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うちの高校には新体育館と旧体育館の二つある。バスケの試合をやっているのは新体育館。旧体育館の方ではバレーが行われている。私と美樹はバレーに出ていたけれど、ベスト8まではいかなかった。だから、今残っているのは男子バスケだけ。
……あれ? 卓球はどうなっているんだろう。
「美樹、卓球の方は?」
「あ、興味なかったから見てこなかった」
へへへ、と笑って美樹が答える。
「……で、うちのクラスって、バスケ強いの?」
「どうかなあ。ま、準々決勝に残るくらいだから強いんだろうけど、バスケ部だったのって、堀内君くらいしかいないし。……って、違うわよ。あんたが応援するのは、真崎君」
「だって、一組だよ?」
「こういう場合はいいのっ。しっかり応援しなさい。あ、ほらやってるやってる。……え?」
私たちが体育館に入ると、盛大に歓声があがったところだった。
と思ったけれど、どうも雰囲気がおかしい。よく見れば、コートの真ん中で、誰かがうずくまっていて、その周りにメンバーが集まっていた。歓声だと思ったのは、どちらかというと悲鳴のようなざわめきだった。
「どうしたの?」
美樹が、裕子ちゃんを見つけると駆け寄って聞いた。
「一組の人のボールをとろうとして、堀内君がぶつかっちゃったの」
見れば、うずくまっているのはその堀内君だった。右肩を押さえて痛そうな顔をしているのを、赤いはちまきをした人が膝をついて覗き込んでいる。あれが、多分ぶつかったという一組の人だろう。試合は一時中断となっていて、審判と中原先生が走っていく。
「たいしたことなければいいけど……」
見ていると、やっぱり堀内君は交代みたいで、補欠を探してかうちのクラスの人が右往左往しはじめた。
「瞳子」
私に気づいた真崎君がコートの中から走ってきた。
「堀内君、大丈夫?」
「うーん、微妙かな……あの勢いで肩から床に落ちちゃったからね。かなり強く打ったと思うよ。骨までいってないといいんだけど」
真崎君も渋い顔で堀内君が行ったほうを見つめる。
「うちのクラス、バスケ部がいなくなっちゃったね。それで真崎君相手じゃ、勝ち目はないかな」
美樹が真崎君を見ながら言った。
「そうでもないかもよ? 堀内はうまいやつだけど、他のやつらも結構いい動きしている。俺も引退してからほとんど体動かしてないし、さっきからうちのクラス、押されぎみなんだ」
そう言われて得点ボードを見ると、確かに一方的な試合ではなさそう。試合は後半になったばかりで、24対28。一組の方が優勢だった。
「で、瞳子」
「はい?」
いきなり話をふられて、あわてて真崎君に向き直る。
「相手クラスだけど、俺の応援もしてくれる?」
少しかがんで、視線を私に合わせてくれる。身長が180を超える真崎君は、私より20センチ以上も頭が上にある。いつもは見上げている顔が、近い。
「う、うん。もちろんだよ。クラスのみんなの手前、あんまりおおっぴらには応援できないけど……」
今も体育館のあちこちから視線を感じる……しかも、あまり好意的でないような。
気が付くと、いつの間にか美樹は裕子ちゃんたちと離れた場所にいた。
「じゃあさ、俺が勝ったら、ご褒美くれる?」
真崎君が耳元に近づいて言った。
う、うわー。確かにここうるさいから声が聞こえにくいけど……近いよ……!
「ご褒美?」
「うん。キス、一回ってどう?」
「キ……!」
思わず目を見開いて、固まる。ぼわっと顔が熱くなった。それを見て、真崎君が吹き出す。
「目がまんまるだ。ホント、かわいいね、瞳子は」
……からかわれてる? 私。
「ま、残念だけど、今のは冗談ということにしておくよ。じゃあ俺が勝ったらさ、一日デートしようよ」
「デートって……」
「その賭け、のった」
返答に詰まった私の後ろから、別の声が割り込む。振り返ると、高森君が白いはちまきをしめながら立っていた。




