男子から質問攻めをされています
教室に戻ると、勢いよく振り返ってきた男子に、質問攻めを受けた。
「おいおい、何の話だったんだ?」
「まさか告白か?」
「キスしたのか!?」
「嘘だろ!」
男子が数人で詰め寄ってくるから、今にも潰されてしまいそうだ。
これならまだ女の子の方が嬉しいのに。
「ちょっと待って、僕と小林さんの間には何もないよ」
「何も? 嘘付け! 呼び出されるなんてよっぽどの事がないとありえないだろ!」
「ほんとだって! 小林さんが先生に頼まれごとをされたけど、用事があるから変わってくれって頼まれただけなんだ!」
それを聞いた男子は一気に興味を失ったようだ。
ポツポツと離れていく。
「そうか。告白じゃないんだな」
「そうそう。考えてもみてよ。僕が小林さんに告白されるなんて、夢のまた夢みたいな話だよ」
「それもそうだな」
苦笑いを溢しながら言うと、全員納得したように自分の席へと帰っていく。
僕もトボトボ自分の席に戻る。
こんなことがあっても彼らの興味は僕ではなく、天使に向いているのだ。
分かっていたことだけど、少し落ち込んでしまう。
「うー」
僕は大きく伸びをした。
結局あれはなんだったんだろう。
すぐ終わると言われて天使から手が伸びてきて、咄嗟に目を瞑ると、手は少し頭を触れただけで、叩かれることも殴られることもなかった。
目を開けるのが怖くて、そのまま閉じていると、二人は部屋をさっさと出て行ってしまったし。
結局天使が何を勘違いしているのかもわからなかったし。
「考えるの止めよう」
僕はカバンの中に入れてあるスケッチブックを手に取り、ペラペラと捲った。
自然と開けたのは、家で描いた天使の絵だった。
「やっぱり綺麗だなー」
絵の中の微笑んでいる天使と、実物を見比べる。
随分いい出来だと、自分で思うくらいにそっくりだ。
「綺麗だし、可愛いんだよね」
なのに、現実は違った。
2回目とはいえ、天使の素に慣れない。
僕は机に突っ伏した。
「お前らー、もうチャイムなるぞー」
ガタガタと椅子の動く音がする。
先生の声を聞きながら僕は、そのまま授業中寝てしまっていた。