スピリットコネクト - 6
「さて、そろそろ予定の時刻か」
そう、予告した王都への襲撃日である。私はそこにログインして今度こそプレイヤー達を一網打尽にする予定だ。
「本当はこの前のモンスター襲撃の時点で倒せると思ってたんでしょ?大丈夫なの?」
「今度は大丈夫だ。さすがに私が直々に出れば魔導の基礎を飛ばしてきたようなひよっこには負けんよ」
「……本当ですかねー?」
何やらユーキが掲示板を見ながらつぶやいているが、心配しすぎじゃないだろうか。
「では、行ってくる」
そして私はスピリット・コネクトの世界にダイブし……。
「あいついくらなんでもナメすぎでしょ。掲示板見てないのかしら」
「ふふっ、今から戦場への中継も繋ぎますからお菓子を食べながら観賞しましょうか」
324 名前:アレン[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
トラップの設置完了!
魔導検知型と魔族検知型の魔導銃をあらゆる場所に配置しました!
当然私達の魔紋はホワイトリストに入れてありますよ
起動時には自動的に皆さんの持つ連絡端末に場所の通知が入りますので
チェックしてください!
325 名前:アリス[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
こちら陣担当
王都を囲むように魔力吸収陣を張りましたわ
バカ正直に攻めてくるようならこれでイチコロですわ!
326 名前:レイア[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
同じく、結界張り終わりました!耐久性のチェックもしましたけど
全く問題なしです
327 名前:ミリア[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
土壇場だけど新しい魔導ができたよー
端末に送っとくから覚えといて
単独発動の魔導の中では威力だけなら世界最高の自信があるよん
328 名前:アレン[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
エネルギーストーンも現在ストックが200個ほどあまってます
現在1人1つ持ってると思いますのでこれは儀式魔導に回しますね!
329 名前:ヒューゴ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
こちら防衛担当
10個ほどこっちに回してもらえますか?
542 名前:メリー[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
来ました!王都の南門側に突如出現!かかりました!
「さて、ログイン完了。終わらせるとするか……むっ!?」
なんだこれは、急激に魔力が失われていく……!?まさか、罠か?だが、これくらいなら割る事もできるだろう。そう思い、魔導を発動させようとした所で突然外壁から魔導弾が雨のように私をめがけて集中する。
反射的に結界魔導を展開し弾き飛ばしたが、弾丸の嵐が止む気配はない。もしや、こちらの魔力をそのまま流用しているのか?無視して吸収の罠を割るのが正解だったか。
吸収されつつある魔力を逆に強引に流し込むことによって罠を破壊する。同時に地面に隠蔽されていた陣が光を放ち……大爆発を起こした。結界により爆発の衝撃を受けることはなかったが、思わぬ二重トラップに私は驚愕していた。しかしそれでも銃撃は止まず。
547 名前:メリー[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
魔導式誘爆装置発動確認、標的生存!魔導銃の魔力量は現在95%。
結界を張っているようです。インタラプトお願いします!
548 名前:ヒューゴ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
インタラプト開始します!
549 名前:エドガー[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
結界の解除と同時にでかいのを一発叩き込む!
弾は外壁から絶えず打ち込まれている。ならば外壁ごと破壊すればいいだろう。私は腕を前方に向けて雷撃を放つ。稲光と共に凄まじい雷鳴がなり響くが……壁は無傷。
この威力を防ぐ結界だと?さらに威力を上げた雷撃を撃ち込むべく魔力を操作しようとしていると突然外部から私に向けて魔力が流れてくる。その魔力は私を囲むように浸透すると、私の結界を巻き込んで粉々に割れた。
まずい!雷撃魔導の発動を中断して再び結界張ろうとした私に魔導弾が連続して直撃し、展開が阻害される。どうにかもう一度張り直した所で頭上から声がした。
「くらえぇええ!!」
上を見上げると、太陽が私に向かって落ちてきていた。
560 名前:エドガー[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
直前で張り直されたようだが直撃した!多分もう一回割れた筈だ
561 名前:メリー[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
生命反応確認!まだ生きています!
562 名前:アレン[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
儀式魔導準備!
563 名前:ロイ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
おいおい、ヘルフレアを喰らってまだ生きてるのかよ……
本当に、本当に強い!恐らくこの一ヶ月の間準備に準備を重ねていたのだろう。正直に言って舐めていた。
この無尽蔵に放たれる魔導弾も相当量の魔力を事前に準備しておいたものだろう。先程の太陽と見紛う程の炎も明らかに通常個人で操れるような出力ではない。疑似脳を起動しなければ防げなかった。
私はそのまま疑似脳に結界の維持をさせながらも雷撃を外壁に向かって放つ。雷は結界を圧倒的破壊力によってぶち破り、そのまま外壁ごと崩壊させた。そして残骸をアスポートによって邪魔にならない場所に弾き飛ばし王都へと侵入する。
王都にも銃が張り巡らされていたようで先程までとは比べ物にならない量の弾が私をめがけて飛んでくる。しかし先程までと同じようにはもういかない。
周囲の銃の位置を探知し軽く魔力を送り込んでやるとすぐに弾幕は止んだ。
直後、ビー玉のような大きさの魔導弾が凄まじい勢いで向かってくる。一見すると頼りなさげな大きさだがとてつもない量の魔力を一点に凝縮した破壊力に特化した魔導。恐らくこれが切り札であろう。
565 名前:メリー[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
魔王の周辺の銃が全て同時に破壊されました!
修復は不可能です
566 名前:ヒューゴ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
結界の破壊ができません!先程よりもさらに強固に張られています!
567 名前:アレン[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
儀式魔導発動準備完了、仕方あリません、結界の上から叩き込みます!
568 名前:アリス[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
いきますわよおおおおおお!!!
今まさに私を貫かんと突き進む魔導弾。私はそれを自身の魔力で包み込むようにして押さえ込み、ゲートを通じて身体に取り込んだ。何百人分もの魔力が込められた弾が身体の中で分解され、体内に巡っていく。容量を越えた魔力が外へと散っていくが、無効化はできたようだ。
572 名前:アレン[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
消された……?
573 名前:ロウ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
まだだ、ひたすらに魔導を叩き込め!
少し遅れて炎や雷など様々な魔導が飛んでくるが、先程のものと比べればそよ風に等しい。しばらくそのまま受け続けているがもう他に手立てはないらしい、終わらせるとしようか。
それにしても、本当に驚いた。魔導のまともな操作の方法も知らなかった頃から比べると相当なものだ。これなら今回のVRMMOも成——
「は……?」
気がつくと、私の腹には大きな風穴が空いていた——。
576 名前:アレックス[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
対象の魔紋を解析完了!
端末に情報を送ります!
577 名前:アレン[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
了解!全力斉射!
578 名前:ヒューゴ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
情報受け取りました!行きます!
まさか、これは私の魔導を模倣して結界を抜い
「だから言ったのに。大丈夫か?って」
「まさか一ヶ月であんなに成長しているとは思わないだろう!」
「まあ、そういう意味では今回のVRMMOの目的は果たせたじゃないですか」
「それはそうだが……。それにしても、まさか周波数をあわせてくるとは思わなかったな」
「周波数?それって掲示板では魔紋って言ってた奴?」
「多分それだな。私の結界は外部からの攻撃は弾くが当然ながら内部から外に撃ち込む魔導は通すようにしなければならない。だから私の魔導だけは通すようにホワイトリストを設定してあるのだが……その魔導の癖を合わせられたのだろう。そもそも魔導師と戦うなんてことが今まで殆どなかったから想定すらしていなかったな。魔導師同士はそれぞれ離れた場所にいるから交戦することも殆どないのだ」
「言い訳乙です!」
「ぐぬぬ……ともかく、次はどのような手を打つべきか。結局誰一人キルできなかったが」
「あ、それはもう解決したわよ」
「え?」
720 名前:アレン[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
これでこの世界にも平和が訪れたのですね……
721 名前:ロイ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
魔王がいなければモンスターもおとなしくなるらしいからな
もう俺たちが討伐してまわる必要もないってことだ
722 名前:アンドルフ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
と、なると俺たちもそろそろ元の世界に戻らなきゃな
溜まってた仕事が山程あるぜ
723 名前:アリス[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
戻ったら魔導師様に自慢しなくてはなりませんわね!
724 名前:コンラッド[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
もしかして魔導師様は世界を救うために僕たちをここに派遣したのかな?
725 名前:アレン[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
>>724
まず間違いないでしょうね
411 名前:アンドルフ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
さすが魔導師様だぜ
俺たちもある程度魔導は使えるようになったが
まだまだあのお方には遠く及ばない
もっと精進しないとな
412 名前:メリー[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
よし、じゃあこれから元の世界でお祝いしましょう!
アリス様の屋敷に集合で!
413 名前:アリス[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
ちょ、ちょっと、わたくしの屋敷は最近掃除すらしてなかったので
すごく散らかってますのよ 整理してきますのでお待ちになって
セバス!今から帰りますわ!
414 名前:セバス[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
承知しました
415 名前:エドガー[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
セバスの奴、屋敷の掃除すらせずにずっとここにいたのか
アリス以外の奴が主ならクビどころのさわぎじゃないぜ
415 名前:ヒューゴ[sage] 投稿日:魔導歴xx年xx月xx日
そういう僕たちも人のこと言えたもんじゃないですけどね
――さぁ、帰りましょうか!冒険は一休み
他所の世界だけじゃなくて自分たちの世界でもがんばらないとね!
「――というわけで、あんたが勝っても負けてもなんの問題もなかったのよ。強いて言えば魔王が負けたほうが物語はハッピーエンドに終わるけどね?」
「はぁ……ユーキの策略か?ゲームのバグは多い癖にこういうのは本当に得意なんだな」
「いやいや、私は掲示板にこっそり戦略のアドバイスを投稿なんてしてないですよ?」
「そんなこと誰も言ってないんだが……やってたんだな」
「うぐっ……ですが、私はちょこっとヒントを教えただけ。殆どは彼らがゲームを通じて自分達で掴んだモノです。――大丈夫。これからこの世界は魔導が発展した素晴らしい世界になりますよ」
「そうか……私のやったことは間違ってなかったんだな」
「ユーキもここにいるんだし、次はこっちの世界と共同のMMOなんて作れるんじゃない?地球VSこっち、みたいな」
「もう次の企画の話か?だが、次はもっと対策を練らないとまた似たようなことになるからな。もうすこし先になるだろう」
「でも、いいですね!異世界文化交流!こっちでも準備しておきますからまた連絡をくださいね!」
「あぁ、気が向いたらな。ところでハルカ。おまえはいい加減地球に帰らないのか?転移魔導はとっくの昔に完成してるぞ」
「まだいいわ。あんたを見張ってないとなにをしでかすかわかったもんじゃないしね。向こうには手紙でも送っといてよ」
「そんなに危ないやつに見えるか?私はこれでも世界有数の叡智に長けた大魔導師でな……」
「VRMMOで学んだだけの弟子に負けた癖になにいってんだか」
「いやいや、あれは最初から擬似脳や断界を起動していればだな――」




