また呼び出されました
放課後。
昼休みは図書室に行く事ができなかったから放課後に行く事にしたのだ。
「失礼します」
彼女と会った後にとあるファンタジーのラノベを借りていたのだ。
それを返して、次読む本を探さなければ。
ん? 彼女?
彼女って誰だ?
「ここで、誰かと会っている?」
でも誰だ? 誰と僕は会ったんだ?
ラノベが置いてある本棚に向かって歩いて行く。
ふと、机に誰かがいることに気が付く。
「あの人は……」
今朝、空き部屋で天使に疑われている所にやってきた人だ。
僕が消されそうになったときに助けてくれた、確か氷華様って呼ばれてたな。
彼女は本を読んでいるようだ。何の本だろう?
背後から近づき、覗きこんでみる。
僕にはよく分からない文字の本だった。
どこの国の言語だろう?
「背後に立つのなら一言声をかけたらどうなの」
彼女は本を閉じて立ち上がった。
そして僕に鋭い視線を向ける。
「ごめん! 少し本の内容が気になっただけなんだ!」
僕は素早く彼女から離れた。
彼女は本を片手に持ったまま、図書室を出ようとしていた。
やっぱり僕は彼女の視線が少し怖い。
でも、僕は彼女の背中に声をかけた。
「ねえ、待って。僕、もしかしてここで君に会ったことない?
いや、違う。間違えた。
君と僕はここで出会ったことがある?」
空き部屋では彼女に会っている気がして、図書室で誰かと会ったことがあるような気がするから、きっと僕はここで彼女と出会ったんだ。
「そうね。出会ったのはもっと前だけど」
「やっぱり! おかしいと思ったんだ。
誰かと会ったような気がしたけど、覚えてないし。
空き部屋で、君は僕と会ったことがあるみたいに言っていたし……」
「あなた、覚えているの? 空き部屋で起こったこと」
「えっ、覚えてるって? そりゃあ今朝の出来事だもん。さすがに忘れられないよ」
僕は苦笑交じりにそう答えた。
彼女は細い眼を少し開いていた。
「私の事を覚えているの? まさか、あかりの魔法が効いていないとでもいうの」
「えっと、図書室で会ったかもっていうのは、予想だったんだけどね。
空き部屋のことは覚えてるけど」
「そう……」
彼女はそう呟くと、腕を組んで黙り込んでしまった。
僕は何もすることがなくて手を彷徨わせる。
「この後時間ある?」
「じ、時間?」
急に問いかけられて答えに戸惑う。
天使の時みたいに頷いてほいほいついて行って、あんなことにはなりたくない。
ここは断るべきなんだろうか。
「時間ならあるけど」
散々悩んだ末、結局僕は正直に答えていた。
なんとなく気になるだけだ。
別に女の子に訊かれたからとかじゃなく!
「そう。なら、場所を移動しましょう。ここだと誰が来るかわからないわ」
また連れられていく。
僕はもしかしたら間違った選択肢を選んでしまったのかもしれない。