を探し始めている。


「わからない、私達には親はいない、さぁ稽古をつけるのよ」

 いつも冷静なアメリは自分達の生い立ちを誰かに確かめることもなく、いつも強く生きた。


 ーーーアイャ! トゥー!

 ーーーーキン! カキン! キン!

 2人は毎日休むことなく、槍と剣を交えていた。


 鬼神族の極一部の者は生まれつき特殊能力「ダークディメンション」を持っている、だが未だかつて使えた者はいない伝説の話だと伝えられた。

 その能力ダークディメンションは、暗黒の次元から天に雷を呼び起こし、地に炎を宿し、次元を超える究極の魔法だという。しかし角の無い二人にその能力は無いと思われていた。



「森羅万象の神よ、輪廻転生の鬼よ、闇に覆われし我が鬼神よ、天に雷神を地に炎神を目覚めたまえ! ダークディメンション!」

 毎日エメリが寝入った深夜、アメリは天に手をかざし、庭で瞑想に入りいつもこの呪文を唱えていた、しかしいつも何も起こらない、事実潜在能力は持っていなかった、そのたびに肩を落としエメリの眠る部屋へと戻り眠るのだ。

 この能力だけが鬼神族との繋がり、そして母を探すための唯一の手段だと。


 いつでも冷静なアメリは一生懸命エメリの母親役として見つめた。



「エメリ! どこへ行ったの?」

 ある日、目覚めると、エメリは姿が見当たらなかった、アメリは小さな体で走った、山を下り鬼神族の村へと。



「赤髪の角なし! もしやお前は数年前に産まれた悪魔の子」

 村に着くと、最初に会った老人にこう言われた。


「エメリは知りませんか? 青の髪の子です」

 アメリは焦ったように老人に問う。

「まさかあの青の悪魔もこの村に来ておるのか?」

 老人は手を合わせ、天に祈り始めた。

「あー神様、このレイン村の鬼神族を悪魔からお守りください」


 


「赤の悪魔だ! ひっ捕らえい! こやつらを生かしておいては災いが起こる」

 いまだ5歳の女の子に容赦ない仕打ち、なんの罪もないアメリは捕らえられ、長老の家の庭まで連れて行かれた、するとそこには捕らえられたエメリが後ろ手を縛られている。

「エメリ! どうしてここに?」

「お姉さま……お母様を探しに」

 エメリは呟いた。

「私が悪いの、ごめんなさい……」


 

「早く、殺せ!」

 


 アメリは怒りに震えた、エメリ、レメリに対してではなく鬼神族に対してだ。


 アメリは歯を食いしばる。

 両手の拳を握る、怒りに手は震え、髪は逆立ち、赤くオーラを纏い俯いたままゆっくり呟いた。


「「おーお」」

 周囲がざわつく。


「森羅万象、森羅万象……森羅万象の神よ、輪廻転生の鬼よ、闇に覆われし我が鬼神よ、天に雷神を地に炎神を目覚めたまえ! ダークディメンション!」


「何を言っておる!」


 空には黒雲、霆が迸り、炎の竜巻が舞い上がる。


 メキメキバキ! ブフォッ! ズゴーン!


 一瞬の間に辺り一面が焼け野原になっり、村人を殲滅させてしまったのだ。

 その村には母も居たはずなのに。


「お姉さま……」

 そこに残ったのは、アメリとエメリの二人だけだ、アメリは透き通る赤い髪の毛をたなびかせ青髪のエメリの手を引きその場から立ち去った。


 赤くたなびくその髪の持ち主は、たったひとり、青髪の少女の憧れになった。


 それから数年あてもなく、二人は世界をさまよい歩いた。





「赤と青の髪の持ち主よ、我が城に仕えぬか?」



よろしければこちらもよろしくお願いいたします。


ハーフエルフの使い魔はスライムです~異世界転生地は3万年先の未来~https://ncode.syosetu.com/n5127fg/

こちらのスピンオフ作品になります。


よろしくお願いいたします。

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