悪夢
ショートショートは初めてです。よろしくお願いします。
「ふぅ、疲れた」
夜中の12時、俺は会社から帰宅した。妻はもう寝ている。郵便受けを開け、中身を確認する。ソファに座り、郵便物の整理をしていると、広告の他に茶色い封筒が入っていた。
「なんだろう」
単純に疑問を覚え、封筒を開けた。中身を見て俺は震え上がった。身体中に寒気が走る。飲もうとしていたビールをやめ、急いで布団に潜り込んだ。
残業で疲れた体にこれ以上ストレスはかけたくない。こんな時は寝て忘れるに限る。そう思い、俺は眠りについた……
体が飛び跳ねた。
やつが追ってくる! 大変だ!
逃げなければ。あの訳のわからない言葉と数字ばっかり言う、恐ろしい怪物から。
俺は慌てて扉を開けるとサドルに跨った。ペダルに足をかけ、勢いよく漕ぎ始める。
「どうしたの?」
ほら来た。
後ろから声をかけられた。俺は顔を引きつらせて震えながら、全身全霊でペダルを漕いだ。捕まるわけにはいかない!
戦う? 冗談じゃない。俺は何も持ってないんだぞ。
「こんな急にどうしたの?」
近いぞ! いそげいそげ。
だが、漕げども漕げども前に進まない。風景が全く変わらないのだ。
なんでこんなことになったんだ! 俺が何かしたか? 確かに言うことを聞かなかったのは悪いけどさ。仕方ないじゃないか、やめられないんだ。
「夢でも見てるの?」
夢だったらどれだけ嬉しいことか! だが、こんなにリアルな夢なんてあるわけないだろう!
俺は恐怖で叫びながら、狂ったように漕ぎ続ける。回転数は相当な数に達しているが、一向に逃げ切れる気配はない。
「ねぇ、落ち着いてってば」
落ち着いてなんていられるか!
足が悲鳴をあげるのも構わずにペダルを踏む。もはや、足が勝手に動いているような感覚だ。
「あなた! 良い加減にしなさい! いくら健康診断の結果が届いて、肥満だって言われたからって、そんなに必死にやらなくても良いでしょう。こんな時間に」
へ?
そう言われて自分が乗っているものに目をやる。俺が必死に漕いでいたのはエアロバイクだった。
オチ、わかっていただけましたか?
良ければ感想、アドバイス、ブックマークお願いします。