異世界へ③
川に沿って歩いている中で分かった事が二つあった。
まずはステータス画面について。
額の辺りに手を当てると現れるステータス画面、これは「ステータス」と念じるだけでも出るようだ。
因みにHP、MPバーのみを常に表示させる事にも成功した。
次にメニューについて。
ステータスと同じく念じると出るメニュー画面、念じるだけで無くタッチパネルのように操作する事が出来た。
メニューにあったのは
・アイテム
・装備
・スキル
など[Magic specter]と同じデザインだがログアウトの文字は無い。
アイテムや装備はここから出し入れ出来るようで、ツカサは入っていた初期防具を装備した。
寝間着でうろつくよりはマシだろう。
因みにスキルの方は職業が無いからか一つも無かった。
その幾つかの事を総合してツカサは考える
(やはりここはMagic specterの世界)
そうでしか説明出来ない。
片手剣を軽く振り回す。 この重さなら大丈夫か。
近くにあった草で剣の切れ味を確認して鞘に収める。とりあえず町にむかわなければ。
歩き出そうとしたツカサの視界に一つのHPバーが現れた。
ツカサは唾を飲んで鞘から剣を出す
「……いきなりかよ」
ツカサの目の前に現れたのはライオンくらいの大きさの黒猫。バーの上に書かれた名前は猫鬼。
猫鬼はリュンクの森のエリアボス。それでも現在72レベルのツカサから見れば苦戦する筈も無い相手だ。
それが[Magic specter]での話ならば、だが。
結構なスピードで迫り来るのは黒いライオンにも見える妖怪。
「やばっ……」
攻撃を避けると代わりに後ろの大木がへし折れた。それがツカサの恐怖を増幅させる。
(このレベルなら大丈夫……)
ツカサはそう自分に言い聞かせる。
その時だった
「苦戦してるみたいだニャ、人間」
ツカサの上から発したその声と同時に声の主は木から飛び降りながら猫鬼に爪を立てた
ひっかかれた猫鬼は猫のような人のような叫び声を上げる
猫鬼のHPバーが半分まで減る。
「とどめニャ、人間」
いきなり出てきた声の主に戸惑いながらもツカサは手に力をいれて猫鬼の方に走る。
「やあっ!!」
声と共に猫鬼を斬る。半分まで減っていたHPバーが一気に無くなった。
叫び声と共に猫鬼は消え、代わりに通貨とアイテムが宙を舞う。
[Magic specter]の時と同じエリアボス用のリザルト画面が視界に映る。
半透明なその画面を消すと銀髪の少女が歩いてくるのが見えた。
「そのレベルで猫鬼に恐れるとかわけがわからないニャ」
上は巫女装束を動きやすくしたような物、下は巫女装束の生地を改造制服のスボンのようにした物をはいている。
腰辺りまである銀色の長髪からは猫耳、ズボンの尻の部分に開いた穴からは先が二股の尻尾が見えている。
そんな銀髪の猫耳美少女が立っていた。
「……猫又」
ツカサは思わず呟く。[Magic specter]で見たことのあるこのエリアのレア妖怪。
もっともツカサが知っているのは金髪だったが。
ツカサの呟きを聞いて猫又はニャンと一鳴
「そう、うちは猫又で名前は琴花ニャ」
「……やっぱり猫又か、何で助けてくれたんだ」
言葉にこそしないがそれには「妖怪なのに」という意味が込められている。勿論それにも気づいた琴花はまたニャンと鳴いた
「ま、妖怪が皆人間を襲うわけじゃ無いしニャ」
それに、と琴花はニヤリと笑って付け加える
「うちは人間に興味があるのニャ」
「興味……ね」
「そうニャ」
だから、とツカサを指差して堂々と続ける
「うちを村に連れて行くニャ」