事実無職のジョブマスター③
「コンビ、ニャ?」
「一緒に旅をするんだよ。 俺は元の世界に帰りたい、お前は記憶を取り戻したい」
どちらの目的も様々な街を回る事が必要になる。ツカサには琴花が必要だし、逆もまたしかり、というわけだ。
琴花は少し考えて
「いいニャ」
あっさり承諾した。
「えっと……じゃあ、よろしく」
「よろしくニャー」
二人はこうしてコンビを組む事になった。
二人が街で情報収集をしていると柄の悪そうな三人組がツカサに話しかけてきた。
「よお兄ちゃん、珍しいの連れてるじゃねぇか」
珍しいのとは琴花の事だ。猫又は今でもレア妖怪らしい
「……ども」
ツカサが極力控えた返事をすると三人組は笑って
「妖怪連れてるって事は陰陽師だよな、ちょうど後衛が足りなかったんだ」
「ちょっとステ見せて貰うぜ」
一人がツカサの額に指を当てようとした
「……やばっ」
ステータスを見られれば職業が無いという異常がバレてしまう。極力それは避けたい。
しかし気づくのが遅かった。男の指はツカサの額に触れ、視界にステータスが現れる。
ステータスを読んだ男は舌打ちをした
「……ちっ、高レベルだ」
「すまねぇな、忘れてくれ」
そう言って三人組は去って行った。
「……あれ?」
不思議に思っているツカサの後ろでは琴花が手招きをしている。
ツカサは改めて自分のステータスを確認する。
Name・ツカサ
level・72
job・陰陽師
「……陰陽師?」
いつの間にか職業が出ている。ツカサが琴花の方を見ると琴花は得意気に笑う
「妖術、猫騙しニャ」
猫騙しは軽く人を騙す妖術、それを使ってツカサのステータスを書き換えたのだ。
ツカサはステータスを少し弄って
「琴花、お前スキルの方も変えたのか?」
琴花は首を横に振る。
「うちが書き換えたのは職業欄だけニャ」
「でも……」
ツカサ改めてスキル欄を確認する。
スキル欄には陰陽師のスキルが並んでいる。ちょうどツカサのレベルで習得出来る物ばかりだ。
(まさか……)
暫く眺めてツカサは気づいた。
「琴花、職業を剣士にしてくれ」
「……? いいニャ」
琴花が手招きすると職業が剣士に変わった。それと同時にスキル欄も剣士の物へと変わる。
「これは……使えるぞ」
ツカサはニヤリと笑った。