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異世界の魔女の探しモノ ーmemoryー  作者: 夜虎
呼び出しは告白とは限らない
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女の子の家です

彼女に連れてられてきたのはまたもや、あの空き部屋だった。

嫌な予感しかしない。

途中で天使が乱入したりしないよね。

天使と仲良くなれるのならまだしも、険悪な雰囲気になるのは避けたい。


ところが、彼女は空き部屋の前で立ち止まると、来た方とは真逆に方向転換して歩き出した。

僕は訳も分からず、ついて行くことしかできなかった。


結局学校から出てしまい。

向かった先は、大きい家? 屋敷? だった。

この家ってもしかして……。


「さあ、入って」


彼女の先導の元、家の中へと入って行く。

見た目からして、お金持ちの住んでいるような家だと思ったら、家の中は豪華だった。

玄関から、やけにキラキラしているし、廊下にはいかにも高級な壺が置いてある。

見た目で期待を裏切らないんだな。


「お、お邪魔します」

「この家、今は私しかいないから、気にしないでいいわ」


やっぱり、予想的中か。

この豪華な家は彼女の家だった。

まさか、僕が女の子のお家に来ることになるとは……。


通されたのは寝室だった。

この部屋ってまさか、彼女が普段使っている部屋?


「そこの椅子にでも座って」

「は、ハイ」


これはヤバいぞ。

天使に呼び出された時と同じ、いやそれ以上に緊張する。

一つ屋根の下、この広い家に彼女と二人。

ドキドキしないわけがない。

これが天使だったらよかったけど、それはそれで僕の心臓は大変なことになっていただろう。


今座っている椅子も高価なんだろうなと思うと、今すぐ家に帰りたくなる。

僕は、絶対場違いなところへ来てしまったんだ。


机を挟んで向こう側の椅子に同じく彼女も座る。


「今からあなたに話すことは全部本当のことよ。疑うことは無意味だから止めておいた方がいいわ。

とても信じられるような話ではないけれど」

「わかりました」


ここは素直に頷いておく方がいいんだろう。

普段使っている僕の部屋とは、天と地ほどの差があるこの部屋は、全然落ち着かない。


「まず、私は人間じゃないわ。魔女よ。本当の名前は和田 氷華じゃない。

真名は、力を持っているからやすやすと教えることはできないけれど」

「えっ!?」


まじょ、魔女……。魔女!?

魔女ってアニメとか漫画とかに出てくるような魔女!?


「嘘ですよね? だって魔女なんて存在するはず――」

「魔女は存在するわ」


僕の言葉を遮りピシャリと言った。

彼女の目は嘘を言っているようには見えない。


「私は今魔力が使えないから、私が魔女だということを証明することはできないけれど。

とりあえず、納得してほしい」

「わ、分かりました」


納得しない事には話が先に進まないんだろう。

魔力が何なのか、魔女というのは本当なのか、分からない事が多いけれど、僕はとりあえず頷くことにした。


「じゃあ続きを話すわ」


彼女はとある目的の為にこの世界にやって来た、異世界の魔女らしい。

その目的の為に学校にいて、人間の協力者を求めているようだ。

この世界のことはこの世界の住人の方が知っているからだと。

僕に協力者になってほしいと彼女は言った。


「私の目的は探し物よ。大切なモノ。何処にあるか、形や色は分からないわ。

でもそれを私の世界に持ち帰らなければならない」

「目的は分かりました。

その何処にあるのかも、形や色も分からないような物を、どうやって探すんですか?」

「手当たり次第よ」

「はぁ……」


手当たり次第って。

そんなんじゃいつまで経っても見つけられないんじゃ?


「でも、どうして僕に協力を求めるんですか?」

「それは私に掛けられた呪いに関係しているわ」

「呪い!?」


魔女だというから魔法とかは想像していたけど、呪いという言葉まで出てくるとは思っていなかった。

確かに魔法があるんだから、呪いがあってもおかしくはない。

けど、彼女に一体どんな呪いが掛けられているというのだろう?


「不思議に思ったんじゃないかしら。私の事を覚えていないことに……」


僕は思い当たる節があるため、一つ頷いた。


「一日経つ毎に人の記憶から私に関する記憶が消える。それが私の呪い。

きっと、右も左も分からない異世界で、私一人で探させる為、協力者を求められないようにする為ね。

でも、あなたは覚えていなかったものの、完全に記憶から消えていたわけではなさそう。

図書室で私に、会ったことがないかと尋ねたわね。


つまり、覚えている範囲には私に関する記憶はないけれど、きっかけさえあれば、思い出せるのではないかしら。

そう、忘れている状態ね」


忘れている。

呪いのせいであれ、僕の記憶から彼女の事が消えていた。

初めての事だった。

ずっと、この記憶力に苦労してきたから。


「呪いでは完全に頭から抜け落ちてしまうけれど、あなたは違う。

あなたに協力を求めるのはそれが大きいわね」


なるほど、探しモノをするならその場所に詳しい人に協力を求める方がいいだろう。

記憶力のいいせいなのか、それともたまたまなのか。

僕は完全に忘れないようだから、僕に協力を求めたわけか。


「もし協力してくれるのなら、目的が達成されればあなたの願いを魔法で叶えてあげるわ。

もちろん、魔法は便利なだけじゃないから、できないこともあるけれど。

大抵のことならできるんじゃないかしら」

「願い……」


魔法か。

いやいや、でも面倒事に首を突っ込むのは平和主義の僕としては、あまり乗り気にならないかな。


「まあ、まさか魔女、この世界に来た目的、呪いの話を聞いて断るなんてしないわよね。ここまで聞いてしまったし。

それに女子生徒が困っていて、助けを求めているのに、それに答えないなんてそんな落ちぶれた人間ではないわよね」


彼女の冷たい視線に僕の頭は真っ白になる。

まさか、ここまでベラベラ喋ってたのって……?

僕をハメる為?


「そんなっ!」

「断っても構わないわ。それなら一人で探すだけよ」


そんな風に言っておいて、断っても構わないなんて、彼女は卑怯だ。

そんな事言われたら、断れないじゃないか!

それにどことなく、彼女の纏う雰囲気が寂しさを表しているように感じる。


「分かった。協力するよ」


彼女の先ほどの話、僕が協力すれば願いを叶えるという。

正直、魔女とか異世界がどうのとか、信じられるような事じゃないけど、彼女がそんな冗談を言うような人には見えない。


考えを巡らせていると、僕は一つの願いにたどり着く。

僕は、彼女に記憶力がいいことを話した。


「それで?」

「それっていいことかもしれないですけど、辛い過去も忘れないんですよね。

だから、いつか時間が過ぎれば忘れるかなって思ったんですけど、魔法で記憶が消せるなら、お願いしたいです」


なるべく暗い雰囲気にならないように僕は笑って言った。

中学校の頃を思い出すと、記憶力がいい事で随分と苦労したし、嫌な思いも沢山した。


「……分かったわ。探しモノを見つけることができれば、あなたの辛い記憶を全部消してあげましょう」

「ほんとですか!? でも小林さんは僕の記憶を消すのに失敗してるみたいですけど」


恐らく空き部屋で魔法を使って、僕の記憶を消そうとしたんだと思う。

でも結局僕の記憶は残ったまま。

僕の記憶力と魔法では僕の記憶力の方が勝ってしまったようだし、大丈夫なのかな?


「それは問題ないわ。元々あかりは記憶操作の魔法は苦手としているし。

私が魔法をかければ、いくら記憶力がいいからって効かないはずはないから」

「分かりました。僕はあなたを信じます」


僕の信じるという言葉に彼女は眉を寄せた。

でもそれは一瞬の出来事だった。

彼女はすぐに無表情になった。


「じゃあ、情報交換をしましょう」


僕の方は記憶力がいい事以外に特に話すようなことはなく、殆ど彼女の話で時間が過ぎて行った。

余談だが、彼女の持っていた本は、魔導書だったらしい。

買おうとすると、結構お値段がかかるそうだ。

僕はあの本に触れなくてよかった、と内心ホッとしていた。




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