女の子とお出掛け 2
なぜ、こんなことになっているんだろう。
僕は今、彼女を押し倒していた。
「何で、あんなど真ん中で……止まったの?」
僕は息が上がっていた。
普段運動をしない僕が、生まれて初めてといえるスピードで走ったのだ。
息も切れるというものだ。
「どうしたの」
息切れを起こしている僕とは違い、彼女はとても落ち着いた様子だ。
何故彼女はこうも落ち着いているのか。
「和田さんは死ぬつもりなの!?」
「死ぬつもりはないわ」
「ならどうして!」
僕と和田さんのすぐ隣を電車が通る。
「ああ、なるほど。あなたが必死になった理由が分かったわ」
「えっ?」
そりゃ誰だって、知り合いが電車に引かれそうになったら必死になるだろう。
「どうやら、まだまだこの世界の事を知る必要がありそうね。
こんなにも身近に危険があるんだもの」
僕は予想だにしなかった答えが頭に浮かび混乱する。
彼女は僕の体を押しのけ、寝ていた体を起こす。
僕も立ち上がり、彼女の方を見る。
「もしかして、知らなかったの? 電車」
「でんしゃ……。あれは奴隷を乗せる乗り物なのね」
「ど、奴隷!?」
何がどうして、和田さんの口から奴隷という言葉が出てきたの!?
「奴隷ではないの? 確かに奴隷にしては綺麗な格好をしていたけれど。
もしかして、この国には貴族はいないと聞いていたけれど、あれは身分が高い人が乗る高級車?」
「えっと、お金を払えば誰でも乗れるよ」
「そう……。でも馬車よりも危険ね」
彼女の視線は電車が通り過ぎ去って行った方向を見ている。