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「委員長に悪いことしちゃったね」
「早川さんは委員会もあったんだし、しょうがないよ」
「高森君は?」
「……しょうがないよ」
無事(?)に一般公開の一日目を終わって、生徒達はまだ興奮気味に下校を始めた。
お互い制服に戻って、学校の前にある公園で、私たちは真崎君を待っていた。正確には、私が待っていた、なんだけど、そう言ったら高森君は、すとんとベンチに腰をおろしてしまった。
その隣に座って高森君の視線の先を追うと、雲が、うすいあかね色に染まりはじめていた。
気の向くままに、取りとめのないことをしゃべる。
「後夜祭の最後って、毎年生徒会主催の全校ダンスなのよ。ファイヤーストームを囲んで、みんなドレスアップしてお化粧もして。そのときばかりは先生も多少のやんちゃはお目こぼししてくれるから、音楽がんがんかけて好きに踊るの。楽しいのよー」
「お祭りの終わりって、淋しい?」
そっけないような口調で、高森君が聞いた。
「楽しいことが終わっちゃうのは、やっぱり淋しいよ。でも、それだけじゃないかな。終わったっていう満足感のほうが大きかったような気がする」
「……一生懸命やったことだから、悔いはないってこと?」
「そうね。やるだけやったもの。さみしくても満足だわ」
「自分で決めて、やり遂げたことなら、淋しくても、後悔はしない…………」
まるで歌うようにつぶやく独り言が、妙に悲しげに聞こえて高森君を見返す。
逆光で表情が見えない。
「高森君?」
少し位置をずらしてみた顔は、いつもの高森君だった。
「早川さんは、明日も委員会の当番あるの?」
「うん、明日は古書店の当番……は、あんなの着てなかった……よねえ、今日……」
今日のカウンターの様子をつらつら思い出しながら、ついでに亜矢ちゃんの言葉も思い出した。
「そういえば、私の勘違いって何?」
「ああ。聞きたい?」
にやり、と意地悪っぽい笑みが浮かぶ。思わず身構えるけれど、亜矢ちゃんが言ったことを高森君がわかっているみたいだったから、当事者である私がわからないのは、すっごく気になる。
「き、聞きたいです……」
「早川さんが、可愛くお願いしてくれたら、教えてあげてもいいけど?」
「なに、それ?」
「僕は別にいいんだよ? 知っていたって知らなくたって、どうでもいいことだし」
にまー、っとそれはそれは嬉しそうに口の端を吊り上げて。
クラスの中にいたら絶対見せない顔が、なんだか今はくすぐったく感じる。
私にだけ、見せてくれる顔。
ちらりと、若木さんの顔が頭に浮かんだ。少しだけ浮かれた気持ちも手伝って、小首をかしげて両手を合わせると、満面の笑顔を作ってみせた。
「瞳子、知りたいな♪ 意地悪しないで、ね、教えて? お・ね・が・い(はあと)」
すごくわざとらしくやったから笑いとばしてくれるかと思ったけれど、高森君は無言で柔らかく微笑んだままだった。
「……高森君?」
うわ、うけてくれないと、ものすごく恥ずかしいんですけど、これ。




