レジェンドジエンド 最終弾
『さぁ、決勝戦を迎えました!【レジェンドジエンド】第三回公式大会!まさかこの大会がここまで長く続くとは誰も予想していなかったことでしょう!』
だだっ広い草原のような世界、その全てに響き渡る実況の声。音の大小に依らずプレイヤーの全てへと情報を届ける事ができるシステムメッセージだ。
けれど、この戦場にはたった2人のプレイヤーしか存在していない。
「まさかキミと決勝で戦えるとはね、遊利クン」
長い白髪を一つ結びにした女性——サリエル★ミは、眼前のプレイヤーにデッキを見せつけながら声を掛ける。
「こちらのセリフだよ。貴女は生粋のファンデッカー。尊敬できるプレイヤーではあるけれど、ここで出逢うとは夢にしか思わなかった」
没個性の黒髪黒目……完全なるデフォルトアバターのプレイヤー、遊利はそう返事を返した。
サリエル★ミが見せつけたデッキ。そこには【賢者サリエル】のイラスト違いSSRがその存在を誇示していた。けれど、今は完全なる【デウス・エクス・マキナ】一強環境。自在にカードのテキストを設定できるのに、わざわざ既存テキストのカードを使う意味などない。
故にファンデッカー。【デウス・エクス・マキナ】以外のカードを入れている時点で、本来ならこの戦いの土俵に上がることすら許されない落第者なのだ。
そして、それは遊利とて同じこと。
「夢、ね。"メルたん"のファンであるキミらしいセリフだ」
「そんな余裕ぶっている場合なのかな?この場は【レジェンドジエンド】の頂点を決める戦いだ。このゲームはそこまで知名度のあるゲームではないけれど、多くのプレイヤーが戦いの決着を今か今かと待ち構えている。早くカードテキストを考えないと遅延行為として扱われてしまうよ」
「問題ない、私のデッキは既に確定している。キミはどうだい?」
「——なるほどね。わかった。それなら僕もこれで確定だ」
【レジェンドジエンド】の試合前には必ず【デウス・エクス・マキナ】の効果を設定する時間が設けられる。ファンデッカーである遊利やサリエル★ミのデッキにおいても当然ながら【デウス・エクス・マキナ】が搭載されている為、普通ならここまでの短期間でデッキビルディングが終了する事などない。
なにせ対戦相手は【賢者サリエル】。そして【夢見る少女メル】を主軸とした構築であることがわかっている。それなら一部の【デウス・エクス・マキナ】の効果をピンポイントメタに寄せる事だってできるのだから。
そしてそんな戦いが無粋である事も2人は理解している。だから彼らはこれまでに用いてきた基本構築のデッキで確定を行ったのだ。
672 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
相手がサリエル入れてる事がわかってんだから
サリエル起点でいくらでも盛れるのに
673 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
[試合開始時]サリエルをデッキに入れてるプレイヤーは敗北でオワオワリじゃん
677 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
エアプの癖にデッキ構築語るなよ
レジェンドジエンドは最早そんな"領域"じゃねーんだよ
678 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
決勝戦だけ見に来ました
レジェンドジエンドの最新環境ってどんな感じなの?
679 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
クソゲーと聞いて
680 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
片方は夢現かな
681 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/
ネタデッキが決勝まで行ったの??
【デウス・エクス・マキナ】。カードゲームの常識を覆す、『エース』にして『ジョーカー』。その全能性はゲームを粉々に打ち砕くようにしか見えないが、実は文字数制限という一定の秩序が存在する。
だからただひたすらに相手を殺す文面を長々と並べ立てる事は許されない。如何にシンプルに、そして完璧に相手のメタを封殺する事ができるかが重要なのだ。
『決勝にまで辿り着いた2人がエンジョイ勢?ネタデッキ?そんな訳がない!一時期炎上したタイトルと言うことで初めて見に来られた方も多いようですが、にわか知識で語らないで頂きたい!ボクぁこの頂上決戦に感動すら覚えて——』
『ちょっとちょっと!観客に喧嘩を売らないでいただきたい!』
『自由に語っていいって言うからこの解説席に座ってるんですよ!邪魔しないでください!』
721 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
卍さん、やっぱりクソゲーが好きなんだな……
722 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
放送事故かな?
723 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
ブチ切れてて草
724 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
レジェジエガチ勢すこ
歯に衣着せず、好き勝手に語り散らす自称レジェジエ専門家。迷惑極まりない言動をしているようにしか見えないが、これもまたこの大会の風物詩。運営と解説の殴り合いに期待している視聴者も多く、大会の知名度向上には大きく貢献している。ユーザーの獲得に繋がっているのかはさておき。
そんな喧しい外野の存在など無かったかのように、2人はデッキを高く掲げる。示し合わせている訳でも無いにも関わらず、そのタイミングは完全に同時。
『伝説開始!』
その掛け声と共に余りにも唐突に幕を開ける最終決戦!同時にだだっ広いだけの草原だった競技場は一瞬にしてその姿を変える。
稲妻のようなジグザグが2人の周囲を取り囲むように円を描くと、戦いの舞台は周囲の空間とは完全に断絶され、幾何学的なマジックサークルが周囲に刻まれていく。
「【暗号回路:ジェネシス参式】!」
「【夢現式】!」
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暗号回路:ジェネシス参式 (deus ex machina) COST:0
効果:
[ルール]このカードはデッキから任意のタイミングで発動できる
[ルール]試合中、自身の用いるカードテキストはジェネシス参式で記述可能
[ルール]ジェネシス参式の記述ルールはドメイン『regcode.am』を参照とする
[ルール]0
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夢現式 (deus ex machina) COST:0
効果:
[ルール]このカードはデッキから任意のタイミングで発動できる
[ルール]試合中、カードの発動に際し口頭でテキストの追記記述可能
[ルール]相手の記述をテキストに含むカードの効果を任意で獲得可能
[ルール]0
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857 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
外部参照してて草
858 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
当たり前のようにターンを無視してカード発動するな
859 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
カード効果の口頭追記とかいうパワーワード
860 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
試合前に効果決めるだけじゃ満足できないからな
861 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
異世界のカードゲームかな?
「やっぱり【夢現式】か、メル使いならその式を選ぶとは思っていたよ」
「【夢現式】はメタられやすいのだけど、さすがにメインからその手のメタカードは入れてこないか」
「キミとの戦いにそんな無粋なモノは持ち込まないよ」
意味不明のやり取り、試合開始直後にデッキから飛び出すカード達。それらは【デウス・エクス・マキナ】で創造されたいわゆる『オリカ』でありながらも、広く一般化されたカード名を持っていた。
『ご存知の通り、カードテキストには文字数制限が存在します。その文字数制限を突破するために用いられたのがあれらのテンプレートカード。結局自由にカードを作れるとしても効率の良い選択肢は狭まっていくものですし、誰かが使ってるのを見れば皆が使い出すんですよね』
日本語よりも圧倒的に文字数を削減した上で多大な情報量を叩き込む【ジェネシス参式】は【レジェンドジエンド】では比較的メジャーな暗号文だ。破棄されない、無効化されないというようなあらゆるカードに付随させるべきテキストを1文字に簡略化させ、独自テキストも短いコードで完結させられる、いわば【レジェンドジエンド】に特化した専用の言語。
『一方【夢現式】は相手が暗号文を使用してくる事を前提として、その効果に相乗りする為のテンプレートですね。【ジェネシス参式】のルールを記述しなくてもいい分、他のルールを書き込める。便利ではありますが、相手の効果を参照するというのは諸刃の剣です』
『任意で獲得可能』と示されているが、強制的に獲得させるルールを仕込めば一方的にデメリットを押し付けることもできる。他のカードで補強することもできるが、テキスト量の節約としては本末転倒。効果を試合中に後付出来る事も踏まえると、メタられなければ常に相手の戦略の上を行くことができる有用な記述ではあるけれど、リスクの高いカードだ。
と、その解説担当の口ぶりに納得した様子の実況担当だが、ふと疑問を呈する。
『しかし、カードはデッキから何枚でも発動できる。確かにテキストの節約をするのは大事ですが、補強のテキストを使って封殺ルールを叩き込んだほうが良いのでは?口頭執筆みたいなルールは2枚目のカードを使ってでも取得すべきルールのように思えますが』
『それじゃだめなんですよ。任意のタイミングで発動可能なカードは先行が発動に対する優先権を持ち、そこから交互に1枚ずつ発動していく。つまり最初の一枚目が妨害手の影響を最も受けにくいんです。……そして後攻で夢現式を発動させた遊利選手は余ったテキストで次の一手を封じる記述を行える』
「追加:10」
解説担当の言葉通り、遊利は夢現式に追加のテキストを記述する。【ジェネシス参式】によって書き込まれたその内容は暗号の解読ルールを知らない観客にはまるで理解のできない文面だが——。
『なるほど、そう来ましたか』
『……解説担当さん?』
『【リンクワード】ですよ。デッキに存在する特定の【リンクワード】を含むカードの効果を得るという定型文です。【ジェネシス参式】固有の記述法なので【夢現式】を用いるのであればデッキのカードに【リンクワード】が含まれている筈は無いのですが……まぁ、ジェネシス決め打ちでそういうコンボを仕込んでいたと考えるべきですね」
『日本語でお願いします』
「【夢現式】は相手の記述方法をそのまま利用できる記述式です。つまり本来【ジェネシス参式】以外の相手とも渡り合う可能性があるのですが、彼は相手から【ジェネシス参式】の記述法を奪う前提でデッキのカードを【ジェネシス参式】で記載しているということです」
『……なるほど?相手がなんとか参式でなければ意味の無いテキストを使っていた?と。そして【リンクワード】を使えば通常より多くのテキストを1つのカードに刻むことができる、という解釈でよろしいでしょうか』
『違います、【リンクワード】の本質はそこではない。【ジェネシス参式】のカードが発動した場合、その筆記方法を理解してさえいれば効果を理解することができるでしょう?けれど、デッキのテキストを参照し、そこに書いてあるものとして扱う【リンクワード】を用いた場合、テキストの内容は隠蔽される。参照したテキストを公開しなきゃいけないルールなんてありませんからね』
『はい』
25 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
無効やら勝利やらが派手に飛び交うのかと思ってたのに
めっちゃ地味な戦い方してて笑う
26 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
テキスト非公開系カードゲームやめろ
27 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
アニメではよくある事なんだよなぁ
28 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
相手がオリカ使ってくるだけでも意味わからんのにオリカの効果秘匿してくるの酷い
29 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
ジェネシス参式はメジャーだからな。
決め打ちも成立するのは確かだが、あるいは相手がどの式を使ってくるのか事前に調べてたんだろうな
30 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
試合前のやり取りはデッキを変えさせない為の番街戦術だったのかよ
31 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
君たちよくこの戦いをまじめに見てられるよね
『視聴者のコメントにいくつかありますね。効果無効、という類のカードを使わないのはなぜですか?』
『えっと、それはボクの解説を引き出す為の建前の質問ということでよろしいですか?』
『いえ、純粋に気になったもので……』
『それでもあなた運営ですか!【ジェネシス参式】の始まりの式【ジェネシスコード】をご存知でない???』
『解説してください』
『【ジェネシスコード】は謂わば無限の術式。無効を無効を無効を無効……ループプログラムを延々と走らせることによってカード1枚に必要となる破棄無効や効果無効無効を絶対のモノとして記したテキストです。筆記の際はカードのどこかに『0』を記載すれば成立します。『0』が刻まれたカードはこのループによってあらゆる耐性を持っているので基本的にループを用いない言語による記述では無効化できません』
『なるほど。それでは『0』の刻まれたカードに相手は負ける、と書けば……』
『まあ、話はそう単純ではないですがね。恐らくこのターンで決着が付きますよ』
『まだターンが始まってないんですけど……』
「なるほど、初めからキミは私を仕留めるデッキを握っていた。だから構築の変更が必要ではなかったのか」
「メタの張り合いはカードゲームの華。事前情報を利用してそれを行う事には賛否があるけれど……【レジェンドジエンド】における戦いはバトル開始前に全てが決まる。返せる札はあるかい?」
71 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
三味線行為に構築の共有をドヤ顔で自慢する遊利さんかっこいい
72 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
これまだ0ターン目なんだよね??
73 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
クソゲー定期
74 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
デウス来た時点で引退したけど意味わかんないゲームになってて草
75 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
返せる札はあるかい?とか聞いてるけど効果がわからないから返せる札もわからない
76 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
一体何を見せられてるんだ
77 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
世界よ、これがカードゲームだ
「バトル開始前に全てが決まる、か。言い得て妙だね。なにせ未だバトルは始まってない。開始前のフェイズでカードが延々と乱れ飛ぶのがこのゲームなのだから。そして——もう戦いは終わっている」
「何?」
その時、競技場にカラフルな文字が浮かぶ。
【WINNER:サリエル★ミ】
「【地雷札】か……!」
『【地雷札】?』
『相手の特定のテキストに反応してデッキから起動するタイプのカードですね。今回で言うと【リンクワード】を起点として、なんらかのテキスト効果が起動したのでしょう』
『ちなみにその効果は?』
『非公開情報なのでわかりません』
『何が起こって決着がついたんですか?』
『わかりません』
『このカードゲームほんとに面白いんですか?』
『わかりません』
「いい戦いだった、リベンジの申込みはいつでも受け付けるよ」
「あぁ、次こそメルの力を証明するよ」
「次もサリエルでお相手しよう」
86 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
メル出てきた?
87 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
出てきてないよ
88 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
サリエルちゃんTUEEEEE!!!
89 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
サリエルちゃん出てきた?
90 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
出てきてないよ
91 名前:名無しさん[] 投稿日:20xx/xx/xx
コイツらデッキに入れてるだけで一度もサリエルもメルも使ったこと無さそう




