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ふと思いついたのでショートショートを書いてみた  作者: 丸い円


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8/9

普通

お久しぶりです。


今回は少し分かりにくいかもしれませんが、どうぞ。


 青年は異常であった。と言っても言動がおかしいわけではない。ただ普通ではない人生を送ってきたのだ。両親の離婚や宝くじの当選、やっとの事で今の会社に就職した。会社に入ってからもその異常さは変わらない。へまをやって地方に左遷されたと思うと、散歩中に取引先の社長を助け、本社に栄転。昇進したかと思うと、上司の不祥事で減給。青年は疲れ果てていた。


「はあ……」


 大きなため息。青年はビールを勢いよく飲み干した。


「どうかされましたか?」


 隣に座っていた男が声をかける。見かけは仕事に疲れた営業マン、といった風情だ。


「どうもこうもない。俺は悩んでいるのだ」

「それはいけない。病は気からと言いますからね。何にお悩みなのですか?」

「そう簡単に言えるものではない」


 今までの人生のこと。こんな見ず知らずの人に言うはずがない。青年は拒絶した。


「そう言わずに。もしかするとあなたの悩み、解決できるかもしれません」


 そう言って男は名刺を差し出した。


「精神的苦痛解消システム、第一営業部?」

「ええ。我が社は精神的苦痛、つまり悩みの解消を目的としています」

「ほお……」

「しかも、曖昧なものではなく、独自の研究施設で開発した薬を使います」

「薬? そんなものがあるのか?」

「はい、まだできた直後なので公表はされていませんが」

「で、それは俺に効くのか?」

「もちろんです。お試しなさいますか?」

「そうだな、無料というのなら試してもいいが……」

「初回ですので無料で結構です。では、悩みをお話ください。それによってお渡しする薬が変わりますので」


 青年は今までの人生と、悩みを男に話した。


「なるほど、そんなことが……わかりました。その悩み、我が社が解決いたしましょう」


 その後、世間話をし青年は男と別れた。


 数日後、青年の自宅に小包が届いた。中には数本の瓶と、手紙が入っていた。


「初回のお試し分です。効果が見られるようなら追加でご注文ください」

「よし!」


 青年は早速1本目を開けて飲み干した。今日も電車の事故で会社に遅れたところなのだ。効くなら早く試したい。


 飲んだ直後は何もなかったが、朝起きて会社行く時から違いが分かり始めた。まず、電車では何も起こらない。事故も起こらなければ、運転手が寝坊したりもしない。有名人に会うこともなかった。会社でも同様だった。ドアを開けた途端上司とぶつかることもなく、極めて普通な生活であった。


「やったぞ!」


 青年は喜んだ。


 だが、次の日は効果が切れたのかいつも通りの生活に戻ってしまった。人身事故で電車が止まり、仕方なくバスに乗ると腰の悪いおばあさんがいて、家まで付き添って行くと、お礼にとリンゴをもらい、そのせいで会社には遅れた。


「効果が切れたのか。もう一本飲もう」


 青年は2本目を開けた。そのようなことが数日続き、お試し用がなくなった。時間は短いが、効果に満足していた青年は追加を購入した。


 やがて、徐々に効果時間が短くなり、青年は貯蓄も切り崩し、薬を買い続けた。そんなある日、あの男が訪ねてきた。


「どうしたんです?」

「あなた様が余りにも薬を購入されますので……」

「だめなのか?」

「いえ、しかしながらこの薬を買われるのはあなたしかおられず、あなた一人のために生産ラインが狂うので上司がもうやめろと」

「つまり、もうこの薬はない?」

「ええ。申し訳ありません。あなたの買うスピードが余りにも異常だったんですよ……」


ありがとうございました。

わかっていただけたでしょうか。


感想、アドバイスお願いします。

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